キズナアイ・響木アオ… VTuberが歌手・俳優へ進出
登録者240万人超えの"元祖"キズナアイ、ソニーからメジャーデビューした輝夜月(かぐやるな)、連続ドラマに俳優として出演する響木アオ――。2Dや3Dのアバターを使って動画投稿を行う人たちのことを指す"バーチャルなYouTuber"こと「VTuber」。2016年12月にキズナアイが登場、ブームを巻き起こし、18年は「ネット流行語大賞」に選ばれるなど大躍進となった彼らが、今年さらにエンタ界で躍進しそうだ。
今や彼らのベースとなっているのが「アーティスト活動」だ。音源に力を入れているのはキズナアイで、18年10月末から9週連続で楽曲をリリース。TeddyLoidなどの人気若手プロデューサーともコラボした。一方、ライブに力を入れるVTuberも。輝夜月は、同年8月にVR空間である「cluster」上で史上初のライブを開催。チケットは即完売し、ライブビューイングまで行った。18年エイベックスから、歌手と作詞作曲家のWデビューを果たした響木アオは、クラウドファンディングで約600万円を集め、全国6カ所のライブツアーを開催。ラップを得意とする2人組ユニットKMNZ(ケモノズ)は、18年12月にm‐flo主催のイベントで、パフォーマンスを披露している。
アパレル業界参入や俳優も
さらに最近では、実在のタレントと遜色ない活躍を見せ始めているから驚きだ。テレビでレギュラーMCを務めたのは、トークに定評があるKMNZ。18年7月から12月にかけて、テレビ番組『VIRTUAL BUZZ TALK!』(TOKYO MX)でMCを担当。ファッション業界へと進出した輝夜月は、VTuber初のアパレルブランド「Beyond The Moon」を立ち上げている。
そして4月に俳優デビューしたのが響木アオ。史上初のVTuberドラマ『四月一日さん家の』(テレ東系)に3姉妹の三女役で出演する。響木アオが所属するハローの取締役である赤津慧氏は、「VTuberは本来アニメと相性がいいのですが、あえてドラマに俳優として出演することで、彼女のアドリブも含めた演技が見どころとなっています」と語る。
彼らがこれほどの人気を集める理由、そして初音ミクなどのボーカロイドのキャラクターとの違いについて赤津氏は、「生放送やライブなどの日々の活動を通して、VTuberはファンの方と双方向のコミュニケーションを取ることができます。またそれぞれ個性豊かなのでファン層も幅広い。アイドルを目指して活動する響木アオは、アイドル好きの人たちの多くがファンとなったり、衣装がカラフルな輝夜月は、原宿系の10代女子からも人気です」と言う。
18年は大手IT企業もVTuber領域に参入。計100億円の投資を発表したグリーは、VTuber専用のライブ配信プラットフォームをリリース。サイバーエージェントはVTuberのプロダクションを作るなど、エンタ業界全体で今後も盛り上がりを見せていきそうだ。
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2019年4月号の記事を再構成]
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