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ヒットの原点

人気「お受験服」誕生秘話 工場主が切った最終カード ファッションしらいし 白石正裕社長(上)

2019/5/28

――具体的にはどんな手順で作っているのですか?

「私たちがお受験服を作る場合、社内のチームでデザインし、型紙から起こして縫います。こういうものは不特定多数に売るものと違い、着るときの目的が明確ですから、最先端の流行を追う必要はあまりない。デザイン性はほんの少しでいい。あまりデザインしすぎると悪目立ちしてしまいますから」

「デザインする前は、手分けして街頭リサーチもします。慶應幼稚舎の近くとか、お受験服を着た人たちがたくさん集まる場所に、しかるべきタイミングで出かけ、通る人の様子を間近で観察します。デザインをコピーするわけじゃないんです。何となく全体の雰囲気を感じたり、落ち感を確かめたりする」

「不思議なもので、雑誌などで見て企画したものは全然、売れない。リサーチをして積み重ねていくと、ちゃんと売れる。手を抜くとダメなんです。だから面倒くさいけれども、それをやるわけです」

「当初はグレーの服も作っていました。でも、全然売れない。案の定、リサーチしたら、グレーの服なんて着ている人は一人もいなかった。それで、途中からグレーはやめようということになりました」

――広告宣伝は?

「うちとしては特に何もしていません。インスタグラムも、ついこの間、始めたばかりです。ほとんどが口コミ。今は新作を出すと、他のブランドに真似をされるほどになりました」

「これからブラックフォーマルも始めようかなと思っています。ちょうどサンプルが出来上がったところです。今は自主企画が全体の3割くらいで、取引先は伊勢丹、三越、阪急の計7店舗です」

――自主企画の割合を増やそうとは思わないんですか?

「それは思いません。僕たちはあくまでものづくりが土台にあり、ものづくりで稼ぐ会社になりたい。アパレルになるつもりはありません。ものづくりを生業としている会社が自主企画も作るから、おもしろいと言ってもらえる。僕らは作る人で、百貨店は売る人。その関係性が明確だからいいのだ、と思っています」

「ヌーヴ コンフィニ(nouv confini)」の「お受験服」(ファッションしらいし提供、撮影・小高朋子)

「縫製工場が企画をすると有利なのは、必要なときに必要なものを作れることです。アパレルと縫製工場の取引だったら、アパレル側がある程度、企画段階で数字を読んで発注しないといけませんが、私たちの場合は、依頼された仕事の隙間に自主企画を入れて作ることができる」

「ABCという3つのサンプルがあったとして、どれが売れるかは、実際に売ってみないとわからない。どのタイミングでわかるかと言うと、店頭に出したときのお客さんの流れでわかるそうです。だから、最初から多くは作りません。1サイズ2枚ぐらいずつ売り場に出して様子を見て、実際に売れたものだけを追加で作っていく。自分たちで企画して縫っているからできることです」

(ライター 曲沼美恵)

(下)お受験服の縫製工場がNY進出 挑むのは最新モード >>

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