夏場の軽快ジャケットの正解とはどんなものか。物理的な軽さだけでは服好きな紳士には物足りないはずだ。暑い最中もつい羽織りたくなる、ある種の高揚感を得られる一着がいい。そんな観点から浮上したのが、これから紹介する3タイプの素材。気分まで軽やかにしてくれる、夏ジャケットの最適解だ。
(1)上質さ に心躍る[ シルク&リネン ]
リネンの爽快さに加え繊維の女王の贅沢さも堪能
夏場となると天然リネンのサラリとドライなタッチが恋しくなる。とはいえリネン100%のジャケットはシワになりやすく、ケアが面倒。ゴワゴワして実は着心地もさほど優れないものもある。そんなところからウールにリネンをブレンドした“リネン混”を選ぶ人が多いが、より上質な一着を求めるなら、そこにシルクまで混ぜた三者混素材を狙うといい。
こうした“シルクリネン混”のメリットは、リネンの爽快感に加えて確実にラグジュアリーな風合いが高まるところ。少量の混率であっても、繊維の女王と呼ばれるシルク独特の優雅な光沢や滑らかなタッチが生きるのだ。さらに3種の繊維混合のため、表情がぐっと豊かに仕上がるのも魅力。それぞれの色の染まり具合の違いから、無地でも独特のメランジ感を得た奥行きある色調となるのも特徴だ。
嬉しいことに今季の店頭にはシルクリネン混ジャケットが豊作。爽やかなだけでなく、気分まで上がる一着がお望みならお試しを。
■LARDINI/ラルディーニ
クラシックな英国調柄もシルク&リネンでリュクスに
粋なグレンチェックを配した生地は、シルクが多めに入ることで見るからにソフトなタッチ。それでいてリネンの爽快さもしっかり残す。得意の軽快仕立ても冴え、じつに快適な着用感だ。ウール59+シルク33+リネン8%。 10万7000円(ストラスブルゴ)
[ 心も身体も気持ちいいシルク&リネン ]
夏素材の代表選手であるリネンの清涼な風合いともに、シルクのリッチな光沢や滑らかさまで味わえる“シルクリネン混”生地。ウール100%よりも格段に味わい深い風合いも魅力だ。混率の違いで表情やタッチは微妙に変わるので、店頭で好みのものを探してみてほしい。
■BELVEST/ベルヴェスト(右)
シルクリネンならではの表情豊かなネイビーJK
小箱にしまえるほどの軽やかな仕立てを特徴とする「ジャケット・イン・ザ・ボックス」の新作。メランジ感あるネイビーベースに掠れたようなチェックが浮かぶ生地は、清涼感もたっぷりだ。ウール85+シルク10+リネン5%。 20万3000円(八木通商)
■LATORRE/ラトーレ(左)
色合いと独特の素材感でコロニアルなムードを演出
幅広ラペルに低めのゴージラインと、クラシックな注文服を彷彿とさせるやや攻めたデザイン。淡い茶ベースのウインドウペーン生地は、リネン特有のシャリ味を残しつつ、肌触りは滑らかだ。ウール73+シルク16+リネン11%。 9万6000円(コロネット)
〈 合わせのポイント! あくまで“品”を重視したインナーを 〉
TIED UP
■BEAMS F/ビームスF
名門謹製の夏向けツイード生地を採用
生地はロロ・ピアーナの“リネンツイード”。上質ウールにシルクとリネンを贅沢に混紡したことで、爽快なタッチと上品な光沢を両立している。端正なネイビーということもあり、仕事でも着やすい一着だ。ウール67+シルク22+リネン11%。 8万3000円(ビームス 六本木ヒルズ)
TIED OFF
■SHIPS/シップス
程よく素朴な味わいが今らしい洒脱さに貢献
シップスのジャケットの中で最もベーシックなモデルを、ロロ・ピアーナの”リネンツイード”で。チェック柄に加え、ところどころに浮かぶネップが味わい豊かな仕上がりだ。こなれた価格も魅力。ウール55+シルク20+リネン13+ナイロン12%。 5万8000円(シップス 銀座店)
NO COLLAR
■ISETAN MEN’S/イセタン メンズ
落ち着いたブラウンが大人の色気演出に絶好
ワイドラペルと角度あるゴージライン、やや構築的なシルエットを特徴とする「フィレンツェ」モデル。茶に紺のチェックを配したシルクリネン混生地がその粋な感じを盛り上げ、カジュアルな合わせも決まる。リネン45+ウール36+シルク19%。 7万9000円(伊勢丹新宿店)
【 スタイリスト武内雅英氏の着こなし解説 】
上質さを堪能するなら着こなしもエレガントに遊ぶ
「着るだけで気分が上がる“上質さ”が魅力のジャケットなので、着こなしも品格をキープしたいところ。軽やかな気分を楽しみたいから多少の色柄はもちろん必要ですが、色なら少し抑えたトーン、柄ならモチーフはスタンダードなものを選ぶなど、少しの節度がポイントです」