ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は2~3カ月に一度訪れる準定点観測書店の青山ブックセンター本店だ。強い売れ筋が上位に並ぶ中、勢いのある新刊も相次いでビジネス書売り場は活況が続いている。そんな中、書店員が注目するのは、デジタルが完全に浸透した世界のイメージを最先端の海外事例から描き出し、日本のビジネス界がどのような企業変革に取り組むべきかを説いた本だった。
もはやオンラインが主でオフラインは従
その本は藤井保文・尾原和啓『アフターデジタル』(日経BP社)。アフターデジタルとは「オフラインがデジタル世界に包含される」世界を意味する。デジタル先進国や先進地域では、もはやオンラインが主でオフラインが従という世界が広がっており、社会システムそのものがアップデートされているという。オフラインの世界が中心で、付加価値的にデジタル施策を考えるというような発想では、ビジネスの拡大に大きな後れを取ってしまうと著者たちはいうのだ。
著者の一人、藤井氏はウェブコンサルティングを手がけるビービットの東アジア営業責任者として中国・上海に暮らしている。様々な日本企業に対して中国デジタル環境視察合宿を行ってきたが、日本のビジネスパーソンはアフターデジタルの世界観をイメージできていないと痛感したと話す。その危機感が本書執筆の原動力だ。共著者の尾原氏はグーグルやリクルート、楽天などでデジタル事業の立ち上げに関わってきた。藤井氏の中国での経験と尾原氏のグローバルな知見を組み合わせて、本書はアフターデジタルの世界観、そこでのビジネスを描き出す。
デジタル先進国中国の世界観とは
デジタル先進国としての中国の事例がとても刺激的だ。モバイル決済、シェアリング自転車といったサービスが行動データとしてつながり、クレジットサービスへと広がり、それが市民の行動を変え、他人を信用しない不信社会だった中国がおもてなし社会へと変容しつつある。そんな姿が活写される。