食糧危機をハエで救う 29歳「暫定」CEOの挑戦

日経doors

2019/5/24
ムスカ暫定CEOの流郷綾乃さん
ムスカ暫定CEOの流郷綾乃さん
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食料危機を救うともいわれるハエを扱う企業で、暫定的に最高経営責任者(CEO)を務める流郷綾乃さん(29歳)。ハエの幼虫を使って飼料や肥料を作り出す技術を開発している。なぜハエなのか、なぜ暫定CEOなのか。その詳細を流郷さんに聞いた。

昆虫テックベンチャーの「暫定CEO」

暫定CEO――こんな聞き慣れない肩書を持つのが流郷綾乃さんだ。流郷さんが暫定CEOを務めるのがムスカというハエを扱う企業。優良種の選別交配を重ねたイエバエがふん尿などの有機廃棄物を食べて、1週間で高品質な肥料に変えるだけでなく、ハエそのものも養殖や畜産の飼料になるというゴミを生み出さない循環システムを構築している。高品質な飼料と肥料を安定的に供給できる仕組みとして、世界の食料危機の一助になるのではと期待が寄せられている。

それにしても、29歳にしてCEO、だが暫定、そしてハエ……。並べてみると疑問は尽きない。一体なぜ? とつい、興味を引かれてしまう。実はそれこそが流郷さんの狙いだ。

流郷さんは広報やPRの専門家。現在、ムスカは海外展開を見据えていて、それを推進できる経営者を募集しており、そのことを幅広く告知するために流郷さんが「暫定CEO」というポジションを名乗っているのだ。「ユニークな肩書で、CEOのポジションは空いてますよと伝えるPR戦略です。肩書を採用のために利用する、というチャレンジングなことをしてみました」

シングルマザーとして「子どもの将来にとってプラスになる事業」を手掛けることにしている

ただ、もちろん中途半端な気持ちでCEOを担っているわけではない。「この事業は世界にとって絶対に不可欠になる。事業が成長するステージに合わせて、できる限りのことをして、次のCEOへしっかりとバトンタッチしたい。だからこそ、CEOとしての職務を全うしています。今は本当に多忙を極めていて、昨日も帰れませんでした」と言う。

寝る間も惜しんで働くCEOと聞くと、押しの強い、発言力がある人物像を想像しがちだが、流郷さんは全く異なるタイプだ。「自分からあいさつしたり、電話したりするのが怖い」と語るほどで、それが今のビジネスの原点にもなっている。