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ブラックホール撮影の陰に日本の技術 山根一眞氏語る 『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』著者

2019/5/23

ブラックホール観測成功のニュースは記憶に新しい。観測の実現は世界6カ所、連携した8台の電波望遠鏡群だ。6カ所のうち最大の貢献をしたのが、南米チリのアルマ望遠鏡だ。長年にわたり同望遠鏡建設プロジェクトを取材し、2017年に『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』(日経BPコンサルティング)を刊行したノンフィクション作家の山根一眞氏に、観測成功に寄せて、万感の思いを寄稿してもらった。

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2019年4月10日、午後10時7分、東京の学術総合センター(千代田区一ツ橋)で始まった緊急記者会見で国立天文台水沢VLBI観測所教授の本間希樹さんは、こう語り出した。

「ブラックホールは天文学者が100年追い続けてきましたが、まだ見たことがありませんでした。そこで世界の13機関、200名を超す研究者が国際プロジェクトを組み、その姿をとらえようと2017年4月から取り組んできました。皆さん、よろしいでしょうか……。これが、人類が初めて目にしたブラックホールの画像です!」

EHTが観測したM87銀河の中心にあるブラックホールシャドウ(写真・EHT Collaboration)

投影された画像は、オレンジと黄色の輪の中心に見える黒い穴、おとめ座にある楕円銀河、M87の中心のブラックホールだった。

記者会見は世界6カ所で同時刻に開始したが、そんな科学発表は前例がない。

アインシュタインが相対性理論によってその存在を予言、天文学者たちが100年追い求めてきたブラックホールの姿を、世界中の人々が同時に見たのである。

■8台の電波望遠鏡が同時観測

このブラックホールの観測は、EHT(イベント・ホライゾン・テレスコープ)という国際協力チームが、世界6カ所、8セットの電波望遠鏡で同時観測して得た。本間さんは、「これによって直径が地球サイズの望遠鏡が実現し、その能力は月に置いたテニスボールが見えるのと同じ視力300万相当でした」と説明したが、このあたりから一般の人には何のことやら、「???」だったろう。

2017年4月に行われたイベント・ホライズン・テレスコープの観測に参加した望遠鏡の配置(画像・NRAO/AUI/NSF)

だが私は、「ひゃぁーっ!」とのけぞった。

「8台の電波望遠鏡セット」の一つが「アルマ」だったからだ。「アルマ」、やってくれたね、あんたは偉いぞ、期待以上の成果じゃないかと、取材途上で投宿中の滋賀県米原市の自室で一人、歓声をあげたのだった。

離れた場所にある電波望遠鏡(パラボラアンテナ)で同時刻に同天体をとらえスーパーコンピュータで解析すると、2つの電波望遠鏡の距離を口径とする望遠鏡が仮想的に実現できる。この方法を「開口合成法」と呼ぶ。このマジックの発明はイギリスの天文学者、マーチン・ライル(1974年にノーベル物理学賞)による。電波望遠鏡の数を増やし距離をできるだけ離せば、より大きな望遠鏡になる。これら複数パラボラアンテナのセットを「干渉計」と呼ぶ。

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