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ロボットエリカと話したい 自然な会話へ試行錯誤

AIの未来を若手研究者が語る(京都大学・井上昂治)

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NIKKEI STYLE

 次世代の人工知能(AI)研究を推進するコミュニティー「人工知能研究会/AIR」のメンバーが、リレー形式で若手の目線から見たAIの最前線をお伝えします。会員数約1500人のAIRは、東大、京大、阪大の若手研究者が中心。今回の執筆者は京都大学大学院情報学研究科助教の井上昂治さんです。

こんにちは。京都大学の井上昂治と申します。これから私、井上がなぜAI研究にひき付けられていったのか、体験談を交えながらお話いたします。

「リラックスできる音楽をかけて」「昨日のサッカーの試合の結果を教えて」

最近の私たちの生活では、スマートスピーカーや会話ロボットに向かって話しかける光景が日常的なものになりつつあります。「人間のように会話ができるロボット」の実現は人工知能(AI)研究の大きな目標の1つです。

AIを搭載した会話ロボットというと、SFの世界ですが、鉄腕アトム、ドラえもん、スターウォーズのC-3POなどを思い浮かべるでしょう。これらのロボットは一緒に登場する人間(キャラクター)たちと難なく会話ができています。

しかし、現在の会話ロボットに目を向けてみると、簡単な質問やアプリの操作はこなすことができますが、人間のようにスラスラと長くて深い会話をこなすことは難しいです。

このため、現在の会話ロボットは「ツール」としては認められていますが、上記のSFに登場するような人間の「パートナー」としては、十分であるとはいえません。

私は、会話ロボットを人間のパートナーにするための研究を進めています。特に、音声で会話をする機能に対応する「音声対話システム」が私の専門分野です。皆さんの身の回りのスマートスピーカや会話ロボットがもっと賢くなり、社会的に信頼される存在になることを目指しています。

突然やってきた人間そっくりのロボット「エリカ」

今から約4年前、京都大学大学院情報学研究科修士課程に在籍していた私は音声信号処理の研究に取り組んでいました。博士課程に進学するとき、指導教員の河原達也教授から「今度からロボットの研究プロジェクトが始まるから」と言われ、どんなロボットかも知らず、ぼんやりと待っていました。

それから数日後、研究室にロボットが届きます。大きな箱を開けてみると、なんとそこにいたのは、人間そっくりのロボットでした。いわゆる「アンドロイド」です。見た目があまりにも人間にそっくりだったので驚くばかり。そして、いざ組み立てみようとしてもよくわかりません。教授と2人で試行錯誤の末、なんとか組み立てることができました。名前はERICA(エリカ)。研究プロジェクトの名前から付けられたとのことです。

その日からERICAの研究がスタートしました。研究といっても何をやっていいのかよくわからず。まずは、ERICAを椅子に座らせて固定するためのベニヤ板をホームセンターまで走って買いに行き、ノコギリで自作。市販の椅子を改造すること丸2日。特製の椅子がようやく完成しました。その次は配線です。といってもロボットに関しては素人でしたので、トライ・アンド・エラーの連続です。苦労の末、ようやくERICAが口を動かしながら言葉を発するようになりましたが、配線はまさに「盛りそば」状態。それでも初めて動いたときの感動は今でも覚えています。

この研究プロジェクトの目標は、人間のような自然な会話を、ロボットができるようにすることです。そこでまずは、最初の半年で、簡単な自己紹介の対話ができるようにすることから始めました。しかし、当時の私は音声対話システムを作った経験がありません。研究室の先生や先輩に手取り足取り教えてもらいながら、徐々にシステムを作っていきました。

「趣味は何ですか」、「私の趣味は○○です」。こんな簡単な会話をするだけでも、ロボットにはとても難しいということを痛感しました。そして、朝から夜遅くまで何度もテストを重ね、ようやく初期のシステムが完成しました。その後、このシステムを日本科学未来館での記者会見にて披露しました。大勢の人の前で動くシステムを一からつくることはとても大変でしたが、この時の経験がAI研究者になるための大きな一歩になったと思います。

エリカの成長とともに自分も成長した

研究プロジェクトが本格的にスタートしました。研究を進めていくにつれて、ERICAの会話能力もどんどん進化していきました。私がいる研究グループでは、傾聴(お年寄りの話を丁寧に聞く)、就職面接(面接官)、研究室紹介、などの会話をERICAがスムーズにこなせるようになりました。そして、2018年8月には再度、日本科学未来館で記者会見を行い、3年半でのERICAの成長を披露しました。

成長したのはERICAだけではありません。私自身も大きく成長しました。「相手が会話にどの程度興味をもっているのか」を自動で推定する研究に取り組み、その成果を博士論文としてまとめ、博士号を取得しました。2019年の3月には、情報処理学会全国大会のイベントIPSJ-ONE(若手トップ研究者によるトークイベント)にて講演する機会を得ました。自分の研究について多くの人に知ってもらうことができ、研究者としての幅が広がったと実感しています。

人間とロボットの違いとは

 ERICAの一連の研究を通じて、「人間とは何か」というとても難しい問題を考えるようになりました。人間らしい会話ロボットをつくることが研究の目標ですが、ロボットを作ればつくるほど、「ここが足りない」、「ここはまだロボットらしさがある」、「人間はこれが自然にできているのにロボットにはできない」といった課題がたくさんでてきました。しかし、これを少しずつ解決していくことで、「人間を理解する」ことにつながると信じています。

そして、この科学的なサイクルに私はとても惹きつけられました。人間らしさとは何か。人間らしいロボットをつくるためにはどうすればよいのか。AIやロボットが普及する将来の社会はどうなっていくべきか。このようなことを考えながら、今日も地道に研究を進めています。これからも音声対話システムや会話ロボットの研究を通じて、便利な世の中をつくるだけでなく、人間らしさの解明にも貢献したいと考えています。

今回は、アンドロイドERICAに関する研究について紹介しました。そして、AIをつくることによってAIに魅せられていく過程を、私自身の体験をもとに振り返ってみました。次回は、音声対話システムや会話ロボット関連の最近の研究動向について、特にAIブームがもたらしたものを中心に紹介します。また、私がAI研究者を目指すようになったきっかけについても紹介したいと思います。

井上昂治氏 京都大学大学院情報学研究科 (工学部情報学科兼担) 助教、音声メディア分野を担当 人工知能学会 研究会優秀賞(2018年) 音声対話システムを主な研究分野としている

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