LINE(ライン)の前社長で、女性向け動画配信サイトC Channel社長の森川亮氏(52)が、同社を起業したのは48歳のときだった。大企業に15年間在籍した自らの経歴を「遠回りしたなあ」と振り返る森川氏は、今20歳だったら起業を選ぶという。「仕事の経験を通じて、社会を知り自分を知ってほしい」という森川氏の仕事の軌跡は現場主義に貫かれている。
ミュージシャンになりたくてピアノ、ギター、チューバ、サクソフォン、ドラムをやっていた
筑波大学で情報工学を専攻する学生でした。キャンパスが郊外なので、学生以外の出会いが少ないんです。アルバイトでできるだけ色々な人の仕事を見たいと思っていました。
ピザ、そば、ラーメンにフレンチ、バーでも働きました。料亭で和食の職人から怒鳴られたり、ビル掃除で一緒になったおじさんから悲哀の人生話を聞いたり。様々な世界の人に出会えたのは勉強になりました。
もう一つ、とことんやっていたのが音楽です。小さい頃はクラシック、大学生になるとジャズやサンバもやってました。ピアノ、ギター、チューバ、サクソフォン、ドラムと楽器は一通りやりましたね。当時は本気でミュージシャンになりたいと思っていました。
でも、大学4年になると他の学生と同じように就職活動をしました。理系でしたが、大学院に行こうとは全く思いませんでしたね。早く働きたくて仕方なかったのです。
日本テレビから早々に内定をもらえました。もし日テレに行かなかったら、レコード会社を受けていたと思います。実は、テレビ局に入ったのも、もしかしたら自分の曲を番組で使ったら人気が出るかもしれないという下心があったからなんです。実際、入社してから番組でこっそり使ったりしました。番組そのものがヒットしなくて、ダメでしたけど。
その頃考えていた「自分が好きな音楽で人が感動してくれたら本当に幸せだなあ」という感覚は、今も仕事のうえで意識しています。いくらお金をもうけても死ぬときに持って行けないですよね。自分の幸せって何だろうと考えると、結局は自分のやったことで人が幸せになることなのかなと思うのです。自分も楽しくて見ている人も楽しいという環境をどれだけ作れるかということは、今も大事にしています。