新しいメンバーが命を吹き込む 組織を人に合わせよう
一橋大学名誉教授 石倉洋子(6)
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世界で通用する人材、会社で求められる人になるにはどうしたらいいの? そんな素朴な疑問に、世界経済フォーラムなどの国際舞台で多くのリーダーと接してきた石倉洋子氏は「ちょっとしたことから始めて、毎日の習慣にしてしまえば、生活の一部となって、どんどん力がついていく」と言います。では、どんな習慣を身につければいいのでしょう? このほど文庫として刊行された「世界で活躍する人の小さな習慣」から連載で紹介します。
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人を巻き込む際には、どんな人がよいのでしょうか?
意外に思うかもしれませんが、組織やプロジェクトの課題や背景について何も知らないメンバーのほうが、かえって力を発揮する可能性があります。
新メンバーの素朴な疑問を活用する
職場に新入社員が入ってきたり、これまでやってきたプロジェクトに新しいメンバーが入ってきたりした時、多くの人は「今度来た人たちは、何だ」とか「何か変」という違和感を持つことが多いようです。その場合、通常は新しい人にこれまでの活動や狙いを説明して理解してもらい、一日も早く職場環境に慣れて、戦力になってもらおうとします。
しかし、世界中で起こりつつある、「企業から消費者へ」という情報の流れが「消費者から企業へ」という流れに変わっているように、既存のメンバーが情報ややり方を新しいメンバーに伝授するのではなく、新しいメンバーが感じた印象や解釈、その知識やスキルを活かしてみてはどうでしょうか。つまり、ゼロベースで考え、まったく新しいアプローチを試してみるのです。
新しいメンバーは過去の経緯をあまり知らないため、「そもそもこのプロジェクトでは何をしようとしているのか」と原点に返った疑問や問題意識を持つことが多いでしょう。そして、新しいメンバーは「今現在」の環境の中で仕事やプロジェクトをとらえるので、既存のメンバーでは実行が難しい「ゼロベースで考える」ことができるのです。