自由な時間が斬新なアイデア生むダイバーシティ進化論(村上由美子)

2019/5/18
写真はイメージ=PIXTA
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ゴールデンウイークを皆さんはどのように過ごされただろう。私は子供たちと海に行ったり、友人とミュージカルを見たり、大型連休を満喫した。そしてしばらく触っていなかったピアノでショパンを弾いてみた。時間に追われる生活から解放されると、普段できないことに挑戦したい気持ちになる。

10日間の連休はあっという間に終わってしまったが、もしもっと長い自由な時間ができたら、何に挑戦しよう。想像するだけでも楽しい。

アカデミアの世界では、サバティカルを利用して海外の大学などで研究活動をする人が多い。欧米ではサバティカルを導入する企業が増えている。一定年数ごとに社員に長期休暇を与えるという制度だ。私の友人は、会社のサバティカル期間に自転車で世界一周の旅に出た。別の友人はプロの料理学校に通った。

サバティカルの語源は旧約聖書。7年ごとに休耕し大地を休ませることで、再び肥沃な土壌にするという意味だ。人間も創造性を高めるためには、思い切ったギアチェンジが有効かもしれない。同じ環境に長くいると思考がパターン化しやすい。普段の仕事と無関係な活動に挑戦してみると、視野が広がり発想も多様化する。

米シリコンバレーではイノベーションを促進するため、勤務時間の一定割合を自由時間として使える制度を導入した企業がある。最近副業を認める日本企業が増え始めた背景にも、本業との相乗効果への期待があるだろう。

近年世界の経営者の間では、アートスクール通いがブームだ。あえてビジネスと無関係の美術を学ぶことで、眠っていた感性が研ぎ澄まされる。それが、自由な発想の発射台となる。ダイバーシティは社会や企業に必要とされるが、個人の思考回路上でも重要な役割を果たしている。

社員から奇想天外なアイデアを期待したいのであれば、企業はまず社員に十分な自由時間を確保させることが重要だ。できれば社外の空気を吸い、本業以外の活動に関わり、非日常的な刺激を受けさせる。

当然ながら、残業で疲弊している社員に創造性は求められない。定型的業務はテクノロジーが代替する時代。創造力や共感力こそが人間の付加価値を高める。それを理解する企業は、休暇制度の見直しも検討するであろう。

村上由美子
 経済協力開発機構(OECD)東京センター所長。上智大学外国語学部卒、米スタンフォード大学修士課程修了、米ハーバード大経営学修士課程修了。国際連合、ゴールドマン・サックス証券などを経て2013年9月から現職。米国人の夫と3人の子どもの5人家族。著書に『武器としての人口減社会』がある。

[日本経済新聞朝刊2019年5月13日付]