ファブリックケア事業部の原岡理映ブランドマネジャー(47)は09年と12年に出産。育児休業中も月1回の報告書で、商品や売り場に関して気付いたことを生活者の立場で伝えることができ、「仕事から完全に離れることなく生活できたことがよかった」と振り返る。復帰後も上司が午後5時になると声をかけてくれたため「時短勤務にする必要もなく、フルタイムで定時に帰っていた」。
それでも当時は子どもの病気などで会議に出席できないこともあったが、今はウェブ会議が導入されている。「この5年で急激にかわり、両立のための時間や場所は調整できるようになった。ただ選択肢が増えても育児は一律ではない。一人ひとりの環境に合わせたサポートをしていきたい」と話す。
沢田道隆社長「多様な視点、成長に不可欠」
――昨年から順位を4つ上げ初の1位となりました。
女性の力を事業に生かす取り組みについては1980年代から進めており、一連の取り組みが今回評価されたことは大変誇りに思う。
世界の人々のニーズに対応した革新的な製品を提供するためには「商品開発」「組織運営」「人財開発のイノベーション」を絶え間なく進めていくことが不可欠だ。多様な社員の力を引き出し、束ね、時代の変化を捉えて新たなブレークスルーを起こすことが企業の成長につながる。この取り組みを進めるために16年1月、花王は「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)推進部」を設立した。
――女性の活躍を推進する意義をどのように感じていますか。
女性の活躍なしに成長はなし得ない。花王グループは家庭で広く使う日用品と化粧品を扱うメーカーで、女性が使う商品がたくさんある。ものづくりという面では女性が活躍する機会は非常に多く、結婚や出産を経ても継続して働くことが早い時期から当たり前の状況となっている。体力負荷の大きい工場のラインなどでも、誰でもオペレーションできるよう設備の改善や作業の見直しを進めている。
――今後の課題は何でしょう。
より多様な視点の導入が必要だ。特に会社の日本における女性比率や女性管理職の比率を上げていかなければならない。そのためには女性が働きやすい体制や運用が必要となる。
また多様性における社会全体の意識が上がってきており、その機運をさらに高めていきたい。
両立への工夫が仕事のプラスに ~取材を終えて~
働き方の自由度が高まると、職場で直接コミュニケーションをとる機会が減り、意思の疎通が不十分になるという不安がある。これに対して長谷川さんは「自分の指示と相手の考え、このすり合わせを正確にするよう心がけている」という。原岡さんは「曖昧な優しい言葉ではなく、まず結論をはっきり伝える」ことを意識している。両立のための工夫は、仕事をスムーズにするきっかけになる。
沢田社長が指摘するとおり、女性管理職の比率は日本に限るとグループ全体より低い。「社員一人ひとりにあった働き方が必要」と考える先輩管理職が増えることで、一層の改革が進むことを期待したい。
(女性面編集長 中村奈都子)