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拙速な対応はNG 誠意が伝わる最強の謝罪テクニック 『謝罪力』竹中功氏

2019/5/15

タックルした部員個人を悪者扱いしているように見えてしまったので、堂々と行為を認めた本人と見比べてのマイナスイメージを招いてしまった。まるで「謝らない」と言い張るかのような態度が反感を買った。「謝罪の場面では落とし所の設定能力が問われる。謝るという行為そのものは、道具にすぎない。目指す落とし所を早く決めて、そこへ導くイメージで進めないと、逆に事態を悪くする『謝り損』となりかねない」(竹中氏)

謝る機会を減らすのは、最も有益な謝罪スキルだろう。「想定外」を極力ゼロにするつもりで、リスクの洗い出しに日ごろから努めておけば、トラブルや事故が減る。仮に発生した場合でも、適切な謝り方を用意しやすくなる。近頃は交流サイト(SNS)が普及したのに加え、世代や文化の違いへの寛容度が下がって他者を責め立てるようないさかいも増える傾向にあるようだ。「意外な状況で謝罪を求められるケースが増えていて、上手な謝罪のノウハウは仕事に限らず、日常生活でも重要度を増している」と、竹中氏はみる。

■「反省できない人」がトラブルメーカーに

仕事のトラブルだけではなく、家庭内、親戚間、近所同士などにも、もめごとの種は潜んでいる。「通勤電車で足を踏んだ、踏まれたなどという細かいいさかいも日常的に起こり得る。怒りっぽいシニア層を見かけることも増えてきた」(竹中氏)。もちろん、常に自分から非を認めて丁重に謝る必要があるわけではない。ただ、謝罪にまつわる基本的なメソッドを理解しておけば、妥当な落とし所を早めに見つけてスムーズに解決しやすくなることは事実だ。注意したいのは、場当たり的な謝罪は相手を無用につけあがらせ、かえって解決を難しくする心配があること。あくまでもきちんと原因を見極めて、謝るべきかどうかを判断するという、基本動作が欠かせない。

どんなケースの謝罪でも「謝る側には共感力が求められる」と竹中氏は強調する。ここで言う共感力とは、怒っている相手と立場を入れ替えて考えることのできる力を指す。相手が腹を立てている理由を見抜くことが大切だ。和解に導く再発防止策や償い方を示すにあたって、相手の気持ちへの共感がないと勝手な言い草になってしまいやすい。「まずは立場をそっくり入れ替えて考えるとよい」と、竹中氏は「トラブルの自分事化」をアドバイスする。

事情を理解してもらえれば怒りが解けやすくなるということは、見方を変えれば、トラブルやいさかいの根っこに「互いのコミュニケーションの失敗がある」ともいえる。「もめ事になっても『自分は悪くない』と言い張る人は、往々にして他人の事情を察する能力が低い。こういう『反省できない人』はトラブルメーカーになりがち」(竹中氏)。取引先や上司・同僚とも普段からこまめに言葉を交わして、事情を察してもらいやすくしておくのは、謝罪が必要な場面を減らすためのリスク回避策にもなってくれそうだ。

竹中功
謝罪マスター。モダン・ボーイズCOOとしてビジネス人材の育成や広報、危機管理などに関するコンサルタント活動を手がける。吉本興業に入社後、宣伝広報室を設立。コンプライアンス・リスク管理委員、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役などを経て、2015年退社。著書に『よい謝罪』『他人も自分も自然に動き出す最高の「共感力」』など。1959年大阪市生まれ。同志社大学院総合政策科学研究科修士課程修了。

謝罪力

著者 : 竹中 功
出版 : 日経BP社
価格 : 1,620円 (税込み)

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