『なつぞら』広瀬すず めっちゃ笑ってること伝えたい

日経エンタテインメント!

2015年に『学校のカイダン』で連ドラに初主演して以降、作品のセンターに立つ女優として力をつけてきた広瀬すず。朝ドラ100作目となる『なつぞら』には、オーディションではなく制作陣の指名で起用された。どのように撮影に取り組んでいるか。

1998年6月19日生まれ、静岡県出身。13年に『幽かな彼女』で女優デビュー。15年に『学校のカイダン』で連ドラ初主演、16年『ちはやふる』で映画単独初主演。20年には岩井俊二監督の映画『Last Letter』、浜崎慎治監督の『一度死んでみた(仮)』の公開を控える(写真:中村嘉昭)

「北海道でのロケを経て、今はスタジオでの撮影が続いています。なつはそこにいるだけで、周りの人が影響を受けるような太陽みたいな子。だけど戦争孤児で、子どものときに家族と離れてしまった分、常に周りに気を使ったり、勝手に距離を作ってしまうところがあるんです。私は以前から親がいない役がとても多くて、『孤独』という感覚はつかめているつもりでしたが、これまで以上に、ふいに『1人なんだ』と感じてしまうシーンが多いです。柴田家の母さん(松嶋菜々子)や父さん(藤木直人)、じいちゃん(草刈正雄)のことを本当の家族だと思っているけど、やっぱり血はつながっていないんだっていうのはずっと意識にある。『ありがとう』と『ごめんなさい』をちゃんと言う子だけど、本当の家族だったらこんなにはっきりと感謝の気持ちを伝えるのって、恥ずかしくて言えないかもなとか、感じることもありました」

最高に楽しい小畑家の面々

「山田裕貴君が、なつの親友の雪次郎君を温かく素敵に演じてくれているんですが、その小畑家がそろうシーンが私は大好きで。とんでもなく面白いです。とよばあちゃん(高畑淳子)や妙子おばさん(仙道敦子)もそうですし、あと、雪次郎君のお父さん役の安田顕さんとか、何なんでしょう、あの雰囲気(笑)。“劇団小畑”という感じで、本当に楽しいです。

大森寿美男さんの脚本は、登場人物全員の気持ちが浮かび上がって、ページをめくるたびに心がやられます。切なさがすごく描かれているシーンでは、1人では耐えきれなくて、『涙が止まらなかった』って、マネジャーさんと事務所の社長さんに報告したぐらい。人の幸せを自分の幸せだと思っているキャラクターが多くて、台本を受け取るたびに、これを早く世の中に届けたいって思います。

あと、北海道弁がかわいいんですよ。『そんなこと』を『そったらこと』って言うんですね。ほかには『なしてよ』とか『~なんだわ』とか。それこそ『そだねー』も。耳に残るし、まねしたくなる感じ。今、お兄ちゃん(岡田将生)とのシーンでは、カットがかからない間にその方言をいじられるっていうアドリブが増えてきてます(笑)」

なつの出番を示す「な」が連続で並ぶスケジュール表を見て、「私、本当に朝ドラヒロインをやってるんだ」と、立場については少しずつ実感している。

「『わろてんか』に出演していた姉(広瀬アリス)が、葵わかなちゃんのことをすごく褒めていたんです。普段はあまり仕事の話をしないのに、『なつぞら』の会見の後『いやー、朝ドラのヒロインは大変だ』だけはメールが来て(笑)。今までのヒロインの方は、みなさんの疲れを吹き飛ばす力があったんだろうなって思います。そんなパワーが私にあるか分からないけど、『現場でなっちゃん、めっちゃ笑ってる』っていうのが伝わればいいなと思ってます」

心強い存在の松嶋さん

「初めて1日で60シーンくらいリハーサルをやったとき、朝ドラヒロイン経験のある松嶋さんには、『こういう感じで次々と来るからね』と教えていただきました。松嶋さんは共演者の方とのその場での化学反応を楽しまれていて、すごく心強いし、女優さんとして圧倒的なものがあって、カッコいいです。セリフを交わしたら、お母さんの愛情や優しさなど、なつとしてもらう感情があるからこそ、涙があふれたりして、すごく支えてもらっています」

朝ドラ100作目である上、放送がスタートした直後には元号が変わった。このタイミングや状況をどう受け止めているのか。

「私、人や作品との巡り合わせの運だけは異常に強い自信があって(笑)。『紅白歌合戦』の司会のときも『平成最後』という特別な言葉に出合えて、『光栄だけどこんな自分でいいのかな』という思いが頭をよぎりましたが、『運だけは強いから』と言い聞かせました。

以前、ドラマで不安に思っていたときに、共演させていただいた先輩が『自分もそういうときがあったけど、『せっかくだから楽しみなよ』って言われて楽になった』という話をしてくださったんです。それを思い出してここ1年くらい、『せっかくだからやらせていただこう』と考えるようになりました。本当はもっと重さを感じないといけないかもしれないけど、自滅するだけなので(笑)。せっかくだから楽しませてもらおうって、覚悟しました」

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2019年5月号の記事を再構成]

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