――なぜそのように思うのですか。
「昨年夏にバルセロナとロンドンのホテルで10週間ほどインターンとして働き、実際に2日間ほど部屋の清掃を体験したからです。トイレ、バスルームの掃除、床の掃除機がけ、ホコリ払い、ミニバーの確認など、ハウスキーピングの仕事は覚えることが多く、複雑な業務の組み合わせであることを知りました。また宿泊客としては気づかないようなところまでチェックしなくてはなりません。特にやっかいなのは高いところに積もっているほこりです。私は背が高いのですが、それでもテレビスクリーンの上とか、周り縁とか、部屋中を走り回りながら清掃しました」
「部屋の清掃の場合、『何分以内にしあげる』とは決められていませんでしたが、『できるだけ早くやる』というのがルールでした。到着した宿泊客はできるだけ早く部屋に入りたいでしょうし、ビーチやプールから戻ってきたらすぐにシャワーを浴びたいでしょう。つまり時間の制限がある中で、全身を使って複雑な業務をしていかなければならない。これは技術も体力も必要な難しい仕事であると痛感しました」
「清掃スタッフだけではありません。インターンシップの期間中、フロントデスク、荷物運搬、厨房、などの仕事をひととおり体験しましたが、現場の人たちはその道のプロであることを知りました。時には足手まといになることもありましたが、嫌がることなく、つきっきりで指導してくれたのです。多くのクラスメートは金融、コンサルティング、IT業界でインターンをしていましたが、ホテルの現場を選んで、本当によかったと思います」
優れた企業文化の重み学ぶ
――まもなくハーバードを卒業されますが、この2年間で最も学んだことは何ですか。
「ハーバードビジネススクールに入学する前は、経営コンサルティング会社で働いていたこともあり、データや数字を分析することに価値を見いだしていました。もちろんそれも大事ですが、今は、『経営を支えているのは人なのだ』ということを実感しています。MBA(経営学修士)の授業では、経営者にとっていかに優れた企業文化をつくることが大切か、を学びました。逆にいえば、卓越した企業文化があれば、数字はついてくる。どのようにしたら現場の人たちに仕事の価値を実感してもらえるか。誇りをもって仕事をしてもらえるか。それを考えるのがリーダーの役目であると。卒業後は再び、経営コンサルティング会社で働く予定ですが、ハーバードで学んだことを忘れずに、どんなときも人を大切にするリーダーでありたいと思っています」
(2019年3月12日 ハーバードビジネススクールにてインタビュー)
※本記事に登場する学生のコメントは、個人の意見を反映したものであり、ハーバード大学及びハーバード大学経営大学院の見解を示すものではありません。
