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カリスマの直言

長期化する米中摩擦 世界株上昇は変わらず(藤田勉) 一橋大学大学院特任教授

2019/5/20

写真はイメージ=123RF
「米中摩擦の長期化は避けられない見通しだが、米金融政策や中国の景気対策の余地を踏まえると世界の株式相場が腰折れする可能性は小さいだろう」

米トランプ政権による対中国関税引き上げを巡り米中貿易摩擦が激化し、世界株は5月に入って大きく下落する場面が目立つ。トランプ大統領は今後も、2020年の大統領選挙を控えて次々に制裁策を打ち出し、米中対立は長期化するとみられる。

対中強硬策のみならず、大統領令を発動しての国境の壁建設、イラン制裁強化など我々日本人にとってトランプ政権の政策は理解しづらい。しかし意外にも米国では対外強硬策が評価されている。米調査会社ギャラップの世論調査によると、共和党支持者のトランプ政権支持率は2017年に一時77%まで下がったが、19年4月17~30日実施の調査では91%と過去最高となった。中国とイランに対する制裁は党派を超えて支持される傾向があるため、全体の支持率も35%から46%と過去最高に上昇した。

■米中対立の火種は多い

今後もトランプ政権は対外強硬策を発動すると予想される。米国はイラン制裁を強化しつつあるが、注目すべきはイラン産原油禁輸措置である。これは各国にイラン産原油の輸入停止を求めるものであり、日本はこれに従っている。ところがイラン産原油の最大の輸出先である中国(構成比24%、2017年)とトルコは米国の制裁措置に従わないと公言している。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はメンツに関わるだけに、米国に言われたからといって直ちにイラン産原油の輸入を止めるわけにはいかないだろう。

トランプ大統領は混乱が起きても、ちゅうちょなく強硬策を実施する人物である。中国が輸入を停止しない場合、米国は金融制裁や在米資産凍結などの対中制裁を科す可能性がある。

加えて中国のチベット族、ウイグル族への宗教弾圧に対して、キリスト教福音派の代表格であるペンス副大統領が厳しく非難している。米国の人口の約25%を占める福音派は南部、中西部の白人労働者層に多く、トランプ大統領の最大の支持基盤である。福音派信者は聖書の教えに忠実であり、キリスト教原理主義者ともいわれる。

英国で厳しい弾圧を受けたピューリタン(清教徒)は1620年にメイフラワー号で米国に移住した(ピルグリム・ファーザーズ)。福音派はこのピューリタンをルーツに持つため、信教の自由をたいへん重視する。福音派の支持を得るためにもトランプ政権は中国の宗教弾圧を厳しく批判し続けるであろうが、これについても、中国は容易に妥協できまい。

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