家は買うべきか、借りるべきか 定番議論に欠けた視点不動産コンサルタント 田中歩

もし住み替えたいならば、欲しい暮らしについて家族でよく話し合うことが大切です。具体的な言葉でお互いに語り合うだけでも楽しいものです。きっとすてきな住み替えができるでしょう。

「買ったほうが得」は条件次第

それにもかかわらず、どういうわけか「買うか借りるか」の議論に入り込んでしまうのです。購入と賃借の比較では「家賃を払うくらいなら、住宅ローンを払ったほうが最後には住まいが自分のものになる」という論理から、「買ったほうが得」という議論がよく交わされます。

この議論は、自分の家にかかる維持・修繕のための費用をどの程度見積もるかや、マンションの修繕積立金の上昇率をどの程度で考えるか、将来の不動産価格や賃料水準がどのように変化するかなどによって結論が変わってきます。

最近では、無償でも引き取り手がなかったり、お金を払ってでも引き取ってもらわざるを得なかったりする不動産が現れているので、「買うほうが絶対いい」とは言い切れなくなってきているのも事実でしょう。

投資理論などに出てくる「現在価値」という考え方を使って、将来にわたって出ていくお金と獲得できるお金をすべて現在の価値に換算して、どちらが得か比べてみる方法もあります。しかし、現在価値に換算するときの割引率の設定や獲得できるお金(例えば数十年後に売った場合の住まいの価格)、将来かかる支出(修繕やリフォームの費用など)の設定次第で、これまた結論が変わります。

経済合理性や予算の制約が強く出がち

若いころに買うのか、年を取ってから買うのかでも結論は異なります。後者の場合、短い借入期間で返済負担が大きくなることなどから、賃借のほうが住宅に関する支出が結果的に少なくなると試算できる場合もあります。また、相続税評価額の高い実家を承継する選択肢がある場合、買わずに借りたほうがトータルで支出が減ることもあり得ます。

一方、経済合理性ではなく、「賃貸のほうがライフスタイルに応じた自由度が高い」といったメリットを主張する人もいます。このように、どちらに軍配が上がるかは様々な条件によって変わってくるのです。

買ったほうがよいか、借りたほうがよいかという話は、経済合理性や予算の制約といった面が強く出がちです。こうした話は、欲しい暮らしについて家族で話し合ってからでもよいのではないでしょうか。

田中歩
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、ライフシミュレーション付き住宅購入サポート、ホームインスペクション(住宅診断)付き住宅売買コンサルティング仲介などを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」に参画。
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