犬はてんかん発作をかぎ分ける 患者守る手掛かりに
イヌはその驚異的な嗅覚によって、人間の技術では不可能なことを数多くやってのける。薬物、爆発物、がんなどの病気までかぎ当てられることが知られているが、今回、研究によって、人間のてんかん発作が起こる前に、感じ取ることができる能力があることがわかった。
これまでも、イヌがてんかん発作の兆候をかぎとることは知られていたが科学的な根拠はなかった。2019年3月28日付けの学術誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表された研究によれば、人はてんかん発作が起こっているときに特有のにおいを出しており、イヌはそれを認識できるというのだ。
「今後の実験や訓練方法によって、イヌがてんかんの発作にうまく対処したり、発作が現れる前に気付けるようになる可能性が出てきました」と、論文の筆頭著者で、フランス、レンヌ大学の博士課程に在籍するアメリ・カタラ氏は話している。
著者たちは、タイプが異なるてんかん患者5人から、発作が起きているときや、休息、運動などさまざまな活動をしているときの汗を採取した。
次いで、汗のサンプルを缶に入れ、てんかん発作中のサンプルがどれに入っているか、5匹のイヌに探させた。その結果、訓練によってかぎ分けられることが分かった。
実際の実験は次のように行った。発作の最中に取られた汗のにおいを見つけたら、そのまま鼻を入れておくと、遠隔操作式の機械でごほうびのエサがもらえるように犬をあらかじめ訓練した。次に、同じ人の汗が入った7つの缶のうち、1つだけに発作中の汗をランダムに入れて実験を行うと、犬たちはてんかん発作のにおいを確かにかぎ分けた。
誤解のないよう記しておくと、研究で使われたサンプルは発作の前ではなく最中に取られたもので、この化学物質が何なのか、どの時点で出るのかは分かっていない。
「このような研究は重要です。イヌが発作に気付く能力が本当にあるのか、信頼できる科学的根拠になるからです」。米フロリダ国際大学教授で化学が専門のケネス・ファートン氏はこう話す。ファートン氏は今回の論文には関わっていないが、イヌの嗅覚による探知能力を研究している。
ファートン氏は、さらに先を目指した研究を行っている。自身の研究で、発作が起こる15~45分前に察知できるイヌがかなりの数いることが分かったという。だとすれば、患者は薬を飲んで発作を防いだり、あるいは軽くしたりできるかもしれない。
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック 2019年4月1日付記事を再構成]
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