日経ARIA

分かったつもりにならないで素直に感動を

―― 成熟した女性が身に付けるべき情報スキルとはどういうものでしょうか?

湯川 年齢を重ねたからこその知恵は貴重ですよね。情報の真偽を見極めて、価値のある情報を取り入れたり、拡散したり。賢い付き合い方をしたいですね。

 世の中に漂う情報をうのみにするのではなく「これはどこの誰が言っていること?」「この意見に賛成するのはどういう人たち?」「立証できる根拠はどこにあるの?」と確かめるプロセスに好奇心を燃やすことが、自分自身の心の健康にもつながるし、社会全体の健康への貢献にもなると私は思っています。

そして、発信だけでなく「吸収」して、自分の世界を広げていく好奇心が大切ですね。分かったつもりにならないで、すてきなものに触れたら素直に感動して、どんどん受け入れていく。例えば、この部屋の壁に飾られたこの素晴らしい絵は、maisという30代の女性アーティストの作品なの。彼女は音からインスピレーションを得て作品を描く才能の持ち主なんです。そんな新しいものに出合えると、ワクワクしますよね?

アーティストmaisが湯川さんをイメージして描いたという壁画の前で
湯川れい子
音楽評論家、作詞家。1936年東京都生まれ。音楽評論家、ラジオDJ、作詞家、元日本作詩家協会会長、日本音楽療法学会理事。内閣府原子力政策円卓会議構成員。1960年、ジャズ専門誌『スイングジャーナル』でジャズ評論家としてデビュー。エルヴィス・プレスリー、ザ・ビートルズ、マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパーなどと交流し、洋楽評論のパイオニアとして第一線を走り続ける。「全米トップ40」をはじめとするラジオDJや作詞家としても活躍。ヒット曲に『六本木心中』『恋におちて‐Fall in love-』など多数。著書に『音楽は愛』(中央公論新社)、『女ですもの泣きはしない』(KADOKAWA)など。

(取材・文 宮本恵理子、写真 鈴木愛子、取材協力 オトナリASUKARAビル)

[日経ARIA2019年2月20日付の掲載記事を基に再構成]