人気「お受験服」誕生秘話 工場主が切った最終カード
ファッションしらいし 白石正裕社長(上)
ファッションしらいしの白石正裕社長は「お受験服」という鉱脈を掘り当てた
子供の小学校受験などの面接で母親が着る「お受験服」。口コミだけで年間1000着以上も売れる人気ブランドがある。その名は「ヌーヴ コンフィニ(nouv confini)」。東京都内にある縫製工場「ファッションしらいし」(東京・杉並)が作っている。小さな縫製工場がなぜ、大手アパレルに並ぶお受験服を作ることができたのだろうか。社長の白石正裕氏にヒット商品が生まれた背景を聞いた。
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――「ヌーヴ コンフィニ」というお受験服が、伊勢丹など大手百貨店でよく売れているそうですね。
「2006年から売り場に出して、もう10年以上になります。売り始めた頃は6月の学校説明会、11月のお受験シーズン前が売れるピークでしたが、最近は通年で売れています。聞いた話では、お迎え用の服として買って行くお客様がいるということと、国立の受験でも着る方が増えてきたことが影響しているようです。気の早い方は2月、3月から買い求めます。売れるときは週に100着近く売れますし、1週間に1点も売れないという時期はないぐらいです」
――なぜ、「お受験服」を手がけることになったのですか?
「縫製工場は広い土地が必要な労働集約型産業ですから、バブル景気の頃をピークに全国的にも減り始め、都内でもかなり減少しています。東京婦人子供服縫製工業組合に加盟している55社のうち、従業員25人以上の会社は、うちを含めてたったの3社。なかでも後発の私たちとしては、自分たちで仕事を作り出せる会社にならないとやっていけないだろうと思い、自主企画のオリジナル商品を作り始めた。それが2000年ごろのことです」
「初めはウエディングドレスを手がけましたが、ウエディングでは計画的に仕事を受注するのが難しい。それで機屋さんと組んで生地を作り、デザインし、スーツやコートなどのオリジナルを作り始めました。百貨店とセレクトショップに絞って営業をかけましたが、最初は全然、相手にしてもらえませんでした。ただし、『品質はいい』とほめられていたんです。服の評価はめちゃくちゃ高かった。すごく玄人受けするんです。だからと言って買ってもらえるかというと、それは別の話。『上代(販売価格)が高い』『デザインがうちの売り場に合わない』などの理由で扱ってもらえない状態が続きました」