新人の5月病どう防ぐ 「けちなのみや」でチェック産業医・精神科専門医 植田尚樹氏

せっかく採用した人材の離職は会社にとってのリスクです。ただ、離職を防ぐための対策は極めて難しいのが実情です。

ある食品メーカーは離職防止の観点から「新人にはゆっくりしっかり仕事に慣れてもらおう」と、前年まで3カ月だった新人研修を延長。1年をかけて製造から販売まで、あらゆる職場で研修を重ねてもらったそうです。ところが結果は意に反したもので、離職率が高まってしまったというのです。どうやら新人たちは早く現場に出て、仕事を任せてもらいたかったようです。

活用したい「仕事のストレス判定図」

こうした離職を防ぐうえで、もっと活用されるべきだと私が考えているのが「仕事のストレス判定図」です。

2015年に労働者50人以上の事業所に対して、社員の心理的負担を検査する「ストレスチェック」が義務化されました。判定図は厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」による個々の調査結果を職場ごとに集団分析してグラフ化したものです。

グラフは2種類あり、ひとつは「仕事のコントロール(裁量や自由度)」と「仕事の量的負担」、もう一つは「同僚の支援」と「上司の支援」をそれぞれ縦軸と横軸にとったものです。

これをみると、裁量が低く量的負担が大きいほどストレスは高く、同僚や上司の支援が少なければ少ないほど、ストレスは高まることが一目瞭然です。

逆にいえば、仕事の量が増えたのなら裁量を広げることでストレスは軽減されるというものです。あるいは、上司や同僚の支援を増やしてやることで負担を軽くできることを示しています。

グラフ中の数値は「健康リスク」。数値が高いほどリスクが高いことを示す。グラフではリスクの高低を赤から白へのグラデーションで示している。(出典:厚生労働省資料)

まずはあいさつから始めよう

判定図が示しているように、上司や同僚との関係が職場の環境を大きく左右します。

ある製造業の事例です。事業所を訪れてみると何となく暗い雰囲気で、あいさつの声も聞こえません。ストレスチェックで集団分析をしてみると、かなり危機的な判定結果となりました。総務部門の担当者から「どこを直したらいいですか」と尋ねられたので、「職場の雰囲気づくりが大切です。まずはあいさつから始めましょう」と助言しました。ところがです。翌年「今年もストレスチェックをやりますか」と問い合わせたところ、その担当者はすでに退社していました。

ただ、こうした職場の雰囲気は決意次第で変えることができます。