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乃木坂46離れて分かった 深川麻衣、自分を出す必要

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NIKKEI STYLE

乃木坂46出身の深川麻衣は、女優としての才能が開花した注目の1人だ。2018年、映画初出演にして初主演を果たした『パンとバスと2度目のハツコイ』では、第10回TAMA映画賞の最優秀新進女優賞を受賞。19年はNHK連続テレビ小説『まんぷく』に出演し、『日本ボロ宿紀行』では連続ドラマ初主演を務めた。さらに4月、5月と出演映画2本が公開。女優として順調な道を歩む深川は、「乃木坂46に入った時から、25歳でグループを卒業するという考えが頭の片隅にあった」と明かす。

「芸能界に入りたいという夢を持ちながら、なかなか勇気が持てなくて。専門学校を卒業し、『ここで挑戦しなかったら後はない』と思った20歳の時にオーディションを受けて、乃木坂46に入ることができました。芸能界の仕事を始めるのが遅かった分、少し世間を見ていたので女性アイドルが30代、40代になっても続けていくのは難しいだろうと、現実的に自分の将来や人生を考えたんだと思います。

女優の道を考えるきっかけは、21歳の時、3枚目のシングル『走れ!Bicycle』(12年発売)で初の選抜メンバーになり、ミュージックビデオを中島哲也監督に撮っていただいた頃からだと思います。その後も内田けんじ監督などそうそうたる方々に撮っていただく機会がありました。また、映像の仕事や舞台を経験するうちに、お芝居が楽しいと感じるようになりました」

転機1:グループを卒業し、まっさらな状態に

「具体的に卒業を決めたのは、23歳の時です。私はこれから1人の人間として何をしていきたいんだろうと考えるようになり、その時に一番興味があったのがお芝居の仕事でした。先のことは決めていませんでしたが、20歳と30歳のちょうど間に当たる25歳で卒業しようと決めました。

グループに残ってお芝居の経験を積むという選択肢もありました。実際、『乃木坂46にいながら、できることもあるんじゃない?』などと言っていただきましたし、乃木坂46にいればこそ回ってくるチャンスもあるかもしれないとも考えました。でもグループの中にとどまっていると、自分の役割や立ち位置というものを自然と考えるし、いただくお仕事もきっとそういった"乃木坂46の深川麻衣"のイメージに近いものになる。だったら卒業して、乃木坂46という看板も何もない、全くフラットな状態でやったほうが自分のためにもなると思いました」

16年6月16日に乃木坂46を卒業したが、実はその時点では次の所属事務所は未定。「いろいろな方にご協力いただいて、今の所属事務所に移籍することができました」と語るように、同年9月から新たなキャリアをスタートさせた。

「ワークショップに通って演技の勉強をするようになり、気づいたのですが、私はそれまでは自分を前に出すことをあまりしてこなかった。乃木坂46のときは、インタビューの時でも2~3人一緒ということが多く、他のメンバーの発言を聞いてバランスを取りながら答えたり、まとめてしまうクセが付いていたんです。でも、1人で活動をするようになったら、もっと自分はこう思うという意思を伝える必要があると考えるようになりました。

17年に撮影した映画『パンとバスと2度目のハツコイ』でも、今泉(力哉)監督から『もっと我を出してもいいんじゃないか』と言われて。自分ではいい子でいた自覚もなかったのですが、受け身だったようです。でも考えてみれば、台本を読む時だって、主人公はなぜうれしいのか、怒っているのかなど、その気持ちが分からなければ演じることもできない。自分はどう感じるのか、それを表現することが大事なんだなと。グループで活動していた時には全く気づけなかっただけに、乃木坂46を卒業し、自分1人になって女優を目指したことに間違いはなかったと感じています」

転機2:準備期間を経て、女優の才能が開花

乃木坂46を卒業して3年。意識が変わり、舞台などの経験も経た今、深川は女優として大きな飛躍の時期を迎えている。

「お芝居の仕事をしたいと思った時から、『朝ドラに出演したい』と夢見ていました。ヒロインじゃなくても、ヒロインを支える1人として出演できればと思っていたので、『まんぷく』で1つの夢をかなえることができました。演じたのは25歳から37歳まで。その間に結婚し、母親になり…実際には自分自身が経験したことがないことをドラマの中で演じさせていただけました。しかも、周りには自分が様々な作品で見てきた先輩方ばかり。その方たちの背中を見ているだけでも学ぶことが多かったし、これからの自分にとって宝物になりました。

1月から、『日本ボロ宿紀行』で初めて連ドラの主演をさせていただいたことも大きな経験です。この作品では全国各地でロケをしたのですが、スケジュールがとにかくタイトで、セリフだけ覚えたら、あとは現場で柔軟にやるしかない。この『ボロ宿』と少し重なって、『まんぷく』の撮影に入りましたが、朝ドラの現場もものすごいスピードの中で撮影が進みます。『ボロ宿』の撮影現場を経験したことで『まんぷく』も乗り切ることができたと思います。結果として、経験したことが積み重なって次につながっていく。今はそのように感じています。

4月公開の映画『愛がなんだ』では、『パンとバスと2度目のハツコイ』の今泉監督と再びご一緒しました。『パンとバスと2度目のハツコイ』もそうだったように、これまでに演じたのはおとなしかったり、芯の強い女性が多かったのですが、『愛がなんだ』は男性を翻弄するような役。私が出演したCMを見た今泉監督が、『全く違うキャラクターだってできると思った』と任せて下さいました。乃木坂46時代からのイメージを1つ破ることができたのかなとうれしかったです」

3月29日の誕生日をもって28歳になった。30歳という次の節目に向かって、どんな夢を描いていくのだろうか。

「30代って、女性としても人間としても大きな変わり目だと思っています。女優として演じる役も、主婦や母親など今までとは変わってくる。これまでご一緒させていただいた素晴らしい役者のみなさんは、その人自身が持つ魅力が透けて見えてきて。それは、経験を積んだからこそあふれてくるものだと思います。だから、仕事もプライベートも丁寧に生きていきたいです。自分の好きなことをもっと探求していきたいとも思っています。小さい頃から好きだった絵を描くことは続けていきたいし、今は写真を撮ることにもハマっています。気になることには何でも首を突っ込んでみようかなと思っています(笑)」

(ライター 前田かおり)

[日経エンタテインメント! 2019年5月号の記事を再構成]

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