フリーアナウンサー・宇賀なつみさん 友人のような父
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回はフリーアナウンサーの宇賀なつみさんだ。
――どんなご家族ですか。
「うちはとても仲がいいんです。父は60代後半。建築の仕事をしていて、ばりばりの現役です。先月は私と2人で上海に旅行しました。といっても私が彼の出張について行ったんですが……。よく女子は思春期に父親が嫌になるといいますが、私はまったくなかったです」
「母は保育士をしています。だから、うちでも季節のイベントが多かったですね。ひな祭りにはみんなで歌を歌わされ、七夕では『短冊をひとり3枚書いてください』みたいな家でした」
――けんかしたり反抗したりすることはなかったのですか。
「もちろん母とはけんかする時期もありました。けれど、両親から勉強しろとか、頭ごなしに何かを言われたことはまったくありません。門限はなく、アルバイトも認めてくれたし、勉強したいと言えば塾に通わせてくれました。逆にいえば、自分からやりたいと言ったものしかやらせてくれなかったですね」
「だからこそ、両親を裏切ることはできないという思いは常にありました。自分の行きたい大学に行かなくちゃとか、ちゃんと独り立ちしなくちゃとか。いま思うと、すべてを任せてくれた裏返しで、何事も自分で決める習慣、自主自立が身につきました」
――アナウンサーになることについて、ご両親の反応はどうでしたか。
「試験に受かるまで言っていませんでした。母に合格を報告したときは、『えー、すごい! 私もやってみたかった』と言われました」
――社会人になり、ご両親への思いは変わりましたか。
「私、仕事の愚痴を絶対言いたくないんです。大変なことや面倒なこともいっぱいありますけど、ハプニングがあったときはおもしろいし、つらいことがあったときもそれには意味があると思うし。絶対にポジティブに考えたいんです」
「自分で選んだ仕事なので、それに文句を言いたくないんですよね。自分のためにも。愚痴を言ったら、その仕事を選んだ自分や、その仕事をがんばっている自分を否定することになります。父からも仕事の愚痴って聞いたことないんです。彼から学んだことです」
――そういえば、お父さまのことを「彼」と呼ぶんですね。
「確かに普通は、あまり言わないですよね。父は常にフラットで、相手が偉い人だからとか、年下だからとかで態度を変えることは一切ありません。子どもでも対等に扱ってくれました。同じ目線に立ってくれていたせいか、親なんですけど、ひとりの友人でもあるようなイメージです。私の中では、友だちとランチするか、父とランチするかは同じなんです」
[日本経済新聞夕刊2019年5月28日付]
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