共働き世帯をわしづかみ 日用品、令和のヒット予測
雑誌「日経トレンディ」は全12の商品ジャンルを定め、2019年上半期にヒットしたものを選定し「上半期ヒット」とした。そのなかから、「新規性・売れ行き・影響力」という 3つの評価項目に則り「大賞」を決めた。下半期に注目の新商品やサービス、これから売り上げが爆発的に伸びそうなものは「令和ヒット予測」とした。今日は日用品ジャンルを紹介する。
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共働き世帯の数が専業主婦世帯の数を追い抜いたのは平成が始まってすぐの頃。それから約30年、共働き世帯は今や専業主婦世帯のほぼ2倍となった。
日用品市場では共働き世帯のニーズに応える時短商品が相次いでいるが、2019年上半期は家事作業そのものを省いてしまうものが増えた。その代表が「こすらない」新方式のバス用洗剤「ルックプラス バスタブクレンジング」(ライオン)だ。スプレーして60秒放置した後、水で流すだけで洗えるという革新性が浴槽掃除の重労働に悩む共働き世帯の心をわしづかみ。発売6カ月で累計販売個数が1300万個を突破するヒットを記録した。「ルックプラスの発売後、バス用洗剤市場全体も大きく伸びた」(インテージ)という。
浴槽にスプレーし、60秒後に水で流すだけで汚れが落ちる新成分が売り。「こすらず洗う」という新提案が風呂掃除を負担に感じていた消費者に響き、18年9月の発売から半年で本体の累計販売個数が500万個、詰め替え用を合わせた売上個数が1300万個を突破。バス用洗剤市場を約1.2倍に押し上げた実績も含め「大賞」とした。
洗濯用洗剤のシェアトップをひた走る巨人「アタック」(花王)も革新性を武器にブランドリニューアルで時短市場へ踏み込む。4月1日に発売した「アタックZERO」は、新時代に合わせて洗浄基剤から新規に開発。「油になじみやすく、水に溶けやすい」という従来の界面活性剤には無かった機能で洗浄力や消臭力を高め、すすぎ時間を短縮することで家事の負担を軽減した。初動は好調で、洗剤市場で大きくブレークしそうだ。
「油になじみやすく水に溶けやすい」という、相反する特徴を併せ持つ新基剤を採用した洗剤。「花王史上最高の洗浄基剤」をうたい、従来商品「アタックNEO」を終売するなど、自ら退路を断つ強気の戦略で発売9カ月で売り上げ300億円を目指す。若手俳優5人を使ったCMも奏功し、立ち上がりは好調。特に「片手で計量できるワンハンドプッシュタイプが売れている」(花王)。
「ネガ」から「ポジ」へ変換してヒット
インバウンド需要から生まれたヒットもある。「ピッタマスク」(アラクス)は、ポリウレタン素材のマスク。14年に発売した初のカラーバリエーション「グレー」が訪日外国人の土産需要でじわじわと浸透。「マスクをしている観光客が話題になり、「逆輸入」される形で日本人の間でも人気になった」(True Dataの烏谷正彦氏)。18年秋にミニサイズのカラー版を発売したところ、多くの女性が手に取り売り上げが急上昇。ネガティブなイメージのマスクがファッションアイテムとしても使われるようになった。
「ネガ」から「ポジ」へ変換することでヒットした日用品は他にもある。部屋のウイルスや菌を除去するとうたう「クレベリン」(大幸薬品)は、写真立ての後ろなど目立たない場所に隠して使われていることが調査によって判明した。そこで部屋になじみやすいように真っ白なデザインに変更したところ、ロフトや東急ハンズなどこれまでカバーできなかった販路の拡大に成功。全体の売上高が前年同期比で13.6%増加する人気となった。インテリア性の高いデザインがユーザーのロイヤルティーを育てた形だ。
【上半期ヒット】 カラーマスクがファッションアイテムに
13年の発売以降、インバウンド需要を中心にじわじわとシェアを拡大し続けていたポリウレタン素材のマスク。18年秋に女性に向けたミニサイズのカラー版を発売したところ人気に火が付き、商品の出荷を一時停止するほどに。病気や花粉の予防といったネガティブなイメージを持たれがちなマスクを、ポジティブなファッションアイテムに昇華させた。
【上半期ヒット】 デザイン変更で販路が拡大
ブランドリニューアルした「クレベリン」が好調だ。パッケージから「ラッパのマーク」を外したほか、部屋のインテリアに溶け込むように真っ白な商品デザインに変更したところ、店頭での陳列スペースや販売チャネルが拡大。特に「クレベリン 置き型」は、売り上げが前年同期比17%増になるほど。
【上半期ヒット】 角まで塗れる! 機能性が形になった
四角いタイプのスティックのり。用紙の角までしっかり塗れるという、一目で分かる機能性が受け、目標比150%の売り上げ実績を記録した。人気なのは使いやすいSサイズ。店頭で品薄になることもあったという。
【上半期ヒット】 「ちょうどいい」サイズで人気に
110組と箱入りタイプに近い容量のミニソフトパック。ポケットティッシュより枚数に余裕があり、幅約16cmで箱入りタイプよりも持ち運びしやすいというサイズ感で移動が多い働く女性を中心にヒット。当初見込みの2倍以上の売り上げで推移しているという。
【上半期ヒット】 ポケットに入る超小型水筒
熱中症対策やプラ製ストロー廃止の流れで存在感が増す水筒。中でも注目されているのが超ミニ水筒「ポケトル」だ。ポケットに入れてどこへでも持ち運べるというコンパクトさが受け約30万本を出荷。ロフトでの販売実績は2万6300本以上を記録した。
【上半期ヒット】 置くだけで立つ、縦型ペンケース
本体底面にある吸着パッドで机にしっかりと貼り付いて自立する筒型のペンケース。衝撃を低減するバネ構造も内蔵し、立てられるペンケースの倒れやすいという弱点を見事に解消した。初年度の販売目標は20万個だが、2月末の発売以降計画比約3倍のペースで推移しているという。
【上半期ヒット】 焼き上がりが激変するトースト用グッズ
一般的なオーブントースターに入れるだけでパンがふっくらと焼き上がる陶器。水分を含ませてから庫内に置いて加熱を開始すると、スチーム効果でパン内部の水分を保ったまま焼き上げられるという。高級トースターのような仕上がりが話題になり、発売2カ月で約1万個を出荷。現在も品薄、欠品の状態が続いている。
【上半期ヒット】 若年層の新規ユーザーを獲得
ミノキシジルを採用した発毛剤。トップブランドの「リアップシリーズ」(大正製薬)には及ばないが、イメージキャラクターに本田圭佑を起用し、「特に20~40代の新規若年層の獲得に成功した」(True Data)。育毛剤やトニック製剤などからの移行が多いという。
次ページからは「令和」のヒットを予測する。
【令和ヒット予測】 手元を拡大する「掛けるルーペ」
Zoff初となるメガネ型ルーペ。老眼鏡とは異なり、手元のものを大きく見ることができる。拡大率は1.6倍。税別7000円と1万円を切る価格を武器にハズキルーペが開拓した巨大市場に乗り込む。19年1月にポップアップショップで開催された先行販売会では、期間中(4週間)に約500本が売れたという。拡大率1.8倍のモデルは5月発売予定。
【令和ヒット予測】 部分消しができる、メモ用磁性シート
磁性シート採用の繰り返し使えるメモパッド。細字と中字に対応した専用ペンで、文字やイラストを滑らかに書ける。業界で初めて「部分消去」が可能になり、鉛筆と消しゴムのように使えることが魅力。
【令和ヒット予測】 「脱プラ」ムードを象徴するエコグッズ
日本製紙が紙製ストローの販売を開始。マイクロプラスチック問題から波及したプラ製ストロー廃止の流れを受けて、飲食店やホテルなどを中心に採用が広がりそうだ。高い耐久性やくわえたときの口当たりの良さも特徴。日本製紙は「国内シェア10%を目指す」としている。
【令和ヒット予測】 生活習慣病が対象の医薬品がネット販売へ
中性脂肪異常改善薬「エパデールT」のネット販売がついに解禁される。13年にスイッチOTC薬として店頭販売が始まり、要指導医薬品としての販売期間を経て、今年4月に第1類医薬品への移行が承認された。ただ、購入者への血液検査の確認や、セルフチェックシートの保管(2年間)を薬局に義務付けるなど、販売要件はより厳格化された。
【令和ヒット予測】 痛風予備群に朗報
2月に発売されたファンケルの「尿酸サポート」は、「高めの尿酸値を下げる」とうたう機能性表示食品。中国の「藤茶(とうちゃ)」に含まれる成分「アンペロプシン」が体内で尿酸の合成抑制と排泄促進に働くという。日本初の「尿酸を下げる」機能性表示食品で、同社の「えんきん」や「内脂サポート」に続くヒットが期待される。また、焼津水産化学工業が研究開発した「アンセリン」に関する機能性表示食品の発売も決まった。尿酸値の上昇抑制作用が確認された成分で、飲料や食品メーカーからも関連商品が相次ぐ見込み。今年は「尿酸値関連市場」が一気に盛り上がりそうだ。
[日経トレンディ2019年6月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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