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インバウンド最前線

会話型AIが観光案内 長崎・五島に訪日客呼び込め

2019/5/27 日本経済新聞 朝刊

五島市には世界遺産の構成資産、江上天主堂などあるが、インバウンド誘致につながっていない

長崎の離島が人工知能(AI)スタートアップと連携し、訪日外国人(インバウンド)を誘致する。長崎県五島市とAIコンサルティングのTEIT(ティート、東京・渋谷)はチャットボットと呼ばれるAIを使った自動会話アプリを通じて英語で観光案内する実証実験を始めた。五島市の観光客は増えているが、外国人が1%未満と少ないため、誘客を急ぐ。

ティートが開発したチャットボット「Hanna(ハナ)」を利用し、4月25日から試験サービスを始めた。外国人客がスマホなどで飲食店や観光地について知りたい要望を入力すると、チャットボットが自動で回答する。

現在地を入力すると目的地までの距離なども教えてくれる。ティートは五島の観光スポットや飲食店、宿泊施設などの情報を集約し、チャットボットが回答するためのデータベースを構築する。

まず英語で対応し、中国語や韓国語も順次対応する。釣りやシュノーケリングの案内や世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産である旧五輪教会堂や江上天主堂の巡り方なども対応する。

ティートはこれまで利用者に発信する情報はインターネットの公開情報だけ利用していた。今回は五島市と組み、地域情報を独自に集め、データベース化する。五島市も地元官民だけでは難しかった観光情報の多言語化をティートに委託することで、インバウンド対応業務を効率化できる。

五島市やティートなどは空港やフェリー乗り場の観光案内所で外国人にアプリのインストールや使い方を説明し、利用を促す。今回の実験でインバウンドを年1000人増やし、1人当たり観光消費額を5万円と、従来より1万4000円ほど高めることを目指す。

ティートは実験期間中はシステムを五島市に無料で提供する。本格運用段階で、利用状況に応じて飲食店や宿泊施設から手数料を受け取ることを検討する。

五島の観光情報の海外発信にも取り組む。観光地や交通手段、グルメなどを伝える記事や動画を作成し、交流サイト(SNS)を通じて拡散し、個人客を誘致する。独自のアクティビティー企画や島内サービスの翻訳支援も検討する。

五島市のインバウンド誘客は進んでいない。外国語を話せる観光ガイドも数人にとどまる。

五島市を2018年に訪れた観光客数は17年比12.5%増の24万人で過去最高だった。世界文化遺産の構成資産が2つあるなど追い風が吹く。

インバウンドも12.9%と伸びたが、全体の1%に満たない1668人にとどまった。

同じ長崎の離島である対馬市は韓国人だけで14%増の約41万人が訪れており、五島市は対策が十分とは言えない。離島は多言語化対応など人材や予算で限界があるが、期待がかかるのが解決策を持つスタートアップ企業との連携だ。

五島市はアジット(東京・港)と組み、観光客らが島内住民の自家用車をスマホアプリで呼べる配車サービスの実証実験を実施した。大量収穫が難しい海産物と県外の飲食店を仲介する投資会社、オクトフォースマネジメント(同)もある。交通や人口減などに悩む離島は課題解決型のビジネスモデルを持つスタートアップとの連携余地が大きいと言える。

(古宇田光敏)

[日本経済新聞朝刊2019年4月24日付]

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