ヒャダインさんも悩んだ乾癬 10年で治療が進化

日経Gooday

「以前はPASI75(治療開始時点の皮疹重症度スコアが75%以上改善)が治療目標とされていましたが、現在はほぼ達成できるようになりました。生物学的製剤で、PASI90(90%以上改善)という高いレベルでの改善が7~8割の患者さんで達成できるものも登場しています」(多田さん)

これまで乾癬治療に用いられてきた生物学的製剤は7剤あるが、2019年3月には8剤目となる新薬が承認され、さらに一つ選択肢が増えた。

今なお残る課題は?

ただし、生物学的製剤で治療成績は上がったとはいえ、「『投与スケジュールが複雑で自己注射を忘れたりするため、注射の頻度を減らしたい』といった薬の使いやすさに関する問題」「免疫が抑制されるため感染症のリスクが高まるなど、安全性の懸念」「自己注射への不安」「経済的負担」「長期間使い続けるうちに効かなくなってくる場合がある、あるいは薬剤中止後の効果が続かない場合もある、といった効果の持続性」など、患者を取り巻く課題は根強く残っている。

患者の一人は「効果が高いとされている薬も全ての患者に同じように効くわけではなく、費用に対する効果を鑑みて、あるいは、効き目はあっても関節の痛みが残るなど様々な理由で薬を変える人もいます。自分も副作用が出たことなどから7剤目を使っているので、選択肢はさらに必要」と話した。

「乾癬治療で高いレベルでの改善は達成できるようになってきましたが、これからは投与間隔が長いなどより使いやすい薬、副作用が少ない薬といったプラスアルファを目指す時代。それぞれの患者さんが求めるニーズを加味した治療が必要になるでしょう」(多田さん)

「治療を諦めないで」ヒャダインさんが込めた思い

応援ソングの歌詞に込めた思いを語るヒャダインさん(写真提供=アッヴィ)

同セミナーでは自身も乾癬患者である音楽クリエーターのヒャダインさんが、公募で集めた全国の乾癬患者のメッセージをもとに作詞作曲した乾癬患者応援ソング『晴れゆく道』を発表。自身の体験談や楽曲に込めた思いを語った。

患者が最も悩まされる鱗屑を雪に例えて「やまない雪はない」という歌詞に、また、完治はないけれど正しい治療を受けたらいい方向に向かう希望があるのではないかという思いを「ゴールテープはなくても晴れゆく道はある」という歌詞に込め、アップテンポの曲調で明るく表現したという。

また、「この肌を誇ろう」という歌詞には「赤く腫れ上がった肌は、かゆみに負けず、人の目も気にしながら、なんとか生活しようと毎日頑張っている証し。その心を誇ってほしい」と、経験者だからこそ分かる心情が込められている。患者からは「共感できる」「頑張っていることを認めてもらえてうれしい」という声が聞かれた。

ヒャダインさんは、自分に合う治療に巡り合って、ほとんど乾癬を気にしなくて済むようになったが、あえて皮疹を少しだけ残し、毎日これを見ることで「普通の日常は普通ではないのだと、かみしめている」そうだ。

長年蓄積した心の傷や様々な課題は、簡単に解決できることではないかもしれない。しかし、新しい選択肢が登場し、治療環境は確実に良くなっている。適切な治療に巡り合うことができれば、発症前とほぼ変わらない生活を送ることは可能になった。周囲も乾癬という病気を正しく理解して、社会的な環境をより一層改善させていくことが望まれる。

「10年前に皮膚科で治らないと言われたことが全てだと思って治療を諦めている人、あるいは途中で治療をやめてしまっている人がいたら、改めて一歩を踏み出してほしい」(多田さん)

「この楽曲が一人で悩んでいる患者さんに届き、夢を諦めないきっかけになってくれたらと思います」(ヒャダインさん)

※「晴れゆく道」のミュージックビデオはYouTubeにて公開

https://youtu.be/cC3tU2h_PNY

(ライター 塚越小枝子)

多田弥生さん
帝京大学医学部皮膚科学講座主任教授。1995年東京大学医学部医学科卒業。米国国立衛生研究所(NIH)皮膚科研究員などを経て、2017年より帝京大学医学部教授に。専門分野は皮膚科一般、乾癬、アトピー性皮膚炎。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。

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