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陸上でできる琥珀に海のアンモナイト 貴重な発見

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/6/1

殻の内部構造から、琥珀の中のアンモナイトはプゾシア(ビヒマイテス)亜属の若い個体であることがわかっている。王氏は、9900万年前の琥珀であることを考えれば、この分類は妥当だという。この亜属は1億年以上前に登場し、少なくとも9300万年前まで生息していた。

高解像度でスキャンしたアンモナイトの内部構造。1億年以上前に登場し、少なくとも9300万年ほど前まで見られたプゾシア(ビヒマイテス)亜属の仲間と考えられている(PHOTOGRAPH COURTESY BO WANG)

だが、長いこと研究されてきたにもかかわらず、アンモナイトにはまだ多くの謎が残されている。軟組織の一部が保存されている化石がほとんどないため、体を再現するのが難しいこともある。今回、琥珀の中にアンモナイトの殻が閉じこめられる場合があることがわかったので、研究者たちは、今回以上に珍しい発見があるかもしれないと期待している。陸に打ち上げられたばかりのアンモナイトが樹脂に閉じこめられ、現代まで保存されているかもしれないのだ。

「まったく、どうしてこんなものができたのでしょうか。今回の論文は、想像もできないような化石が存在しうることを示しています。とても珍しいことですが、悠久の時間のなかでは、珍しいことはいつも起きているのです」とベンデッティ氏は話す。

■奇跡の化石の発見ルート

問題の化石は、ミャンマー北部のフーコン渓谷から見つかった。このあたりは琥珀の産地で、2000年以上前から採掘が行われてきた。ここ10年ほどは、古生物学者にとっての聖地とも言える場所になっており、驚くような化石が発見されたのも今回が初めてではない。羽毛が生えた恐竜のしっぽや、ひな鳥やヘビが体ごと琥珀に閉じこめられた状態で出土している。

だが、ミャンマーの琥珀発掘は危険とは言わないまでも、決して容易ではない。琥珀が見つかるのは、数十年間にわたって政府軍とカチン独立軍との衝突が起きているカチン州だ。カチン独立軍は現地の少数民族カチン族の独立のために戦っており、フーコン渓谷の琥珀を含む資源を貴重な財源としている。

科学的に重要な琥珀の標本が発見されるのはたいていの場合、民間で売買されている切断、加工された化石からだ。研究者たちは、みずからミャンマーの琥珀市場にせっせと通うか、個人の琥珀コレクターと手を組むしかない。今回のアンモナイトは、後者のルートで見つかった。

当初、琥珀ディーラーは、この化石をコレクターに売ろうとしたものの買い手が見つからなかった。しかし、上海の琥珀コレクター、夏方遠(シャー・ファンユアン)氏は、この化石の写真を見てアンモナイトかもしれないと感じた。夏氏は、個人で運営する上海の霊珀閣琥珀博物館(Lingpoge Amber Museum)に収蔵するため、ただちにこれを購入した。

「彼は価格など気にしません。アンモナイトであれば、それで満足します」と王氏は言う。

夏氏は、琥珀の収集や研究に深く関与している。王氏とは何年も前から協力関係にあり、琥珀についていくつかの科学論文を共同執筆している。今回の論文もその一つだ。2018年には、王氏を含む研究者たちが、化石化した昆虫の種に夏氏にちなんだ名前を付けている。夏氏は、他の古生物学者にも博物館の化石を公開しているが、現在のところ、霊珀閣琥珀博物館は一般に公開されてはいない。研究者以外の一般の人が化石を見るには、王氏か夏氏から直接許可を得なければならない。

北京にある中国地質大学の古生物学者で、ミャンマーの琥珀に詳しい●(刑のりっとうがおおざと)立達(シン・リダ)氏は、中国で個人の琥珀博物館が発展しているのはすばらしいが、厄介な面もあるという。いずれにしても、興味をそそられる珍しい標本は、研究機関が手を出せないほど高値がつくことが多い。

同氏は電子メールに、「コレクターの中には、標本を出し惜しみする人もいます」と書いている。「中国では個人博物館が発展していますが、まだまだ改善の余地があります」

一方で王氏はさらに多くの発見が明らかになるはずだと述べており、その中には別のアンモナイトが閉じこめられた琥珀などもあるという。先週、知人から見せてもらったミャンマーの琥珀の写真は、アンモナイトが入った2つ目の事例だという。王氏によると、夏氏のコレクションをはじめとする個人博物館が科学的に重要なさまざまな標本を収蔵している。そういった標本も近く発表される見通しだ。

「これはとても重要なことです。ほとんどの標本はすでに発表されているか、これから発表される予定になっています。ですから、何の問題もありません」。王氏はそう語った。

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 鈴木和博、、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年5月16日付]

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