長期投資ならコストに注目 指数連動型は下がる傾向投資信託の基礎(下)

写真はイメージ=123RF
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汗ばむ陽気の週末の午後。筧家のダイニングテーブルでは良男と幸子がおやつにケーキを食べています。そこへ友人と出かけていた満が帰宅しました。ソファに座るなり、けげんな顔でタブレット端末の画面を見て首をかしげています。

筧(かけい)家の家族構成
筧幸子(48)良男の妻。ファイナンシャルプランナーの資格を持つ。
筧良男(52)機械メーカー勤務。家計や資産運用は基本的に妻任せ。
筧恵(25)娘。旅行会社に勤める社会人3年目。
筧満(15)息子。投資を勉強しながらジュニアNISAで運用中。

筧満 この間、投資信託の種類について教えてもらったから、いろんな投信を調べてみたんだ。気になる投信があったから早速、運用を始めようと見てみたら、ある証券会社では買うときに手数料がかからないようなのだけど、別の金融機関では手数料がかかるんだ。どういうことなんだろう。

筧幸子 購入時手数料のことね。販売手数料といわれることもあるわ。投信を購入するときに証券会社や銀行に支払う費用で、購入額(申込価額)の一定割合を買う人が払うの。

 かからないこともあるんだね。

幸子 購入時手数料をゼロにする販売会社や投信も増えてきているのよ。購入時手数料のかからない投信を「ノーロード」と呼ぶの。販売会社がより多くの投資家に投信を買ってもらえるよう、初期費用を抑えているのね。同じ投信でも、A証券ではノーロードでも、B銀行では購入時手数料がかかることもあるわ。ネット証券を中心に、ジュニアNISAやNISAの口座で投信を買う場合は、購入時手数料をゼロにしているところが多いようね。

筧良男 いくらくらいかかるものなんだ?

幸子 投資信託協会によると、2019年4月末時点では投信全体の平均で2.22%ね。100万円投資するなら約2万2千円を最初に負担する計算ね。投信の種類によっても違って、アクティブ型は2.39%、指数に連動するインデックス(パッシブ)型は0.67%と1%を切る水準だわ。

 ずいぶんと差があるんだね。

幸子 投信評価会社のモーニングスターの調べでは、パッシブ型の購入時手数料は過去10年下がり続けているのよ。18年1月にスタートしたつみたてNISAでは、金融庁は対象商品の条件のひとつに「ノーロードであること」を入れたの。

 投信は保有している間にもコストがかかるんだよね。

幸子 保有期間中ずっとかかる「信託報酬」や、決算期の監査費用に充てる「監査報酬」、投信が投資している株式や債券を売買した際に発生する費用に充てる「売買委託手数料」などがあるわ。「信託財産留保額」と言って解約する際に一定額を徴収される投信もあるの。中途解約手数料のような費用だけど、かからない投信もあるのよ。投信を選ぶとき一番着目したいコストは信託報酬ね。

 どうして?

幸子 信託報酬は運用管理費用ともいわれ、運用会社や販売会社、信託銀行に配分されるわ。直接払うわけではなく、運用している信託財産の中から、投信を保有している間中差し引かれるの。たとえば信託報酬が1%の投信が、3%の収益を出したと考えてみて。投資家は3%分すべて受け取れるわけでなく、1%分差し引いた金額が信託財産になるの。

良男 信託報酬が高いともうからないじゃないか。

幸子 投信全体の信託報酬の平均は1.34%(モーニングスター調べ、19年3月時点)よ。パッシブ型では0.51%と、10年前から0.24ポイント下がったわ。対するアクティブ型は1.43%で10年前より微増しているの。パッシブ型ではここ数年、極めて低い信託報酬の投信が増えてきているの。日経225に連動する投信で信託報酬が最低水準のeMAXIS(三菱UFJ国際投信)の信託報酬は0.17%。他社でも0.2%を下回るものが多いわね。

 投資する資産によって違いはあるの?

幸子 投資資産別にみた信託報酬の平均(パッシブ型)を見ると最も低水準なのは国内債券に投資する投信で、0.32%となっているわ。次いで複数の資産に分散投資するバランス型が0.39%ね。最も高い水準なのは新興国債券で0.55%よ。ただこれはあくまでも平均値で、古くから運用を続ける投信が多くある国内株式や先進国株式などは実態より高めに出るという事情もあるみたい。

 個別の投信の信託報酬は何を見るとわかるのかな。

幸子 「目論見書」に書かれているわ。手数料だけでなく、何に投資しているのかとか運用実績などの重要な情報が載っているので、購入前にきちんと読むべきよ。

 僕がやっているジュニアNISAだと、利益に課税されないんだよね。

幸子 そうよ。投信を売却して出た利益や分配金には通常20.315%の税金がかかるの。株式や債券など、他の運用商品で損失が出ていれば損益通算できるけれど、これもある意味、投資家が負担する「コスト」といえるわね。でもNISAやつみたてNISA、個人型確定拠出年金(イデコ)で運用していれば、分配金や売却益は非課税よ。イデコだと掛け金を所得から差し引けるメリットもあるわ。同じ投信で運用していても、税優遇がある口座か否かで、将来受け取れる金額が変わるので、税優遇は積極的に使ったほうがいいわね。

 よし、投信についてだいぶ勉強できたので、いよいよ商品選びに入るか。

■税優遇制度が後押し
モーニングスター社長 朝倉智也さん
個人が投資信託を選ぶ際、最初に着目してほしいのが信託報酬などのコストだ。投信の運用成績は購入時点で保障されないが、コストは自分の判断で抑えられる。投資初心者ならまずは低コストなインデックス型投信から始めるのがいいだろう。5年、10年と長期運用することを考えればその間、ずっと払い続ける信託報酬の低い商品を選びたい。
米国などに比べて日本の投信のコストは高いといわれ続けてきたが、ここ数年で目に見えて下がってきたと実感している。NISAなどの税優遇制度によって背中を押された形だ。ネット証券が定着し、投信の販売経路が対面からネットに移行してきた影響も少なくない。販売会社のコストが軽減できるのでノーロード型も増えてきた。低コスト化の流れは投資家にとって追い風だ。(聞き手は岡田真知子)

[日本経済新聞夕刊2019年5月22日付]

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