どうすれば、パラスポーツの魅力を多くの人々に伝えられるか――。ユーチューバーに着目した日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ、東京・港)の山脇康会長と、ユーチューバーのマネジメント会社であるUUUMの鎌田和樹社長による対談の後編。課題として浮かび上がってきたのは、日本社会に根強く残る、腫れ物に触るような感覚だ。(前回は「パラスポーツ、子供に届け 人気ユーチューバーが発信」)
特別気を使う感覚は薄い
――ユーチューバーが作成したパラスポーツの動画では再生回数が300万回を超えるようなヒットも生まれています。既存のメディアとの違いは何だと思いますか。
鎌田 100%違うかといえば、そうはいってもみたいなところは残っていると思うんです。「言っていい言葉」「駄目な言葉」のようなものを後でレギュレーション(決まり事)チェックしてもらっていますから。でも、もともとそういうものだと思って(パラスポーツを)扱ってこられたメディアさんがつくるものと、ユーチューバーが演者でありプロデューサーでありディレクターとなって完成させるものとはまったく異なっていて、それが結果的に評価をいただけているのだと思います。
――表現の仕方の線引き、レギュレーションはあった方がいいのでしょうか。
山脇 基本的にタブーのようなものはありません。子供のほうが、どうして手がないの?とか、手がなかったらどうやって靴ひもを結ぶの?とか、平気で聞きますよね。動画にテロップで文字を出すときは、こっちの言葉を使った方がいいよと言うことはありますが、ユーチューバーに事前に伝えておかなきゃいけないことはあまりないです。
鎌田 企業との取り組みでも、普通はチェックしてもらうので、(今回のレギュレーションチェックは)特別変わったフローをしているわけではありません。僕らが一番いやなのは、内容と関係のないところで、これ入れてくださいといったものがめちゃくちゃ増えてきて、本来作りたかったコンテンツと違ってしまうことです。先ほど話のあったテロップについては何とも思わないです。
――ユーチューバーが自由に表現するから、見る人を引きつけるのでしょうか。
鎌田 「100%がんじがらめのなかでコンテンツをつくっている」という表現があるとすれば、僕らは何十%かは分かりませんが、ユーチューバーにある程度自由に表現させているといえます。そのうえで何%かは分かりませんが、一応僕らもチェックはします。
一つ言えることは、パラスポーツに対して特別気を使って、変に腫れ物に触るような感覚は、僕らはいい意味で、薄いと思います。(従来のメディアの)踏み込みが弱かったところを僕らがたまたま強く踏み込んだ、一歩先に進んでみたというだけだと思います。