灘→ハーバードの「天才児」 被災地で知るアートの力アマトリウム社長 丹原健翔さん

「日本で出会った、すごく才能があると尊敬する人たちがあまり評価されていない、食っていくのが難しいという現状に違和感がありました。かっこいいと思っている人がかっこいいことができていない状況って僕はどうしても納得できなくて」。自分はサポートする側にいこうと、卒業後の2017年、アート作品のデジタル化を手がける「アマトリウム」(東京・港)を起業した。

アート版「ネットフリックス」を構想する

「アート業界は作品の売買だけで成り立っている狭い市場」と丹原さんは言う。しかし映像や音楽業界を見渡せば、イベントやレンタル、ストリーミング配信など、市場が徐々に広がっている。この波は必ずアート業界でも起こるとみている。

その準備として取り組むのが「デジタルギャラリー」や、ブロックチェーンを活用した取引システムの構築だ。「デジタルギャラリー」とは、ネットの画面上で展覧会を楽しめるようにして、家でもデジタルフレームなどで飾り、気に入ったら本物を買えるようにするという仕組みだ。さらにデジタル作品が取引される時代になったときに不正防止の仕組みとしてブロックチェーンが必要になってくるとみて、業界団体も立ち上げた。

ブロックチェーンと言うと難しく聞こえるが、やろうとしていることは実にシンプルだ。アートを作る人も買う人も、どちらもハードルを下げて気軽に楽しめるようにして市場を拡大することだ。

足元の収益源としては展覧会の受託や若手アーティストのマネジメントなどを手掛ける。市場を拡大するにはコレクター(買い手)も必要だということで、今まであまりギャラリーに足を踏み入れたことがない企業経営者などを招待する個展も開くが、「これは全然お金にならないですね。僕に入ってくるのは数万円です」。

損益はほぼトントン。将来の開発資金などは資金調達頼み。デジタルギャラリーはネットフリックスのような定額制のビジネスモデルを考えており、将来的にはこれが収益源になるとみているが、システム開発やコンテンツの充実はまだ時間がかかりそうだ。投資家にも正直に「僕の会社はすぐに大きくなる会社ではない」と説明する。

「自分がいいと思ったアーティストが食っていける世界を作りたいというワガママを突き通せるという、わりと幸せな環境なわけで。そういう環境になると、どんどん新しいことをやるのは意外とリスクじゃないのかもと思えるようになりましたね」。丹原さんはそう語って笑顔を見せた。

丹原健翔(たんばら・けんしょう)氏 1992年生まれ。東京都出身。灘高校を卒業後、米国ハーバード大学で心理学を専攻。一時休学し、東日本大震災の被災地でボランティア活動を行った際、アートに出会う。卒業後に帰国し、2017年にアマトリウムを設立した。

(安田亜紀代)

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