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絶滅と思われた花を再発見 ハワイ断崖絶壁の秘境

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/18

ナショナルジオグラフィック日本版

ハワイ原産のハイビスカスの仲間(Hibiscadelphus woodii)。国立熱帯植物園の研究者が再発見した(PHOTO COURTESY OF KEN WOOD, NATIONAL TROPICAL BOTANICAL GARDEN)

米国ハワイ州、カウアイ島のカララウ渓谷にある人里離れた険しい断崖絶壁に人が近づくことはほぼ不可能だ。2009年に見られたのを最後に絶滅したと考えられてきたハイビスカスの仲間(Hibiscadelphus woodii)が、その断崖絶壁に生えているのが2019年1月下旬見つかった。

これはカウアイ島に拠点を置く国立熱帯植物園(NTBG)の研究者が新たな道具、ドローンを使って見つけたものだ。それまで何十年もの間、研究者は危険な稜線を歩いて崖にたどり着き、垂直に切り立つ絶壁をロープで下り、希少な在来植物を探して隅から隅までくまなく調べていた。

この種は1991年に初めて発見され、1995年に命名された。花は鮮やかな黄色で、やがて紫がかった色合いに変化する。授粉は、在来種の鳥が行っていると考えられている。Hibiscadelphus woodii(以下H. woodii)を繁殖させようと、異なる株の花での授粉、接ぎ木、挿し木を試みたが、どれも成功せず、2016年に絶滅したと見なされていた。

H. woodiiとみられる写真を、ドローンが撮影したのが2019年1月のこと。写っていたものを確認するため、2月に写真のGPS座標にもう一度ドローンを飛ばし、より多くの写真を撮影した。その結果、崖の側面に3本のH. woodiiが生えていることが明らかになった。

「花が写っていることを期待していましたが、その時は開花していませんでした」とNTBGのドローン・スペシャリスト、ベン・ナイバーグ氏は話す。

■誰もたどり着けない

ナイバーグ氏は、今回の写真を撮影したドローンを操縦していた。同氏は、崖を格子状に区分けしてスキャンしてゆき、さらに直感に従いある調査領域に狙いを定めた。また、植物を再び見つけられるように、GPS座標や標高などのデータを記録した。

しかし、たとえ植物のありかがわかったとしても、簡単に行ける場所ではない。3本のH. woodiiは稜線の150~180メートル下にあり、あまりに危険で到達困難なため、まだ誰もたどり着けないでいる。

「崖はまさに絶壁で、H. woodiiははるか下のほうにあります。ヘリコプターを使う可能性を探りましたが、生えている場所の地形が、ヘリコプターで近づけるものかどうか確信が持てません」とナイバーグ氏は話す。「たとえ崖の上にたどり着いたとしても、ロープで下りて行くのは、とても難しく危険です」

しかし、同氏らは、新たな技術で難題を解決できると期待している。現在、植物を切り取って回収できるドローンを開発中で、これが実現すれば、崖の側面に生える植物の調査が容易になるかもしれない。NTBGは、生物多様性ホットスポットとして知られる同地域を約2年半にわたりドローンで調べてきた。

■ハワイ固有の植物の宝庫

「NTBGの植物学者は、カウアイ島の険しいカララウ渓谷の崖周辺で、新種の植物を過去数十年で11種発見してきました」とNTBGの生物学者ケネス・R・ウッド氏は話す。「植物相の多様性をハワイ諸島全域にわたって調べても、固有種の数においてカララウ渓谷に匹敵する谷は他にありません。また、カララウ渓谷には絶滅の危機に瀕する植物が最も多く生息しており、そのうちの51種は現在、米国版レッドリストで『絶滅危惧種(endangered)』に指定されています」

今回のH. woodiiの再発見により、ドローン技術の可能性に科学者は興奮している。最僻地の最も危険な地域においても、新種の発見や絶滅したと思われる種の再発見が期待できるからだ。

「本当に無限の可能性が広がっていると思います」とナイバーグ氏は語る。「ドローンはさまざまな方法で、多種多様な分野に応用できるのです」

(文 KRISTEN POPE、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年4月23日付]

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