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身軽で他人の邪魔になりにくい 最新薄型リュック5選

納富廉邦のステーショナリー進化形

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NIKKEI STYLE

通勤電車などで見かけても違和感がなくなったビジネスリュック。その中の新しいトレンドとして、長年カバンを取材しつづけてきた納富廉邦氏が注目しているのが「薄い」リュックだという。スーツとの相性が良く、他人の邪魔になりにくい薄型リュックを紹介する。

◇  ◇  ◇

「ビジネスリュック」という呼称がすっかり定着するくらい、現在、スーツ姿にリュック(バックパック)を背負って通勤する姿は普通になっている。この状況を生んだ大きな要因は、ノートパソコンの普及だ。まだ「3kg台でも軽い」とか言われていた時代には、ノートパソコンを持ち歩くにはリュックが必須だった。

ただ、いきなりスーツにリュックは抵抗がある人もまだ多く、そこから日本ならではのスタイルとも言われる、リュックにもショルダーバッグにもブリーフケースにもなる「3wayバッグ」が流行。その人気は、今も継続している。

その一方で、ここ最近注目され、今後のビジネスバッグの主流になりそうなのが、スーツに合わせられる薄マチのビジネスリュックだ。このジャンル、まだそれほど製品数が出ているわけではないが、今後、どんどん充実していくと思われる。

スーツに似合う革製薄マチ

その始まりとなった製品の一つが、トライオンの「SA226」だ。革製の薄マチリュックで、手提げ用のハンドルを持つとまるでA4縦型のブリーフケースのようにも見えるスタイリッシュなデザインが特徴。このバッグのような、薄マチのリュックがあまりなかった理由は簡単で、リュックは基本、重い荷物を持つためのカバンだったからだ。だから大容量のものが主流だった。普通のブリーフケースくらいしか荷物が入らないリュックに需要があるとは考えられていなかったのだ。

しかし、この「SA226」は売れた。筆者もものすごく愛用している。その理由も簡単。大荷物でなくてもノートパソコンが入っていなくても、仕事道具を入れたカバンは決して軽くはないからだ。さらに背負うことで両手が空く、身体が真っすぐになるなど、運用メリットもとても多かった。特にスマートフォンを使うのに両手が空くのは便利だし、雨天などのときも助かる。

スリムで革製のリュックは、従来のビジネスリュックと比べて、スーツとの相性も良かった。これまでのリュックはファブリック製の大きなものが多かったため、背負ったままだと失礼だとされるシーンもあって3Wayバッグが生まれたのだけど、革製薄マチなら、そのまま手で提げるだけでも失礼な感じにならないという利点もあった。「薄マチだから他人の邪魔になりにくい」という点も人気の理由だろう。

ブリーフケースの外観を持つリュックも

「SA226」のヒットを受けて、トライオンはよりブリーフケース的なルックスを持つ、スクエアタイプの革製薄マチリュック「SA229」を発売した。

このバッグを背負って、2月に1週間ほどドイツの巨大な消費財見本市「アンビエンテ2019」の取材に行ったのだが、そこでは、ドイツやイタリアなどのカバンメーカーのブースで、「ちょっとそのカバンを見せてくれ」と、こっちが取材されてしまうほどの注目を集めた。その直後に日本で開催された「ギフト・ショー春2019」でも同じで、メーカーやバイヤーの目をひいていた。こういった専門家に注目されるということは、まだジャンルとして当たり前ではないが、カバンの一つの潮流になる可能性を十分に秘めているということだろう。

ちなみに巨大な見本市の取材でもらった膨大な量のカタログ類は、問題なく全てカバンに入ってしまった。薄マチとはいえ、容量は十分なのだ。

ファブリック製ながらビジネス向き

最近注目されているオーストラリアのデザインブランド、ベルロイからも薄マチリュックが複数発売されている。

その中の一つである「Duo Totepack」は、ノートパソコンに対応しながら、マチは60mmと薄く、スマートに背負うことができる。しかも、マチ幅を最大12cmまで大きくすることもできるため、荷物が増えたときにも安心だ。はっ水加工、防水ファスナーなど雨対策も万全。リュック用のストラップはカバン内部に収納することも可能と、ファブリック製ながら、人前で失礼にならない配慮もなされているわけだ。

スーツに似合うデザイン

イタリアのNAVA Designとデザイナーの深沢直人氏のコラボモデル「NAVA milano Backpack」も、スーツに合う、薄マチリュックの系列にあるモデルだと思う。

ビジネスリュックを考えた場合、アウトドア的なリュックが似合わないことは当然で、ならばブリーフケースのようなリュックが良いという発想に行き着くのは、自然な流れだろう。このバッグも、革製ブリーフケースをそのまま背負ったようなデザインになっている。しかも内装もほぼブリーフケースそのままという徹底ぶりだ。同じコンセプトのトライオンが薄マチに徹底したように、NAVA Designはブリーフケース的であることに徹底していて、その違いがデザインにそのまま出ているのが面白い。

国産薄マチリュックは実用性の固まり

国産バッグの世界でビジネスリュックというジャンルを切り開いてきたメーカー、ビジービーバーの「Expandable Organizer」も、薄マチリュックの流れにある製品だと思う。ファブリック製の軽くて丈夫なブリーフケースを、そのままリュックに仕立てて、しかも、マチ幅を変えられる設計は、「実用性の固まり」といってもよいほど。シンプルなデザインで使う人を選ばない。

ざっと見ただけでも、これだけ魅力的なアイテムがそろう薄マチリュックは、今後、間違いなくビジネスバッグの潮流の一つになっていく。同様に、新しい時代のビジネスバッグへと発展していく可能性を感じているのが薄マチのトートバッグだ。

ベルロイからは、薄マチリュック的な発想で作られた、薄マチの革製トートバッグ「Melbourne Tote - Designers Edition」が出ている。これも、従来のブリーフケースの持ち歩きにくさ、扱いにくさを解決するアイデアを製品化したものだろう。このトートと薄マチリュックは、同じ方向を向いているように思うのだ。

納富廉邦
佐賀県出身、フリーライター。IT、伝統芸能、文房具、筆記具、革小物などの装身具、かばんや家電、飲食など、娯楽とモノを中心に執筆。「大人カバンの中身講座」「やかんの本」など著書多数。

(写真 渡辺慎一郎=スタジオキャスパー)

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