サンプルとして、某電機メーカーの等級制度を簡単に示したものを図示します。この例でいえばM1が課長になる等級です。そして普通の大卒はS2等級からスタートします。とすると、S2とM1との間にはS3、S4の等級があるので、3回昇進する必要があるわけです。
たとえばあなたの上司が35歳でM1等級に昇進し、課長になったとしましょう(本当は平均的に課長になる年齢を知ることができればなおよいのですがそれはあまり公表されていないかもしれません)。
となると大卒の新人は、13年間で3回昇進すると課長になれるわけです。
1つの等級を昇進するのに約4.3年。
これがあなたの会社が従業員に求める標準的な出世の速さです。
これも少し考えてみればわかりますが、4年いっぱいを使えるわけではないのです。
4年で昇格するということは5年目に昇格です。そのための判断は、あなたの4年目がスタートした時点ですでに始まっています。ということは、実質3年目までの評価で昇格が決まるということです。
そして人より早く出世したい、ということであれば、3年目ではなく、2年目、あるいは1年目から高い評価を得る必要があるのです。
ではそのための基準はなんでしょう? 評価はもちろんそうなのですが、そもそも根本的な考え方を理解しておくことが重要です。そのヒントはやはり等級にあるのです。
等級基準の定義を読んでみる
図示した等級制度のサンプルでいえば、右側に「定義」という欄があります。実はこの内容は、とても時間をかけて考えられ、作られています。
たとえば今あなたがS2等級にいて、人よりも1年以上早くS3等級になりたいのなら、S3等級の定義をしっかり読んでみましょう。
「自発的なだけではなく、周囲に対してリーダーシップを発揮する役割(大学院卒相当)」
ここに書かれている文章のポイントは以下の点です。
⇒指示待ちではだめ。自発性は当然必要。
「周囲に対して」
⇒自分だけで仕事をしているのはだめ。周りとコミュニケーションをとっていること。
「リーダーシップを発揮」
⇒リーダーシップについて理解していること。そして行動していること。
「~する役割」
⇒能力ではなく、役割で等級を定義しているということ。
「(大学院卒相当)」
⇒ショートカットしたければ大学院資格をとること。
このように、人事制度を設計する側の考えでいえば、わずか1行程度の文章にこれだけのヒントを込めているのです。
言い換えるなら、等級の仕組みの本質は、出世の基準を何にしているか、ということを会社が示してくれている点にあるのです。
