キリンレモン・ミルミル・金麦…19年のヒット飲料
雑誌日経トレンディは全12の商品ジャンルを定め2019年上半期にヒットしたものを選定し「上半期ヒット」とした。そのなかから、「新規性・売れ行き・影響力」という 3つの評価項目に則り「大賞」を決めた。下半期に注目の新商品やサービス、これから売り上げが爆発的に伸びそうなものは「令和ヒット予測」とした。今日は飲料ジャンルを紹介する。
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飲料分野では、老舗ブランドが奇跡の復活を遂げた。炭酸飲料の「キリンレモン」だ。18年4月に行ったリニューアルを成功に導いたのは、アーティストとコラボしたウェブ動画。ブレイク寸前の新進アーティストと矢継ぎ早にコラボする施策が奏功し、12月末に年間販売目標600万ケースを達成する快挙を成し遂げた。ウェブ動画を見事に売り上げ増につなげた戦略を評価し、「大賞」とした。
もう一つ、発酵乳ドリンクの「ミルミル」も急浮上したブランドだ。「ヤクルト」とのダブル飲みがSNSではやり、特別にCMなどを打ったわけではないのに、売り上げは2桁増。スーパーマーケットのPOSデータを分析すると、「18年8月から飛躍的に伸びている」(True Data・烏谷正彦氏)。
酒類では、18年に大ヒットした「本麒麟」のライバルが好調。金麦ブランドから2月に「金麦〈ゴールド・ラガー〉」が発売され、「スーパーマーケットのPOSデータを見ると、2月には金麦ブランドがキリンののどごしブランドを逆転した」(烏谷氏)。
令和の初めに間違いなく来るのは、紅茶の革命だ。近年大躍進したペットボトルコーヒーの立役者、クラフトボスシリーズが紅茶に参入。3月に無糖紅茶を発売した。迎え撃つ「午後の紅茶」は、甘さ控えめで上質な印象を受ける新しいミルクティーを投入し、絶好調。さらにクラフトボスは、7月に大本命と位置付けるミルクティーを出すと発表。競争が激化し、他社を巻き込む一大ムーブメントになりそうだ。
初代のキリンレモンをモチーフにしたデザインで、社を象徴する聖獣と透明感あるボトルデザインがポイント。新鋭アーティストや声優の水瀬いのりが「キリンレモンのうた」を歌う動画を公開する「キリンレモントリビュート」企画が秀逸。若者の間で拡散し、18年7月初旬には、累計再生回数5300万回を突破。12月中旬に600万ケースを達成し、その後も好調に推移。「サイダー市場全体が好調」(インテージ)とインパクトを与えた。
【上半期ヒット】 ヤクルトとの「ダブル飲み」で2桁増
ビフィズス菌 BY株が「大腸ではたらく」とうたう。これと、「ヤクルト」の乳酸菌シロタ株とをダブルで飲むことで腸活になるという話がSNSで広まり、突然火が付いた。18年4月~19年1月の出荷は前年同期比16%増。
【上半期ヒット】 「本格派」第3のビール市場に殴り込み
18年に大ヒットした第3のビール「本麒麟」のライバルが、金麦ブランドから発売された。タンパク質の多い麦芽を使用し、「ザ・プレミアム・モルツ」の製法を取り入れて、コクと飲み応えを重視。既に19年の販売計画を3割増の440万ケースに上方修正した。ブランド全体を押し上げ、1~3月の対前年同期比が11%増。
【上半期ヒット】 進化系レモンサワーが食卓に進出
レモンサワーブームが家庭に波及。「市場規模20%増を見込む」(サントリー)。居酒屋メニューを彷彿させる寶「極上レモンサワー」シリーズは販売計画比の183%で推移。18年ヒットした「レモンサワーの素」のRTD缶も3月に発売。
【上半期ヒット】 ピーチ味発売でさらに伸長
18年3月発売に発売された「クラフティー 贅沢しぼり」の第2弾。2商品合わせて1年で1億本を出荷する異例のヒット。果汁を多く入れるというコンセプトが受け、追随商品も現れた。
【上半期ヒット】 EU発ワインがもっと身近な酒に
日EU・EPAの関税優遇により、EU発ワインの値下げが相次いだ。その結果、前年同期比900%という商品も現れるなど市場が活況に。「特に赤ワインが人気」(国分)という。
【上半期ヒット】 ドラマ「大恋愛」で再脚光
18年秋のドラマ「大恋愛」内で、物語のキーアイテムとして本製品を模した飲料が登場。SNS上で話題となり、125mLのパッケージが10~3月で昨年同期比1.5倍の売り上げに。
【令和ヒット予測】 レモン系大型新人
レモン系の炭酸飲料の好調を受け、三ツ矢サイダーブランドに「レモネード」と銘打った新商品を投入。4月2日の発売から3週間で年間販売目標100万ケースの5割を突破した。甘さ控えめで若い女性に受けている。
【令和ヒット予測】クラフトボスが次に狙う新市場
17年発売の「クラフトボス」が築いた、水感覚で"ちびだら飲み"するペットボトルコーヒーという新市場。次に狙うのは、コーヒーが飲めない人も取り込める紅茶だ。19年3月にクラフトボスは無糖紅茶を投入し、本命のミルクティーは7月に発売する。一方で、「午後の紅茶」もクラフトボスを意識した商品を3月に出し、初速は好調。令和は紅茶が飲料市場を盛り上げそうだ。
【令和ヒット予測】 ヒットの掛け合わせ
「飲む点滴」「夏バテ対策になる」といった需要で、じわじわ伸長してきた甘酒市場。アレンジした商品も出てきており、「とまと甘酒」は、米こうじの甘酒をトマトで割ったもの。トマトジュースが苦手な人も飲みやすく、トマトと甘酒の両方の栄養を取れるという打ち出し方で、夏の健康対策需要を狙う。6月18日発売。
【令和ヒット予測】 ありそうでない便利さ
ノンカフェイン飲料への需要から、ここ数年麦茶市場が拡大している。それをけん引するGREEN DA・KA・RAブランドから、缶に入った濃縮タイプの麦茶が4月16日に発売された。水と混ぜるだけで1~2Lの麦茶が作れるうえ、好みに応じて濃さを調整できる。手間なく作れて、共働き家庭に受けそうだ。
[日経トレンディ2019年6月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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