プロジェクトメンバーは、それまでボランティアとしてこのプロジェクトに参加し活動してきたのですが、企業内社会起業(家)の実行の難しさを感じて、いくらか疲弊しているところでした。そこに、それまでのプロジェクトメンバーにはない新しいスキルや知識を持つ人が、「ダボスの経験を東京で」をきっかけにこのプロジェクトのことを知り、プロジェクトに加わったのです。「志」を共有するばかりか、結果として、新しいアイデアが次々に提案されるようになりました。

「違い」を積極的に受け入れ「ダイバーシティ」を実践する

 この事例は、当初はどれだけ斬新なプロジェクトであっても、時間がたつとマンネリ化し、当たり前のものになってしまうこと、数年後にまったく新しいメンバーがこのプロジェクトを“再発見”し、その目標を解釈して新しい命を吹き込んだこと、それが元からいたメンバーにも影響を与えたというものです。つまり、「新しいメンバーに組織が適応した」好例なのです。

 今よくいわれている「ダイバーシティ(多様性)」の議論は、会社に新しいグループの人(女性、外国人、そして最近ではLGBT=レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)を入れた場合にも当てはまります。「ダイバーシティ」をテーマとして企業のワークショップをすると、「コンセプトとして重要なことはわかる。でも実際はかなり違和感があり、仕事がやりにくい」という本音が出てきます。

 これは、「新しい人を組織に適応させよう」として、元からいるメンバーがかなり違和感を抱くということの表れだと思います。

 さまざまな「違い」を尊重して積極的に受け入れるというダイバーシティを実践するためにも、組織のほうを新しい人に適応させる、それにより新たな組織やプロジェクトをつくり上げる、というアプローチを試してみてはいかがでしょうか。

石倉洋子
一橋大学名誉教授。1949年生まれ。71年上智大卒業し、。フリーの通訳などを経て米国で経営学修士号(MBA)と同博士号(DBA)を取得。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社で企業戦略のコンサルティングなどを手がけた後、青山学院、一橋、慶応義塾の各大学・大学院で教授を歴任。専門は経営戦略やグローバル人材。資生堂などの社外取締役も務める。

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著者 : 石倉 洋子
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