陸上でできる琥珀に海のアンモナイト 貴重な発見

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

白亜紀に生きていたアンモナイトの殻。どういうわけか、海の生物であるアンモナイトの殻が樹脂に覆われて化石化し、非常に珍しい琥珀となった(PHOTOGRAPH BY BO WANG)

琥珀といえば、樹脂が長い年月をかけて化石化したもの。ところがその中から意外なことに、海の生物アンモナイトが見つかった。おそらく初めての発見という。中国の古生物学者、兪●●(おんなへんに亭、ユー・ティンティン)氏の研究グループが2019年5月13日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表した。

アンモナイトは絶滅した海の軟体動物で、タコやイカの仲間。陸に上がることのない生物が、陸上でできるはずの琥珀から見つかるのはきわめて異例で、かつて海底だった場所から恐竜が見つかるようなものだ。

「通常、琥珀の中から見つかるのは、地上の昆虫や植物、動物だけです。海の生物が見つかるのは、とても珍しいことです」と、論文の共著者で、南京地質古生物研究所の古生物学者である王博(ワン・ボー)氏は語る。

研究者たちは、海岸線に生えていた木の樹脂が、砂浜に流れ着いたアンモナイトの殻などを包み込んだのではないかと考えている。同じ琥珀化石からは、巻き貝やダンゴムシに似た海辺の生物のほか、ダニ、ハエ、甲虫、クモ、寄生バチ、ヤスデ、ゴキブリといった沿岸の森に暮らす生物が見つかっている。

米ロサンゼルス自然史博物館の古生物学者であるジャン・ベンデッティ氏(本研究とは無関係)は、「あり得ないような組み合わせです。美しい白亜紀の海岸をそのまま保存したようなもので、まさに驚きの発見です」と話す。一見して驚きなのはアンモナイトだが、この時期のたった一つの化石の中からこれほど多様な生命が見つかることのほうが重要かもしれない。

今回の論文著者の一人で、米インディアナ大学ブルーミントン校の古生物学者で名誉教授でもあるデイビッド・ディルチャー氏は、「あらゆる生命体が共生していたのです。長い目で見れば、その事実の方が重要であることがわかるかもしれません」と述べている。

謎が多いアンモナイト

この研究は、アンモナイトに光を当てた最新の研究成果だ。アンモナイトは、恐竜の時代に生息していた殻のある軟体動物で、その祖先は4億年以上前に登場し、6600万年ほど前に鳥類を除く恐竜とともに死に絶えた。しかし、それまでの間に、世界中に多様な種が広がっていた。現在の軟体動物と同じように、さまざまな深さの海に適応し、直径1センチ程度のものから、2メートルを超える巨大なものまで、さまざまな大きさのアンモナイトが誕生した。

アンモナイトは、魚や海生爬虫類に混じって、白亜紀のサンゴ礁をゆらゆらと泳いでいたはずだ。「(当時の)浅い海でスキューバダイビングをすれば、まちがいなくアンモナイトを見ることができたでしょう」と、米ドレクセル大学の古生物学者で、軟体動物の化石に詳しいジョセリン・セッサ氏は語る。