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抹茶ブームのシドニー 名店元料理長の日本人仕掛ける

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NIKKEI STYLE

「世界一の朝食」としてパンケーキなどが有名なオーストラリアの大人気レストラン「Bills」(ビルズ)。行列のできる店として日本でも知られているが、そのシドニー総本店の料理長が日本人だったということをご存じだろうか。

高山健太郎さん(通称、ケニーさん)は、2012年にBillsから独立し、現在、カフェレストランをシドニー中心部で経営している。東京で言えば表参道のようなオシャレな飲食店が林立するサリーヒルズというエリアで、1店目の「Cafe oratnek」(カフェ オラトネック)と、その近所に2店目の「cafekentaro」(カフェケンタロウ)を展開。彼のジャパニーズ・フュージョン料理は人気を博し、中でも抹茶スイーツは瞬く間に話題を呼び、シドニーで抹茶ブームの火付け役としても知られている。

緑美しい街路樹に囲まれている「cafekentaro」を訪問してみた。木漏れ日が店内に差し込み、窓はすべて開放されているので店内にもそよ風が吹いていて、とても気持ちがいい。そしてキッチンからケニーさんがとびきりの笑顔で出迎えてくれた。

「cafekentaro」の抹茶メニューは常時約4種類(ちなみに「Cafe oratnek」でも5種の抹茶メニューを用意)。うま味のある静岡産のこだわり抹茶を使用した「抹茶のシュークリーム」(冬季限定)は、ボリュームはたっぷりだが甘さ控えめで、ほろ苦い。レギュラーメニュー「抹茶のフレンチトースト」は、抹茶の粉末を卵液に加えて24時間おいてよくなじませてからパンを浸し、オーブンで焼いたふわふわの緑色トースト。春夏は抹茶ムースを、秋冬には抹茶ガナッシュ(=生チョコレート/冒頭の写真を参照)が添えられ、季節に応じて一番おいしい食べ方を提案しているので客が飽きない。

世界的な抹茶トレンドの中、シドニーでは、抹茶ドリンクや抹茶ケーキを販売するカフェなどが多く見かけられるようになっている。ケニーさんの抹茶スイーツは「甘すぎない、苦みを楽しむ大人味」として差異化に成功している。

その魅力にいち早く気づいたのは、意外にも現地日本人ではなかった。「シドニー在住の中華系の人々の間で最初に話題になって、あっという間にシドニー中に口コミで広がったという感じです。中華系の人々はシドニーでも年々、人口が増えてきているようですが、日本文化や食トレンドなどに敏感で、中華圏以外の海外の都市でもトレンドを動かしているということは珍しくないようです」とケニーさん。

さらに特筆すべきは、シュークリームやミルフィーユの抹茶クリームは、オーダーが入ってからクリームを絞る点。できたてのフレッシュな状態で提供されるので、シュークリームの皮がいつでもサクサクとしており、クリームは冷たくてやわらかく、とろける触感を楽しむことができる。

「ドリンク用の氷やアイスクリーム以外、冷凍庫は使いません。電子レンジも置いていません。このようなスタイルは、Bills時代に学んだことです」とケニーさん。

ケニーさんはいつも以下のことにこだわっている。これらは「cafekentaro」のコンセプトそのもので、Bills時代に会得した気づきだという。

fresh everyday(毎日新鮮)

Simple(シンプルな調理と盛り付け) 

Classic(昔からある料理を飾らずそのまま)

Natural(自然のまま)

Seasonal(季節ごとに旬の食材を使う)

Billsでは季節のおいしさを引き出すために旬の食材だけを使用し、極力手を加えずに仕上げるのが基本だった。例えば、「朝食のシンボルであるスクランブルエッグは、材料は卵と生クリームと塩だけ。でも卵はオーガニック、塩はピンクソルト、生クリームはフレッシュなもののみを使用していました。横に添えるトーストはサワードウ(長時間発酵させて作る、乳酸菌が豊富なサワーブレッド)、バターは発酵バター……。とにかくすべての材料に徹底的にこだわっていました」とケニーさん。

これらBills時代からの飲食哲学を今でも踏襲しているので、ケニーさんは自ら毎朝マーケットへ出向き、今が旬のおいしい食材を厳選し、その日のうちに使い切る。だから料理のための冷凍庫は不要。朝に仕込み、その日の食材を使いきったらお店はクローズとなる。すべて手作りで、毎日営業終わりには冷蔵庫や焼き菓子ケースは空になる。

2店舗とも看板メニューはオムライスとカツサンド。生クリームをたっぷり使ったとろとろのオムライスにかけるデミグラスソースには、隠し味に八丁味噌を使用。酸味とコクが増し、日本らしい味わいだ。一方、断面が3センチほどもある大ぶりのカツサンドは、キャベツを毎朝細かく薄切りにし、水に何度かさらしたものを使用。カツはオーダーが入ってから日本産の生パン粉をまぶして、ほどよい肉質になるように温度と時間に注意しながら丁寧にジュージーに揚げている。

「シドニーにはすでにすしや天ぷらを作る腕のいい和食の職人さんがたくさんいるので、自分はオムライスやカツサンドといった『日本の洋食』で勝負に出たいと思っています」とケニーさん。

もともとケニーさんは料理好きで、小学校の頃から自宅で頻繁に料理をしていた。いつか自分の飲食店をやりたいと思い、日本の大学を卒業後、ワーキングホリデーでオーストラリアのケアンズに渡った。「当時は初海外・初飛行機・貯金ゼロ・英語力ゼロの状態でしたが、思い切って海外に出ました」と笑いながら振り返るケニーさん。海に近く、気候も安定して過ごしやすいケアンズが魅力的だったと話し出す。

ケアンズに渡ったケニーさんは、飲食店のスタッフ全員がオーストラリア人の中、洗い場からスタート。毎日帰宅しては必死で英語や料理のことを独学で勉強した。やがて少しずつ仕込みもやらせてもらえるようになり、2年後にはその店で副料理長にまでなった。その後、別の飲食店で料理長として5年働き、腕を磨いていった。

「その間に結婚もし、自分のレストランを持ちたいという昔からの想いが強まり、30歳で貯金が目標額に達したのを機に独立を決意しました」とケニーさん。しかし、それは一種の賭けでもあったと話す。

「どうせ挑戦するなら大きく成功したいと思いました。失敗するにしても、どうせなら豪快に転びたいと思いました」(ケニーさん)。度胸のあるケニーさんは、長年の実績があるケアンズではなく、オーストラリア最大の都市であるシドニーに飛び込むことに決めた。

当時、Billsは日本にも1店舗あって知っていたので、ダメ元で履歴書を持ち込んだという。すると驚くことに、さっそく次の日にトライアルが組まれ、2時間のトライアルの後には即採用が決まった。そして入社から2週間後には、朝昼営業の責任者に選ばれ、さらに2カ月後には総本店への異動。さらにその1カ月後には、総本店料理長としてオファーをもらうことになったのだ。実力主義のシドニーでも異例の大抜てきとなった。

「ケアンズではシェフの技術や知識、引き出しがいかに多いかが大切で、盛り付けにインパクトを加えたり、料理の中身を濃くしたりしていくことが求められました。しかし、Billsで学んだことは真逆で、私の料理に対する考え方を根本から変えるものでした」とケニーさん。それが「いかに手を加えないか」を大切にした「引きの美学」だったと語る。

シドニーではここ5年くらい、インスタグラムの影響で見栄えのいいもの、カラフルなものが注目を集めている。ケニーさんの抹茶スイーツやカツサンドは、その見栄えの良さも人気の要因になっているのだろう。

「シドニーの人は新しいメニューを試すことに抵抗が少ないため、以前、期間限定で提供した納豆パスタやめんたいこパスタも人気でした。めんたいこは魚卵なので、普通、欧米人などは好きではないと思いますが……」とケニーさん。奇抜なアイデアでもあえて挑戦しているところだという。

これまでシドニーで2店舗を順調に開業できたのは、たくさんの人にチャンスを与えられてきたからだとケニーさんは考えている。「これからもオーストラリアと日本の架け橋になるようなジャパニーズ・フュージョン料理で、日本文化を発信していきたいです。昔の自分のように夢とやる気を持った若者たちの力になることで、今まで私がもらった恩を今度は人に与えていければ(=pay it forward)と思います」(ケニーさん)。

取材中、多くのご近所さんが「ケニーさん、元気?」と声をかけて行くのがとても印象的だった。地元の人々に愛されている店は、子連れやご夫婦など様々な人々を笑顔にしていた。

*1豪ドル78円で計算して記載

(GreenCreate)

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