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戦闘を学ぶ子供たち ウクライナ、紛争地域の現実

日経ナショナル ジオグラフィック社

2019/5/15

ナショナルジオグラフィック日本版

ウクライナ、キエフの郊外で開催されたサマーキャンプLIDERで、ガスマスクの付け方を教わるエレーナ・シェベルちゃん(10歳)(PHOTOGRAPH BY DIEGO IBARRA SÁNCHEZ)

ロシア政府が支援する分離独立派とウクライナ支持派による戦闘が続くウクライナ東部では、ナショナリズムの感情が増幅している。このことが、教育と学生たちにもたらす混乱は、私たちの想像以上かもしれない。写真家のディエゴ・イバラ・サンチェス氏が、紛争の前線地域で戦闘を学ぶ子供たちにカメラを向けた。

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紛争で引き裂かれた国の子供たちは、まともな教育を受けることができない。学校は爆撃によって破壊されたり、軍事拠点に変えられてしまったりする。地雷を踏んだり、交戦に巻き込まれたりするのを恐れて、生徒も教師も家にこもっている。安全地帯であるはずの学び舎が、標的にされてしまうのだ。

LIDERキャンプに参加したエレーナ・シェベルちゃん(10歳)のノート。「LIDERキャンプで好きなのはプールと射撃場。水泳と射撃が好きだからです。家族全員が銃を撃ちます。お母さん、お父さん、おばあちゃん、みんなです。母国を守ることは大切だと思います」(PHOTOGRAPH BY DIEGO IBARRA SÁNCHEZ)

写真家のディエゴ・イバラ・サンチェス氏は10年近く前から、紛争がどのように学問を妨げ、学問に介入するかを見てきた。「本来、教育は前進するための手段、国を建設あるいは再建するための手段です。学術機関がその役割を果たすことができなかったら、本来の目的はどうなるのでしょう?」

パキスタンやシリア、イラク、レバノン、コロンビアでこの問いを追求した後、イバラ・サンチェス氏はウクライナ東部のドンバス地域に目を向けた。ドンバス地域では2014年から、ロシア政府が支援する分離独立派とウクライナ支持派による戦闘が続いており、ナショナリズムの感情が増幅している。そしてそのことが、教育と学生たちに大きな混乱をもたらしている。

6~17歳を対象としたサマーキャンプLIDERの最年少グループに付き添うボランティアのインストラクター。キャンプに参加した子供たちは毎日、厳格な規律に従うことや武器の使い方を教わっていた(PHOTOGRAPH BY DIEGO IBARRA SÁNCHEZ)

何カ月も、何年も授業が行われない状況では、学習はどんどん遅れていき、将来を脅かされることになると、イバラ・サンチェス氏は話す。たとえ紛争地帯で学校に通うことができても、実権を握る勢力の意向を反映するため、カリキュラムが変更されている場合がある。

イバラ・サンチェス氏はドンバス地域で、若者に愛国心を教える組織を写真に記録した。これらの組織は戦闘で生き残る方法や武器の使い方だけでなく、「『相手』を憎む方法、隣人から身を守る方法、国のために必要であれば殺す方法」まで訓練している。

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