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水産物禁輸で逆転敗訴 日韓の利害超えた大国の思惑も

2019/5/21

韓国の輸入禁止措置を認めたWTO上級審の判断は、東北の水産業者には重荷となる(17年の宮城県・女川漁港でのサンマ初水揚げ)

4月11日、世界貿易機関(WTO)は福島など8県の水産物に対する韓国の輸入禁止措置を事実上認める判断を下しました。東京電力福島第1原子力発電所の事故後、日本と韓国は禁輸措置を巡り約6年間WTOの法廷などで争ってきました。WTOは2018年2月にいったん韓国の措置を違反としましたが、今回は判断を覆しました。

WTOで、日本の裁判所の一審にあたる「パネル」の判断を二審の「上級委員会」が覆すのは異例とされています。韓国は水産物禁輸を当面続ける見通しです。

政府は5月に入り、WTOの体制が今回の判断に影響を与えたなどとする説明を始めました。どういうことでしょうか。

日韓の一つの大きな争点は「年間1ミリシーベルト以下」という放射線の被ばく量についてでした。日本は、一般人の健康を守るため国際的に求められる1ミリシーベルト基準を満たす食品の輸入も認めない韓国の措置について、貿易を不当に制限しているとして訴えていたのです。

一審パネルは日本の主張を認めましたが、上級委は逆に退けました。理由は、韓国が「1ミリシーベルト以外にも複合的な基準を設けている」というものです。確かに韓国の基準には、放射能を年1ミリシーベルト以下にするほか「放射能汚染をできるだけ最低に維持する」などとも書いてあります。

上智大の川瀬剛志教授(国際経済法)は「複合的な基準の詳細を韓国も上級委も明確に示さなかった」と問題視しています。1ミリシーベルトなど明確な数値基準がなければ、食品の安全検査はできそうにありません。なぜWTOは曖昧な判断を下したのでしょうか。

川瀬氏は「米国の懸念を反映した可能性がある」と分析します。米国は、WTO加盟国が貿易を規制する主権に、上級委が立ち入るような判断を下すことに批判的でした。川瀬氏は「上級委は米国の意向をくんだ可能性がある」とみています。超大国の思惑は韓国に有利に働いたのかもしれません。

放射性物質と食の問題に詳しい元高裁判事の中島肇弁護士は、WTOが「放射線のように将来予測の難しいリスクは、明確な基準の有無を問わず予防すべきだとの考え方をとった可能性がある」と話しています。1ミリシーベルトという基準に依拠し法廷闘争を進めた日本に不利に働いた可能性があります。

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