自筆遺言の負担が減った 財産目録、通帳のコピーも可弁護士 志賀剛一

しかし、これをすべて自書しなければならないとなると、遺言者にはかなりの負担となります。遺言者が高齢者の場合にはなおさら顕著です。判例は、遺言者の意思がなるべく活(い)かされるよう、遺言者の意思内容が明確といえる一定の場合には軽微な方式違背があるいくつかの遺言を有効とする傾向にありました。しかし、遺言本文は手書きであるものの、「目録」がタイプライターで記載された遺言を無効とする判例があります。

自筆証書遺言により不動産登記をする場合、遺言書そのものを法務局に提出することになりますが、遺言に記載された対象不動産の特定があいまいな表記(たとえば「虎ノ門の土地」などの表記)であると、登記申請が却下されてしまいます。遺言書における不動産の特定は、不動産登記簿どおり記載しなければなりません。

また、不動産登記簿の記載事項どおり書いたつもりでも誤記がある場合もありえます。とりわけマンションの多くは区分所有建物といい、登記簿上は最初にマンション全体(一棟の建物の表示)の「表題部」があり、次に個別の部屋「専有部分」の表題部に「専有部分の建物の表示」「敷地権の目的たる土地の表示」「敷地権の表示」がそれぞれ記載されています。

少し長くなるのですが、これらをすべて登記簿どおり正確に記載しなければなりません。特に「敷地権の表示」では、マンションの所有者が敷地に対して有する権利の割合が分数で記載されますが、マンションによってはこの数字の桁がとても大きく、分母の数字が二桁の億になる物件も少なくありません。その場合、数字の書き間違えが起こることがあります。

財産が預貯金であれば金融機関名・支店名・口座番号などを記載しますが、預金口座が多い人の場合、これも遺言者にとってはかなりの負担になっていました。

コピーや他人による代筆も可

前述のとおり、18年7月に相続法が大幅に改正されましたが、その内容は段階的に施行されることになっています。その第1弾が自筆証書遺言の要件緩和です。実務上、大きな意義のある改正で、自筆証書遺言がこれまで以上に利用しやすくなることは間違いありません。