天海祐希さん 自分に対する悔しい思いで成長を続ける
令和の新時代を迎えましたが、ドラマの世界では、平成から続く刑事ドラマシリーズがひき続き人気です。2019年4月期も天海祐希さん主演の『緊急取調室』(テレビ朝日系)が好調で、高い視聴率を誇っています。この物語は、天海さんが演じるたたき上げの取調官・真壁有希子が、「警視庁捜査一課 緊急事案対応取調班(通称・キントリ)」のメンバーと共に、凶悪犯と一進一退の心理戦を繰り広げる刑事ドラマシリーズ。現在はその第3弾が放送中です。
主人公の真壁は、犯罪を強く憎んでおり、被疑者を「丸裸にする」を信条としています。以前は一匹おおかみタイプだったものの、キントリチームに連帯感を覚え、自身のチームにおける役割を大切に感じるようになるなか、数々の難事件を解決していきます。
このチームワークを大切にする万能な取調官のキャラクターが、天海さん自身のイメージともぴったりはまっています。
「理想の上司」調査で常に上位
天海さんと言えば、「理想の上司ランキング」で常に上位にランクインする代表格。明治安田生命が毎年実施している、新入社員を対象にした「理想の女性上司」アンケート調査では10年から7年連続総合1位を記録、18年も2位をキープしています。
天海さんのすごいところは、上司というくくりでのランキングだけでなく、タレントパワーランキングを始め、数々の『好きな女優』という現役力をテーマにした調査においても上位にランクインしているところです。
上司であっても、プレーヤーであっても、人気と実力を兼ね備えているところが天海さんの特徴であり、万能感の表れであると言えるのかもしれません。
そんな天海さんの万能感について、マツコ・デラックスさんは情報番組『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)のなかで、天海さんと一緒に若者の街・原宿を街歩きしながら、次のように述べていました。
「あんたさ、自分では『場違いだ 場違いだ』って言ってるけど、あんたが場違いな場所なんて、今、日本のどこにもないのよ」
確かに、若者であふれる原宿で、パンケーキを目の前にする天海さんの姿は美しく、原宿の風景にも溶け込んでいました。さらに、若者向けの雑貨店にて、派手でガーリーなバッグを手にしてポーズを決める天海さんに対しても、
「なんか、けちょんけちょんに言ってやりたいんだけど、あんたは何を持ってもどうにかおさまるのよね。さすがよねーやっぱり」と、感心していました。
マツコさんの発する言葉一つひとつに、天海さんが放っている万能感のすごさをたたえる意味が込められていたように感じます。
宝塚歌劇団では史上最速でトップスターに
現在、天海さんは51歳。ビジネスの世界で言えば管理職世代です。
85年に首席で宝塚音楽学校に入学し、宝塚歌劇団に入団後は、初舞台から6年半で月組トップスターに史上最速で就任というエリート中のエリート街道を歩んできました。
退団後は映画やTVドラマ、舞台において単独主演を務める日本を代表する女優の一人としてその地位を不動のものとしています。役者としてだけでなく、不定期放送されているトークバラエティー番組『天海祐希・石田ゆり子のスナックあけぼの橋』(フジテレビ系)ではMCを務めるなど、活躍は幅広く、その都度、天海さんらしさがにじみ出ており、ベテランとなった今でも、表現者としての魅力は増すばかりです。
そして、マツコさんが評した通り、どの場においても「場違いにはならない」万能感が常に漂っています。
この万能感というものは、ビジネスの世界において、部下や後輩たちが、上司に望むものの一つなのかもしれません。さらに天海さんには男性にもひけを取らないきっぷの良さ、姉御肌で面倒見の良さといったイメージもあります。
この人の下にいれば、思いっきりやれる、信じてついていける、間違いない、そんな万能感を持つ上司のもとであるならば、きっとチームの連帯感も強まることでしょう。
納得がいかないから次の仕事をやる
生まれついてのスターのような天海さんですが、仕事に関しては決して器用なほうではないようです。少しずつ壁を乗り越えてきているのです。
シネマトゥデイのインタビュー記事のなかでデビュー当時から変わらない志について次のように語っています。
「自分が納得のいく仕事ができなかったから、次のお仕事をすると思うんです。もし、できたと思ってしまったら、わたし最高!完璧!って思ってしまったなら、多分その次の仕事をしないと思います。
ただ、何をしたって後悔はするし、何をやったって悔しい思いをすると思うんですよ。1年後に見たら、別の方法もあったとか、時間がたてばたつほど必ず感じると思う。それは成長しているということで、人は悔しいから成長するんです。精いっぱいやったつもりなのに、去年よりも成長している自分が去年の自分を見たら悔しいですよね。次、そんな悔しい思いをしないように頑張るけれど、また悔しい思いをする。その繰り返しだから辞められないのだと思います」
昨年の現場よりも成果を出せるように、今の現場で精いっぱいの力を尽くす……今、目の前のことに真摯に挑み続ける姿こそが、マツコさんの言うところの「(天海さんには)場違いな場所なんてどこにもない」という言葉に含まれた万能感につながっているのだと思います。
天海さんのように強く美しくあり続けることは難しいのは重々承知していますが、天海さんの「昨年より今」という仕事に臨む心がけと、「場」に挑み続ける姿勢については、見習っていくこともできるのではないでしょうか。
令和新時代の幕開けと共に、前向きな心持ちで進んでいきたいものですね。
経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへの出演のほか、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。