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人類の系統樹に新種「ルソン原人」 フィリピンで発見

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ナショナルジオグラフィック日本版

人類の系統樹に、新たな枝が加わった。2019年4月10日、フィリピンの研究者が新種の原人を発見したと発表した。「ホモ・ルゾネンシス(Homo luzonensis、ルソン原人)」と命名された未知の小型人類は、少なくとも6万7000年前から5万年前には、現在のフィリピンのルソン島で暮らしていた。全部で7本の歯と6本の小さな骨がルソン原人と同定された。

これらの骨では不思議なことに、数百万年前の猿人(アウストラロピテクス)と、もっと進化した人類に見られる特徴が混在していた。この画期的な発見は、4月10日付けの学術誌「ネイチャー」に発表された。東南アジアの島で古人類の証拠が見つかるのは、過去15年間で3件目だ。

「長い間、フィリピンの島々は、多かれ少なかれ蚊帳の外でした」と論文の共著者でプロジェクト・リーダーを務めたアルマンド・ミハレス氏は話す。同氏は、フィリピン大学ディリマン校の考古学者で、ナショナル ジオグラフィックの支援も受けている。しかし、今回のルソン原人の発見で状況は変わった。そして、人類が原始的な種から現生人類に近い種へと直線的に進化した、とするやや時代遅れの説も覆りつつある。

「新発見に興奮しました」と、国立科学博物館の人類進化学者である海部陽介氏はメールで述べた。「この報告は、かつてアジアにいた原始的な人類の多様性が、従来の予想をはるかに超えるレベルのものであったことを物語っています」。なお、氏は今回の研究に関わっていない。

論文を査読した英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの古人類学者アイーダ・ゴメス=ロブレス氏は、新種と断言するのをためらっている。しかし、今回の珍しい化石を説明する仮説は、どれも等しく興味深いと付け加えた。

「今後数年以内になされる発見の中で、間違いなく最も重要なものの1つです」

アジアの過去をより深く掘る

数十年前まで、アジアの人類史は今よりはるかに単純なものだと考えられていた。100万年近く前に、ホモ・エレクトスなどの原人が現在のインドネシアの一部に移ってきたことはわかっていた。しかし、それ以上東の海には海流があり、船なしでは渡れないと考えられていた。

ルソン島は、大陸と陸続きになったことが一度もない。そのため、古代の人類がたどり着くのは特に難しかったはずだ。だからより深く、より古い地層まで掘ったところで実りは少ないと考古学者たちは考えてきた。実際、ミハレス氏が2003年に初めてカラオ洞窟を発掘した時に、2万5000年前の人類の証拠を見つけたものの、約1.2メートルより深くは掘らなかった。

「ほとんどの東南アジアの考古学者は、洞窟遺跡を2メートル掘っただけで発掘を止めていました」とミハレス氏は話す。

状況を一変させたのは、2004年、インドネシア、フローレス島に5万年前まで生息していた「ホビット」ことフローレス原人(Homo floresiensis)の発見だった。ミハレス氏はこれに刺激を受け、2007年にカラオ洞窟の再調査を行い、文字通り、より深く掘ったのである。

2003年に発掘を中止した深さから、研究チームはさらに粘土層を1.5メートル以上掘り進めた。化石は見つからなかったものの、さまざまな種類の岩片を含む角礫岩の層が現れた。この層からはるか昔に洞窟に流れ込んできた骨の断片が見つかった。じれったいことに、当初見つかったのは、シカやブタなど動物の骨だけだった。しかし注意深く調べると、他とは違う化石が1つあった。ほぼ完全な足の骨で、人のものに見えた。この骨を動物考古学および古生態学者のフィリップ・パイパー氏に送った。同氏は、今回の論文の共著者でもある。

「彼は電話をかけてきてこう言いました。『もしもし、人の骨だったよ』」とミハレス氏は話す。「『本当に? ビールで乾杯だ!』と私は答えました」

2010年、ミハレス氏の研究チームは、6万7000年前の化石をとりあえず小型のホモ・サピエンス(Homo sapiens)として発表した。しかし同氏は、実際には新種で、フローレス原人のルソン島版ではないかと考えていた。そして、真相を確かめるには、もっと多くの化石が必要だった。

見たことのない組み合わせ

2011年と2015年に再び行ったカラオ洞窟の発掘調査で、幸運にも、足の指の骨を2本、歯を7本、手の指の骨2本、そして大腿骨の一部をミハレス氏らは発見した。少なくとも3人分以上の骨だった。

これらの小さな化石では、意外なことに、とても古い人類とかなり新しい人類の両方の特徴が見られた。例えば、歯は小さく比較的単純な形でより「近代的」だが、上の小臼歯には歯根が3つあった。これは、現生人類では3%未満にしか見られない特徴だ。一方、足の骨はアウストラロピテクスのものと似ている。およそ300万年前、アフリカを歩いていた人類で、かの有名なルーシーも、アウストラロピテクスの仲間である。

「これまで見たこともないような特徴の組み合わせについては、著者と同じ意見です」と、スペイン国立人類進化研究センターの所長マリア・マルティノン=トレス氏は話す。

古代の歯の専門家で米ニューヨーク大学の人類学者シャラ・ベイリー氏は、南アフリカで見つかったホモ・ナレディ(Homo naledi)にも、古代と近代の両方の特徴があったと述べる。ベイリー氏は、この2種の初期人類の発見を、人類の「モザイク」的な進化が一般的に起こっていた証だと捉えている。

さらに、マルティノン=トレス氏は、歯の特徴の混じり方が、中国南部の独山県で見つかった1万5000年前の人類の化石と多少似ていると述べる。同氏の研究チームは、この独山の人類化石に関する論文を2月20日付けの学術誌「Scientific Reports」に発表した。これら最近の相次ぐ発見により、アジアの人類は、更新世が幕を下ろす1万2000年前にはすでに驚くほど多様だったことがうかがえる。

DNAは見つからず

多くの科学者が今回の徹底した研究を称賛しているものの、わずか13個の小さな骨と歯から種を定義するのは難しい。DNAを抽出しようとしたが、熱帯の暑さと湿度に何千年もさらされたサンプルでよくあるように、うまくいかなかった。

また、ルソン原人が小さいことも、一部の骨の特徴が実際よりも原始的に見える原因となり得る、と米ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏は言う。なお同氏は、今回の研究には関わっていない。これが、他の既知の人類との比較を難しくしているという。否定しがたい特徴があり、新種とするのが合理的だと同氏は考えているが、何はともあれ「もっと骨が見つかることを心から望みます」

ルソン原人は新種であると強く確信している研究者もいる。

「新たに発見した化石について、研究チームはきわめて慎重かつ実に素晴らしい仕事をしています。個人的には、新種の命名は妥当だと思います」とフローレス原人の専門家でオーストラリア、グリフィス大学の考古学者アダム・ブラム氏はメールで述べた。「本当にセンセーショナルな発見です」。なお同氏は、今回の研究には関わっていない。

今回の論文の筆頭著者で、フランス国立自然史博物館講師のフローラン・デトロワ氏は、そもそも「種」とは、進化の歴史をはっきりさせることを目的に人が作った分類に過ぎず、必ずしも厳然とした生物学的な真実ではない、と付け加える。

「将来、今回の化石は既知の人類の種に分類できることが示され、私たちが間違っていたことがわかったとしたら、1つの種に統合して忘れてしまうでしょう。しかし今のところは、新種に分類すべきだと私は確信しています」と同氏はメールで述べた。

道具を使っていたルソン原人

今回発見された人類が最終的にどう定義されようと、フィリピンの初期人類の行動の一部が現生人類に近いことに、研究者は興奮しているという。これには、道具の使用が含まれる。

2010年に発表されたカラオ洞窟で見つかった足の骨(今ではルソン原人のものと考えられている)に関する論文では、同じ地層から見つかったシカの骨に、石器で切ったような傷が付いていたと述べられている。ドイツ、マックス・プランク人類史学研究所の古人類学者マイケル・ペトラグリア氏は、このシカの骨を、ルソン原人が道具作りの達人であり優秀な狩人だったことを示す証拠だと考えている。

ルソン原人かあるいは別の初期人類が、もっと前にルソン島に住んでいたという証拠もある。2018年、ミハレス氏の研究チームは、カラオ洞窟からそれほど遠くない所で、70万年以上前の石器と解体されたサイの骨格を発見したと発表した。しかし、骨と石器が見つかった遺跡の時代がそれぞれ異なるため、石器を使ったのが、ルソン原人の祖先なのか、関係のない別の人類なのかは謎だ。

どうやって海を渡ったのか

ルソン原人もフローレス原人も等しく小型に進化したわけだが、異なる2つの種に進化した。その違いをもたらした島の条件は不明だ。また、さまざまな研究により、古代の人類種の間では、交雑が定期的に起きていたことが明らかになっている。しかし、ルソン原人の祖先が、当時アジアに住んでいた他の人類と交配し子を産んでいたかどうかはわからない。ちなみに当時のアジアには、謎に包まれたデニソワ人などがいた。

「人間の進化において自然が行なった、ある種の実験のようなものです」とフローレス原人の専門家でオーストラリア、ウーロンゴン大学のゲリット・ファン・デン・ベルフ氏は話す。

もう1つの大きな謎は、ルソン原人の祖先が、どうやってフィリピンに到達したのかだ。2016年、インドネシア、スラウェシ島で、11万8000~19万4000年前の石器が見つかった。同島の最古の現生人類の痕跡より少なくとも6万年は前のものだ。フローレス島とルソン島の化石を考慮すると、従来の説とは異なり、初期人類がこの地域全体に広がっていたのは、必ずしも珍しいことでも偶然でもなかったと考えられる。

「サイが泳いでたどり着けたのなら、ホモ・エレクトスやフローレス原人、ルソン原人にできたとしても不思議ではありません。船を作れなくても、必ずしもひたすら泳がなくてもいいのです。少なくとも、いかだを作れればたどり着けたと考えられます」とペトラグリア氏は話す。「単なる憶測に過ぎませんが、こう仮定すれば説得力のある議論ができます」

1つはっきりしていることは、東南アジアには、おそらく現在化石から判明しているよりも多くの種の人類が暮らしていたということだ。ミハレス氏は、ナショナル ジオグラフィック協会の支援を受けて行っているルソン島ビアクナバト国立公園での現在の調査の他にも、ルソン原人の痕跡を引き続き調べている。ルソン原人、そしてアジアの人類学の未来は明るいと同氏は見る。

「フィリピン人として、東南アジア人として、とても誇りに思います。フィリピンや東南アジアは、人類の進化史において、いつも周辺に追いやられてきました。ところが今や、この地域の遺跡が認められ、積極的に議論に参加できるのです」とミハレス氏は語る。「おそらく、これこそが、人類学における私の遺産なのです」

(文 MICHAEL GRESHKO、MAYA WEI-HAAS、訳 牧野建志、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2019年4月13日付]

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