ユーチューブの流儀 パラスポーツ普及の壁越えるパラサポ山脇会長×UUUM鎌田社長の対談(下)

山脇 一般の世の中では、障害のある人をかわいそうで特別な存在と思うようなところがあります。でも(障害のある人とない人がタスキをつないで競争するパラ駅伝で)ユーチューバーが車いすに乗ったら、日ごろから車いすに乗っている人に段違いに差をつけられましたよね。彼らは車いすがあれば、我々よりはるかにうまく物事ができるんです。

UUUM社長の鎌田和樹さん

その人の持っている能力をどのくらいまで最大化しているかが人間を評価する基準とすると、障害のある人はほかの機能を90%くらい使っていますが、僕は持っている機能の30%くらいしか使っていません。僕なんかが実は一番残念な人で、パラの人たちが勝っているんです。ユーチューバーだって、普通に社会に出て、会社で事務をしたらとんでもないことになるんじゃないですか。

鎌田 なるほどね。

山脇 一方で、何か人と違うことを考えて発信する能力はすごいものを持っているわけですから、お互いの違いとか能力を認め合って、それで一緒に何かをやっていくというのが、いわゆるダイバーシティー(多様性)であり、インクルーシブな世の中なんです。

パラスポーツは見たり、自分で体験したりすることによって、誰もが何かを感じるんです。どういう表現でそれを言うかは別にして。だから、あんまりぐちゃぐちゃ言わなくても、ユーチューバーに感じてもらえばいいんです。もちろん世の中にはいろんな人がいますから、10%か20%、最低限のチェックはしますが……。

どんなことやっても賛否両論ある

――いろんな人の反応を気にしすぎるとよくないということでしょうか。

鎌田 そりゃあネガティブな意見はありますよ。何をやっても、絶対に言われる。やったことの賛否はさておき、「やろうぜ」と言ったやつがいるということが大切なんじゃないですか。

脱線しますが、ピエール瀧(被告)が出演している映画が公開されましたよね。映画会社の社長が一言、「このままでいきます」と言ったんですよ。それ見ていて、めちゃくちゃ格好いいなと思ったんです。

日本財団パラリンピックサポートセンター会長の山脇康さん

物事に関して、大多数の人が賛同しないといいものじゃないというような、風評をもってひとつの評価にする文化は違うんじゃないかと思うんです。

ユーチューブはゴールデンの民放チャンネルで発信するわけじゃなく、自分がやりたいものを発信するだけで完結しています。嫌だったら結局、見なきゃいいだけです。それに対してネガティブな意見が出ること自体が僕には理解できません。

山脇 障害のある人のなかでも、あまりスポーツをやらない70%くらいの人たちにとっては、パラリンピックはとんでもない迷惑かもしれません。「俺たちみんながアスリートと思ってもらっちゃ困る」「あんなものをやるんだったら、もっとほかの福祉にお金を使ってくれ」と言う人はいます。

一方で世の中の90%を占める健常者の意識を変えないと、世の中は変わらないから、やっぱりパラリンピックにフォーカスしようと言う人もいる。どんなことをやっても賛否両論あるんです。たぶん今のメディアはいろいろ気遣いしすぎて、もっとすてきに世の中を変えるためにやらなきゃいけないことを忘れている気がします。

僕らだって、いろいろ批判を受けるんですよ。パラリンピックの名前がついている団体なのに、「パラ駅伝」みたいなことしていいのかとか。競技じゃなくてイベントだとか。でも、あれはあれで競技ですし、障害のある人とない人が一緒になって競うことに目的があるんです。

――2012年のロンドンパラリンピックでは、放送を担当したチャンネル4というテレビ局が障害を積極的に見せたり、笑いに変えたりして、既成概念を壊したといわれています。日本でも、同じことが起きますか。

山脇 確かにチャンネル4は、戦争で足が吹っ飛ばされたシーンを紹介したり、赤ちゃんが事故にあったりとか、かなり強烈でした。実はチャンネル4がそういうことをやりますと言ったとき、すごく議論があったんです。国際パラリンピック委員会のなかでも「やめておけ、こんなもの」とか。でもやってみたら、ものすごく反響が大きくて、あれはあれでジャンルを獲得して、進化し続けています。

日本は残念ながら、チャンネル4のエセ版とか出てきているだけで、超えていません。日本のユーチューバーやアニメーターは、もっと違うやり方で違うことをやったほうがいいんじゃないでしょうか。僕らや通常のマスコミができないことを発信してほしいです。そうじゃないとパラスポーツが広がりませんから。

「楽しいことに興奮、悪いですか」

――ビジネスの観点から、パラスポーツはコンテンツとして魅力はあるのでしょうか。

鎌田 ビジネスとは考えていません。公園に行ったとき、いろんな遊び方があるでしょう。砂場で遊んだり、アスレチックに登ったり。パラスポーツだから特別視するというのではなくて、何か知らないことを知ることができるということだと思います。

フィッシャーズはパラ駅伝の後、車いすバスケも体験して動画を公開した(ユーチューブから)

パラリンピックを別枠として考えすぎているんじゃないですか。五輪と同じように扱えばいいだけだと思います。そこをメディアが逆に区別している。たとえば五輪の露出量とパラの露出量は、日経さんのなかで同じかといえば違うんだと思います。それだけだと思います。

――メディアの側に、パラだから、五輪だからと区別している感覚はないと思います。ただ人々にどれだけ求められているか、視聴率や閲読率は意識せざるを得ないのではないでしょうか。

鎌田 それは(メディア自身が)作り出したことに引っ張られているだけじゃないですか。どんどん数字が目減りしていって、その数字をキープしているだけだと僕は思いますけどね。

――UUUMは、そんな数字は追わないということですか。

鎌田 逆に、楽しくないですか。楽しいことに興奮することの何が駄目なんですか。

(聞き手と構成は高橋圭介)

山脇康
1948年1月生まれ。70年名古屋大経を卒業後、日本郵船に入社。副社長など歴任。11年から公益財団法人日本障がい者スポーツ協会理事、13年から国際パラリンピック委員会理事、14年から東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会副会長、および日本パラリンピック委員会・委員長、15年から日本財団パラリンピックサポートセンター会長。
鎌田和樹
1983年12月生まれ。2003年光通信に入社、10年執行役員。起業家である孫泰蔵氏との出会いをきっかけに、光通信を辞めて起業を決意。人気ユーチューバー「HIKAKIN」との出会いを経て、13年にUUUM(当時はON SALE)を設立し、同年から社長。17年、東証マザーズに上場した。
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