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カリスマの直言

令和の投資 数値で測れぬ価値観が前面に(澤上篤人) さわかみ投信会長

日経マネー

2019/5/27

写真はイメージ=123RF
日経マネー

澤上篤人(以下、澤上) 前回は平成の時代を振り返ってみたが、課題ばかりが浮かび上がってしまった。そこで、今回は令和時代において、長期投資にとって面白くなりそうな展開は考えられないか、草刈と語り合ってみよう。

■投資もデータから手作り感覚へ

澤上篤人氏(撮影:竹井俊晴)

澤上 平成の30年間は、情報化がものすごい勢いで進んだ時代でもあった。デジタル革命とインターネットの普及で、誰もが瞬時に世界とつながることができるようになったのはありがたい。一方、おびただしい量のお仕着せ情報が、これでもかこれでもかと皆の上に降り注ぐようにもなっている。

草刈貴弘(以下、草刈) 情報に関する環境の変化は、私の世代でさえ今昔の感に堪えません。高校生になった頃にポケベルがはやりだし、大学生になる頃には、学生が当たり前のように携帯電話やPHSを持つようになった世代ですが、ネットへの接続はダイヤルアップ、パソコンにソフトをインストールする時は、フロッピーディスクを10枚くらいガチャガチャ出し入れしていました。当時と今を比べると、もう昔のような環境には戻れません。世界中の情報が手に入るようになりましたし、しかも、スピードが格段に上がったことを痛感しています。

澤上 その半面、社会全体がどんどん短絡的かつ表層的になってきている。薄っぺらな価値観であふれ返っていると言ってもいい。例えばマーケットでは、1秒間に1000回を超すような高速売買に代表される短期投資が、我が物顔で暴れ回っている。巨額資金がひたすら追い回しているのは、運用成績という数字であって、それはマネーゲームの域を一歩も出ていない。果たして彼らは、富を創出していると言えるのだろうか。

草刈 ネットの普及が価値の見積もり方を単純にしてしまったのではないでしょうか。ネットが普及したことで、人々は世の中のモノやコトを簡単に比較できるようになりました。当然、一番良いものが欲しいということになるわけですが、風味風合い、好き嫌いといった物差しで優劣をつけるのは案外難しい。簡単で分かりやすいのが数字での比較です。

価値を数字で測るという考え方が行き着く先は「お金」です。今の時代は、価値観の尺度が経済的価値に大きく偏っているなと感じます。間違いではないですが、世の中にはお金で測れない価値もいっぱいあるのに。

澤上 何もかもデジタル化して、データ、データで押しまくる最近の風潮は無機質にすぎる。令和時代になると、情報化やデジタル化に対する反動が、少しずつ顔を出してくるだろうね。「アナログ」や「手作り」といった、これまでないがしろにしてきた価値観を再認識する動きだ。そこは、我々、長期投資家にとって待ってましたの世界だよ。人間的であり、ホッっとした気持ちになるアナログ的な感触を皆が求めるようになる。

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