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夏の海の幸ホヤ、鮮度が決め手 創作料理も多彩

2019/5/24

ホヤの味を最も味わえる刺し身。土佐酢などと相性が良い。旬は5~8月

ホヤが旬を迎えた。「藤の花が咲く頃が旬」「ホヤはキュウリと食え」ともいわれており、5~8月が最もおいしい季節となる。三陸の夏を代表する食材だが、鮮度が落ちるのが非常に早いため、管理が悪いホヤを食べて苦手意識を持っている人も少なくない。「臭くない」「苦くない」「渋くない」。ホヤを鮮度良く、おいしく届けるため、新メニューの開発など産地では工夫が広がっている。

ホヤとは何か? 東北を中心に食べられている海の幸で、仙台藩主・伊達政宗もお吸い物として食べたことが文献に記されている。「ホヤ貝」とも呼ばれるが、実は貝ではない。人間などの脊椎動物の近縁にあたる。世界中で2千種以上のホヤが確認されており、日本で食べられているのは主に「マボヤ」「アカボヤ」という種類。韓国では刺し身やキムチに入れる具材として人気があり、イタリアやフランス、チリなどでも食べられている。

仙台市で開催された「ほや祭り」には昨年を上回る1万1千人のファンが来場。殻付きホヤや創作料理に行列ができた

国内最大の産地は宮城県だ。都内、JR中野駅から徒歩2分ほどのところにある三陸の旬の魚介類を味わえる漁師直営の居酒屋「魚谷屋」にも今年のホヤが入荷した。味噌漬けや天ぷら、お茶漬けなど様々な料理で楽しめるが、一番人気は「東京No1 ホヤのお刺身」(700円)だ。店主の魚谷浩さんは地元の漁師と連携し、東京の消費者の声を産地に届けながら「いい状態のホヤだけを常に届けてもらっている」。夏は「ホヤを目当てに来店する客も増えている」という。

魚谷さんと組んで、「臭くなく」「苦くなく」「渋くない」、鮮度のいいホヤ養殖に取り組んでいるのが石巻の若手漁師、渥美貴幸さんだ。船に乗せてもらった。三陸のホヤは「マボヤ」で、3~4年かけて育てている。最初はサクランボほどの小ささだが、数年たつとごつごつとした突起が付いた“海のパイナップル”へと成長する。

渥美さんはホヤ収穫後に海水に戻し2~3日休ませる。臭みの原因であるフンが排出され、おいしいまま届けられる

水揚げしたばかりのホヤはどんな味なのか。殻にナイフを入れると、「ブシュー」っと勢いよく海水が飛び出る。これを「ホヤシャワー」と呼ぶそう。さばきたての実は、マンゴーのような濃い黄色で、口に含むとぷるんとした食感の中から磯の風味があふれ出す。ホヤはよく「甘み、塩味、酸味、苦み、うま味」の5つの味覚を備える食材といわれるが、とれたてはうま味と塩味が濃厚だ。

鮮度が落ちると、独特の臭み、苦みが出る。「原因はフン」と渥美さん。実の中に茶色いカスがあり、それが水揚げ後、時間がたつにつれてニオイのもとになるという。渥美さんはロープから水揚げしたホヤを株ごとにバラバラにして、もう一度海水に戻し2~3日置く。ホヤのストレスが軽減されるほか、「内部のフンが排出され、県外へもおいしいままで届く」という。

おいしく食べるには「水揚げからの時間も勝負」と、全国有数のホヤ取扱量を誇る仙台水産(仙台市)特種部の三浦伸一朗部長代理が教えてくれた。5月上旬の朝5時、仙台市中央卸売市場を訪れると、オレンジ色の鮮やかな皮がぷっくりと張った立派なホヤがずらりと並ぶ。さすが国内最大の産地だ。「浜で深夜に水揚げしたものを、トラックで直送してもらっている」。素早い手つきでスーパーや飲食店へと売られていく。仙台のスーパーでは殻付きの大玉が1個120~150円ほどで並んでいる。「今年は生育も順調」という。

ホヤは、東日本大震災前の2010年には全国で1万トンの生産量があり、8割超が宮城県産だった。津波で壊滅的な被害を受けたが、14年に復活した。ただ、東京電力福島第1原子力発電所の事故を受けて、最大の輸出先である韓国が輸入を禁止したため廃棄処分を余儀なくされた。さらに、日本が禁輸解除を求めて世界貿易機関(WTO)に提訴していたが、4月に敗訴、輸出再開は遠のいた。海外へ出荷できなくなったため、国内での新たな販路開拓が課題となっている。

5月上旬、仙台市で「ほや祭り」が開催され、昨年を上回る1万1千人が来場した。お目当ては新鮮な殻付きホヤの直販のほか、創作料理の数々だ。ホヤとセリのスープに、ホヤチーズ、ホヤマルゲリータ……。ホヤでゆで卵を包んだホヤたまごや、焼き鳥ならぬホヤ串にも行列ができていた。仙台水産の三浦氏は「今年は県外の販促を強化する」と意気込む。関東のほか、九州でフェアも開催し「様々な食べ方を提案する」。(佐々木たくみ)

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