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MET「ニーベルングの指環」 ジョルダンの指揮抜群

日本で「ワルキューレ」のライブビューイング公開

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NIKKEI STYLE

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)が2019年3~5月、ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指環(リング)」4部作の連続上演を6年ぶりに行っている。「魔術師」の異名を持つカナダ人ロベール・ルパージュによるSFX(特撮)映画顔負けの演出、米国人ドラマティック・ソプラノのクリスティーン・ガーキーをはじめとする豪華キャストなど話題満載の舞台をけん引し、圧倒的称賛を浴びているのが指揮者のフィリップ・ジョルダンだ。

日本でも第1日「ワルキューレ」の「METライブビューイング」が松竹の配給で、5月10日に公開された(16日まで)。

11年ぶりのMET登場

ジョルダンは1974年、スイスのチューリヒ生まれ。父のアルミン・ジョルダン(1932~2006年)もワーグナーを得意とした指揮者だったため、フィリップは20歳から「リング」の上演にかかわった。METの「リング」では1993年の上演に観客の立場で接して強い印象を受け、26年後に指揮者として、ピットに戻ってきた。

ルパージュ版「リング」は2010年から順次初演。前音楽監督のジェイムズ・レヴァインが長年の演出を取り下げ、21世紀のMETにふさわしい新演出の制作に踏み切った。

本来ならカナダ人のヤニック・ネゼ=セガンが振るところが、レヴァインの性的スキャンダルに伴う解任で音楽監督への就任が繰り上がり、「リング」全曲を振る準備が整わなくなった。そこで、パリ・オペラ座音楽監督として2010~13年の「リング」全曲上演で絶賛を浴びたジョルダンに白羽の矢が立った。2020年にウィーン国立歌劇場音楽監督に就く直前のタイミングをとらえたもので、11年ぶりのMET登場となった。

筆者は2019年4月27日、第3日「神々の黄昏(たそがれ)」のシーズン初日を観たが、ニューヨークの観客はすでに序夜「ラインの黄金」、第1日「ワルキューレ」、第2日「ジークフリート」でジョルダンの卓越した指揮ぶりを体験しているので全幅の信頼を寄せ、最初の音を振り下ろす前から、「ブラヴォー」の歓声の嵐に包まれた。

メトロポリタン歌劇場管弦楽団はオペラハウスのオーケストラとして、世界最高の水準を備えている。滅多にピットに立ちたがらなかった孤高の巨匠、カルロス・クライバー(1930~2004年)すら「素晴らしいアンサンブルだ」と、絶賛を惜しまなかった。ジョルダンも「お互いを理解できるようになるまで、それほど長い時間は必要ありませんでした」といい、冒頭から拍を刻む右手(指揮棒は持っている)の動きを最小限に抑え、左手を大きく使って音楽のニュアンスを克明に伝えていく。

「音楽の友」誌2019年5月号に載ったジョルダンのインタビューでは小林伸太郎氏の質問に答え、ワーグナー指揮の極意をこう語っている。

「若い指揮者は音楽を小さなユニットに分けてコントロールしようとする傾向にありますが、そうするにはワーグナーは長すぎます。より大きなユニットで全体の流れを捉える必要があります。若い指揮者はまた、スローなテンポはさらにスローに、速いテンポはさらに速くして大きなコントラストを得ようとしがちですが、特にワーグナーではラインを理解するために、音楽の流れが必要です。すべての音とコンテンツを理解するためにはテンポが速すぎてもいけません」

自然な呼吸に徹する

その言葉通り、ごく自然な呼吸に徹し、おそらくドイツのどのオーケストラよりも輝かしく精妙にワーグナーを再現できるMET管の機能と音色美を最大限に引き出しながら大きな流れをつくり、劇のクライマックスに導いていく。ルパージュ演出は大がかりで抽象的なハイテク装置と映像を組み合わせたビジュアルの割に、人物の動きや性格描写は控えめなので音楽が前面に出てくる。うっかりすると、ジョルダンとオーケストラが紡ぎ出す極上の響きだけで「満足」の域に達してしまいがちだが、そこはMETの「リング」、歌手にも世界ランクの強豪をそろえ、管弦楽と見事に対峙させながら、ハーモニーに溶け込ませる。

中でもガーキーは今回、METでは初めてのブリュンヒルデを歌う注目株だった。大柄で目力のある容姿、たっぷりとした低音の支えの上にクリーミーな美声が広がり、高音の張り出しにも威力がある。ドイツ語の発音も確かで、しみじみとした語りかけと劇的迫力を兼ね備える。「神々の黄昏」だけでなく「リング」全体の大詰めである「ブリュンヒルデの自己犠牲」の場面でも十分な余力をみせて歌いきり、大喝采を浴びた。

◇  ◇  ◇

「ワルキューレ」ではもう1人のドラマティック・ソプラノ、ジークリンデ役のオランダ人エヴァ=マリア・ウェストブルックが高い評価を得ている。2001~05年、クラウス・ツェーラインがインテンダンント(総裁)だった時代の独バーデン=ヴュルテンベルク州立シュトゥットガルト歌劇場の専属歌手として演技力を磨き、頭角を現した。

現在はフリーでロンドン・コヴェントガーデンのロイヤルオペラを中心に活躍し、METには2011年のルパージュ演出「ワルキューレ」のジークリンデ役でデビュー。日本にもNHK交響楽団の定期演奏会で「エレクトラ」(シャルル・デュトワ指揮、クリソテミス役=2003年)、「ワルキューレ」第1幕(エド・デ・ワールト指揮、ジークリンデ役=2012年)と2度の演奏会形式上演に登場、多くのファンを獲得した。そのウェストブルックに2019年4月23日、METプレスルームでの単独インタビューが実現した。

――長いキャリアを通じて輝かしく、力強い声を保ってきた秘訣は何ですか?

「ジークリンデとか、もう何回歌ったかはわかりません。つねに新人のつもりで取り組み『いつか完璧に歌ってみせよう』と思いつつ、決して満足はしません。アスリートのようなものですが、必ずリラックスの時間をつくります。ジークリンデは『西部の娘』(プッチーニ)のミニー、『ムツェンスクのマクベス夫人』(ショスタコーヴィチ)のカテリーナ・イズマイロヴァなどと並び、私にとって特別な役です。旅のようなもので、次第にその人物の世界に入り込み、"中毒症状"(アディクション)に至ります。舞台に立ち、偉大なプロダクション、素晴らしい指揮者や共演者に囲まれるうち、私は天国へと飛んでいけるのです。ただし歌い終えれば、自分の体にたえず問いかけ、一歩下がったところでの充電を欠かしません」

――ワーグナーを歌う際に重要なことは?

「言語と音楽をいかに一体にとらえ、色を出し、客席に伝えるかです。最近では演出家や評論家、さらには観客までもが台本の発音を極端に重視しますが、それぞれのキャラクターの感情表現は言葉と音楽が溶け合ったサウンドによって伝わるものですから、言葉だけ際立っていても、完全とはいえません。特にMETのように規模の大きい劇場では『語り』だけだと不十分、絶対にサウンドが必要です。ワーグナーはベルカントの代表的作曲家、ベッリーニのオペラを愛していました。美しい声の響きを究めたベッリーニの上演で、言葉だけが突出していたら、どうなりますか? ワーグナーも同じです」

――METで歌う意義、指揮者ジョルダンへの評価。

「ヨーロッパの劇場では時として、ひどいチームに出くわすこともありますが、METはつねに驚くほど完璧な劇場です。素晴らしいオーケストラと指揮者、理想のスタッフとともに、偉大な芸術としてのオペラを共同で再現する雰囲気に満ちあふれています。歌の重要性を一貫して守るのも、美点です。私のデビューに当たった『ワルキューレ』の指揮者、ファビオ・ルイージさんも素晴らしいアーティストでした。フィリップ・ジョルダンさんとは今回が2度目の共演になります。エネルギーにあふれ、たくさんのアイデアを持っている。本当の意味での共同作業が可能な、素晴らしいマエストロです」

――ありがとうございました。最後に日本のファンへ一言、お願いします。

「すべてに美しく、おいしい国です。あのファンタスティックな寿司、しゃぶしゃぶと再び出合うためにもぜひ、私をまた日本に呼んでください!」

(音楽ジャーナリスト 池田卓夫)

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