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AIができぬ料理人の技とは 「料理界の東大」トップ辻調理師専門学校校長 辻芳樹氏(下)

「料理も人間臭さが加わると面白くなる」と辻芳樹校長

――料理の理論が分かった人が商品開発をするといいということですね。

将棋の羽生善治九段がAIと対局した時に、AIが大正時代後期の手を指してきたそうです。それを受けて羽生さんは「大正後期の手なら、私はもっと面白い手を打つ、それが人間臭さなのです」と言っていました。これは料理にも通ずるところがある。

勝ち負けとかいう問題ではなくて、人間臭さが残るかですね。食品開発の現場で、生産性を重視するとAIには勝てない。しかし、ガストロノミーというか、文化的背景を持って、数時間を歓談しながら食事をするという、最も人間的な場面では、やはり人間臭さが残ったほうが面白いわけです。

――御校の卒業生が商品開発にかかわると、家庭の食卓がもっと盛り上がるような料理、商品が出てくるかもしれない。

すごくあり得ますね。日本人は他国の文化などを、日本的にアレンジしていくことが得意です。お菓子の分野でも、ティラミスやカヌレを日本流にアレンジして、本当においしいものに作り上げてきた。世界の料理、食品の中には、そうすることができるネタがまだまだたくさんあります。料理人、技術者が食品開発にかかわることで、もっと面白いものが出てくる。最も可能性が高いのが、コンビニで売られている商品ではないでしょうか。

――2001年、米ニューヨーク「9.11テロ」のとき、米国を代表する料理人であるデーヴィッド・ブーレイ氏が、グラウンド・ゼロに仮設レストランを設営し、救出された人、救助に当たっている作業員に、約4週間で100万食を超える食事提供したと、先生の書かれた本で知って驚きました。いわゆる高級レストランで、このような大量調理をすることは可能なのでしょうか。

唯一違うのは、衛生管理面と、大量調理に必要な機材を使えるかということですね。おいしいものをたくさん作るという点では、大量調理の場合、そのプロセスは簡素化されます。ただし、味覚的に言うと、プロセスが多ければおいしくなるということでもありません。食材や調味料の配合、レシピの問題で、これにこだわって作れば、電子レンジでチンしても、おいしいものは絶対にできるはずです。大量に煮込んだ方がおいしくなる料理はいくらでもあります。

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