「第一人者であり、ほかとの違いを打ち出し、ユニークであるなら、負けるはずがありません。最初に第一人者になって負けた人はいませんし、違いを打ち出し、あるいはユニークであるのに負けた人、あるいはブランドというのはないと思います。後手に回っていたり、あるいは追随しているだけ、違いを打ち出せなければ負けることになります」
商品の判断、顧客目線で
「周りの人が自分より優秀であれば、その人たちが自分を引き上げてくれます。でも逆もしかりで、周りの人が力を持っていないと、自分の力を引き下げられてしまいます」
「商品を見る際に自分の目で見てはいけません。自分の目で見て、これはいいね、これは素晴らしい、これは美しいと、自分で判断していてはだめです。お客様の目で見て、果たして美しいのか、良いのかが大切なのです。自分で判断するのではなく、お客様にそれを語っていただくということです」
「若いマネジャーのなかには、自分の目でしか商品を見ない人たちがいます。そういう人たちには、『お客様の眼鏡を通して見てください。そうすると商品そのものも違って見えてきます』と、常に言っています」
「デザイナーのカール・ラガーフェルド氏が先日亡くなりました。シャネルやフェンディで働きましたが、シャネルのときは100%シャネル、フェンディのときは100%フェンディというかたちで、まさに彼のボス、ブランドのために仕事をしていました。自分のテイストうんぬんではなくて、あくまでもそのブランドに沿って見るということです」
これからは恩返し
――第一線を去るにあたり、これからの時計業界に必要なものは何だと考えますか。
「去るわけではありません(笑)。お返しをしていきます。お返しする前に去ってはならないと考えていますので、後進に鍵を渡してから去ることになります。これからは自分の経験、ビジョンであったり、成功や失敗、すべてを手渡していきたいと思っています。遅かれ早かれこうした時期がやってくるとは思っていましたが、今まさにその立場となりました」
「スイスの高級時計は特別な存在です。文字盤に『スイスメード』とあると、人は高品質、ほかにはない高級感を連想します。これからも高い品質、比類なきカスタマーサービス、そしてイノベーションを維持していかなければなりません」
(聞き手は平片均也)
1949年ルクセンブルク生まれ。スイス・ローザンヌ大学で経営学を学んだ後、1975年にオーデマ・ピゲに入社。オメガを経て、82年に休眠中だったブランパンを買収。機械式時計の希少性や芸術性を追求して経営を立て直した。92年にブランパンを現在のスウォッチグループに売却した後、同グループでオメガのマーケティングなどを担当。2004年にウブロのCEOに就任、斬新なデザインで世界的ブランドに成長させた。08年にウブロはLVMH傘下入り、ビバ-氏は14年からLVMHグループ時計部門のプレジデントを務めた。現在は同部門の会長。
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