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ヒャダインさんも悩んだ乾癬 10年で治療が進化

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

「乾癬(かんせん)」とは、特徴的な皮疹が見られる慢性炎症性皮膚疾患で、国内に約43万人の患者がいるとされる。その治療はこの10年で大きく進歩したが、一方で自分に合う治療法に出合えていない患者や、過去に病院で「治らない」と言われてそのまま治療を諦めている人も多い。また、見た目に分かる症状から偏見が生じることもある。アッヴィ主催・乾癬メディアセミナーより、帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授の多田弥生さんによる乾癬を取り巻く社会課題と乾癬治療の最新事情に関する話、および音楽クリエーターのヒャダインさんら乾癬患者の声を紹介する。

皮疹だけでなく、心の傷や自己肯定感の低下も

「乾癬」では、本来なら外来微生物を攻撃するための反応が、攻撃対象となる微生物がいない皮膚で起こってしまい、白血球などが集まって皮膚に炎症が起こり、赤く盛り上がる。患部の皮膚表面では新陳代謝が活発になり、正常な皮膚が作られないためカサカサと乾燥する。これが硬くなると銀白色の「鱗屑(りんせつ)」と呼ばれる皮膚片が、フケのようにはがれ落ちたりする。持続的なかゆみがある患者も多く、中には炎症により関節の腫れや痛みを伴う場合もある。このように乾癬は、皮膚の症状が特徴的な、免疫の働きが関わる疾患であると考えられている。

うつる病気ではないが、頭皮や爪など人目につく部分に症状が現れやすいため、周囲の誤解・偏見を招くことが多い。「温泉などに行けない」「(銀白色の鱗屑が目立つので)黒い洋服が着られない」など日常生活が制限されるだけでなく、人との接触を避け、皮疹を隠して振る舞わざるを得ない状況から、心の傷も蓄積していく。

多田さんによると、乾癬の重症度を判断するには次の3つの評価尺度が用いられている。

(1)皮疹の面積が体表面積の何%か
(2)全身の乾癬の活動性・重症度の評価
(3)皮膚の状態が生活の質に与えた影響に関する評価

このうち、(3)について、乾癬患者は糖尿病などの生活習慣病患者と同じくらい生活の質が障害されるという結果もあるという。乾癬の問題は単に皮疹があるということにとどまらない。乾癬患者はメタボリックシンドロームの合併率が高く、結果として、特に重症な乾癬の患者では心筋梗塞などのリスクが高まることが知られている。さらに、社会からの拒絶・自己肯定感の低下など、様々な因子が複雑に絡み合って患者への負担として蓄積していく。

そのため、たとえ皮疹が寛解(病気の症状が軽減またはほぼ消失した状態)しても、特に重症度の高い患者には、なかなか人生に自信が持てず、夢が持てないといった傾向も見られるという。患者の一人は「治療で皮疹はきれいになったが、乾癬がある姿が自分の本当の姿だという思いがある。今も自己肯定感は低い」と話す。

「症状が長期化するにつれ、繰り返し傷つく体験を積み重ね、乾癬という病気が患者さんに重くのしかかり、深い心の傷になって刻み込まれます。さらにメタボリックシンドロームや心筋梗塞といった病気も加わり、より心の傷が深くなれば、うつ病などの精神疾患を患うこともあります。もし乾癬がなければ歩まなかった人生を送る可能性があるのです」(多田さん)

劇的に進化している乾癬治療

「乾癬という重荷をできるだけ早期に解放して、乾癬がなかった時のように人生を歩んでもらいたい」と多田さんは言う。その手段の一つが適切な治療を行うことだ。

乾癬の治療は、この10年で飛躍的な進歩を遂げている。外用薬を基本に、紫外線を人工的に浴びる光線療法と内服薬しか選択肢がなかった時代は、皮疹を改善することはできても完全に消失させることは難しかった。2010年に注射・点滴療法(生物学的製剤[注1])が登場し、乾癬に関わるサイトカイン(細胞から分泌される低分子のたんぱく質)だけを抑制する積極的治療が可能になり、治療成績が格段に高まった。

[注1]生体がつくる物質を薬として使用するもので、体の免疫機能に関わる物質である「サイトカイン」の働きを弱める薬。

「以前はPASI75(治療開始時点の皮疹重症度スコアが75%以上改善)が治療目標とされていましたが、現在はほぼ達成できるようになりました。生物学的製剤で、PASI90(90%以上改善)という高いレベルでの改善が7~8割の患者さんで達成できるものも登場しています」(多田さん)

これまで乾癬治療に用いられてきた生物学的製剤は7剤あるが、2019年3月には8剤目となる新薬が承認され、さらに一つ選択肢が増えた。

今なお残る課題は?

ただし、生物学的製剤で治療成績は上がったとはいえ、「『投与スケジュールが複雑で自己注射を忘れたりするため、注射の頻度を減らしたい』といった薬の使いやすさに関する問題」「免疫が抑制されるため感染症のリスクが高まるなど、安全性の懸念」「自己注射への不安」「経済的負担」「長期間使い続けるうちに効かなくなってくる場合がある、あるいは薬剤中止後の効果が続かない場合もある、といった効果の持続性」など、患者を取り巻く課題は根強く残っている。

患者の一人は「効果が高いとされている薬も全ての患者に同じように効くわけではなく、費用に対する効果を鑑みて、あるいは、効き目はあっても関節の痛みが残るなど様々な理由で薬を変える人もいます。自分も副作用が出たことなどから7剤目を使っているので、選択肢はさらに必要」と話した。

「乾癬治療で高いレベルでの改善は達成できるようになってきましたが、これからは投与間隔が長いなどより使いやすい薬、副作用が少ない薬といったプラスアルファを目指す時代。それぞれの患者さんが求めるニーズを加味した治療が必要になるでしょう」(多田さん)

「治療を諦めないで」ヒャダインさんが込めた思い

同セミナーでは自身も乾癬患者である音楽クリエーターのヒャダインさんが、公募で集めた全国の乾癬患者のメッセージをもとに作詞作曲した乾癬患者応援ソング『晴れゆく道』を発表。自身の体験談や楽曲に込めた思いを語った。

患者が最も悩まされる鱗屑を雪に例えて「やまない雪はない」という歌詞に、また、完治はないけれど正しい治療を受けたらいい方向に向かう希望があるのではないかという思いを「ゴールテープはなくても晴れゆく道はある」という歌詞に込め、アップテンポの曲調で明るく表現したという。

また、「この肌を誇ろう」という歌詞には「赤く腫れ上がった肌は、かゆみに負けず、人の目も気にしながら、なんとか生活しようと毎日頑張っている証し。その心を誇ってほしい」と、経験者だからこそ分かる心情が込められている。患者からは「共感できる」「頑張っていることを認めてもらえてうれしい」という声が聞かれた。

ヒャダインさんは、自分に合う治療に巡り合って、ほとんど乾癬を気にしなくて済むようになったが、あえて皮疹を少しだけ残し、毎日これを見ることで「普通の日常は普通ではないのだと、かみしめている」そうだ。

長年蓄積した心の傷や様々な課題は、簡単に解決できることではないかもしれない。しかし、新しい選択肢が登場し、治療環境は確実に良くなっている。適切な治療に巡り合うことができれば、発症前とほぼ変わらない生活を送ることは可能になった。周囲も乾癬という病気を正しく理解して、社会的な環境をより一層改善させていくことが望まれる。

「10年前に皮膚科で治らないと言われたことが全てだと思って治療を諦めている人、あるいは途中で治療をやめてしまっている人がいたら、改めて一歩を踏み出してほしい」(多田さん)

「この楽曲が一人で悩んでいる患者さんに届き、夢を諦めないきっかけになってくれたらと思います」(ヒャダインさん)

※「晴れゆく道」のミュージックビデオはYouTubeにて公開

https://youtu.be/cC3tU2h_PNY

(ライター 塚越小枝子)

多田弥生さん
帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授。1995年東京大学医学部医学科卒業。米国国立衛生研究所(NIH)皮膚科研究員などを経て、2017年より帝京大学医学部教授に。専門分野は皮膚科一般、乾癬、アトピー性皮膚炎。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

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