ジコチュー就活気づいてる? 質問には忠実に答えよう
ホンネの就活ツッコミ論(102)
2020年卒就活は、既に内々定を獲得したり、最終選考まで進んだ学生がいたりするなど、一つの佳境を迎えつつあります。一方で、選考序盤で落ち続けてしまう学生もいます。序盤で落ちる典型的な理由が「志望業界が偏っている」「有名企業ばかりを狙っている」といったものです。
ところが、これ以外にも見過ごしがちな点があります。それが自分勝手さ、いわゆるジコチューです。極端に自己中心的とかわがままというほどではなく、「プチジコチュー」とでもいいましょうか。売り手市場が続く中で、そのような学生が目立ってしまっています。ほんの少しのジコチューが実は序盤の選考で大きな差を生んでしまっているのです。
高校時代の話を書くとNG?
序盤の選考に落ち続ける就活生は例年います。就活生からすれば、なぜ自分が落ちたか納得できませんね。男子学生のA君もその一人です。
「僕を落とすなんてこの企業の、ひいては国家の損失ですよ」とA君。おお、大きく出たねえ。そこで、エントリーシートを見せてもらうと、落ちた理由が一発で分かりました。
「学生時代に頑張ったこと」で書いていたのは、高校の部活ネタ。「あなたの自己PR」には、大学のアルバイトネタを出しています。
「A君ねえ、どちらもいい話なんだけど、これ逆なんだよなあ」
「え?」といぶかるA君。
エントリーシートは、自己PRの時期については明確に指定していませんでした。となると、例えば高校時代の部活を記しても特に問題はないのです。一方、「学生時代に頑張ったこと」は「学生時代」と時期を指定しています。これは大学の話を書かないとアウトです。
A君は「そんな話、初めて聞きました」と納得いかない様子。「だって、大学時代、そこまで頑張ったこともないですし。アルバイトの話は自己PRで書いてしまいました。ちょっとくらい、高校の話を書いてもいいじゃないですか」
学生の「ちょっと」が企業にとっては大問題
このA君に限らず、エントリーシートの設問を無視する学生はみな、口をそろえて「ちょっとくらいいいじゃないか」と言います。
もし、企業が指定したエントリーシートの設問が「人生でこれまでに頑張ったこと」であれば、高校時代の話を書いても大丈夫です。しかし、お題で「学生時代」と限定しているようであれば、あくまでも大学時代の話を書かないと、企業が指定した設問を無視したことになります。
この「学生時代」という指定を無視して、大学受験や高校時代の部活を書くとどうなるでしょうか。実は企業は、エントリーシートの設問を無視したことを重く見ています。
「エントリーシートの設問を無視するようでは、入社しても上司や先輩社員の指示を無視するかもしれない。そんなリスクのある学生は落としておこう」と考える採用担当者が大半でしょう。
ごく少数ではありますが、設問を無視した学生が書類選考に通ることもあります。それは、エントリーシートの書き方以前に、学生個人のパフォーマンスが極めて高いケースです。このケースだと、書き方がまずくても、パフォーマンスの高さが評価されて面接に呼ばれることはあるようです。
もっとも採用担当者に取材していくと、「かつてはうちも設問を無視した学生を面接に呼ぶことはありました。ただ、結局『やらかす』のですよね。で、途中で落ちていく。今は書類選考段階で落とすようにしています」と話す企業が多くありました。
グループ面接で自己PRを入れるとアウト?
採用担当者が言うところの「やらかす」とはどういうことでしょうか。気になりますよね。
これは自己紹介を例にするのが一番分かりやすいです。
「東洋大学から参りました石渡です。他にない視点を盛り込むことを信条としています。趣味はサイクリングでしまなみ海道によく行きます。本日はよろしくお願いします」という自己紹介をしたとしましょうか。
これが「自己紹介をお願いします」なら問題ありません。しかし、採用担当者が「自己紹介をお願いします。お名前だけで結構です」と言っているのであればアウト。なぜでしょうか。
それは、大学名、自己PR、趣味と3点も盛り込んでいるからです。「本日はよろしくお願いします」も余計と言えば余計ですが、これはまあ、決まり文句のようなものなのでまだいいでしょう。
これも、面接に落ち続ける学生に指摘すると、返ってくるのは「ちょっとくらいいいじゃないですか」。確かに本当に「ちょっと」ですよ。この自己紹介なら1人1分とか、その程度。
ところが企業の立場から見ると「ちょっと」で済まないのです。
自己紹介だけで1人1分超過。5人いれば5分の超過。さらにグループ面接であれば自己紹介以外に数問は質問したいところ。それぞれ1分から2分超過するとなると、5人だと30分以上も超過しかねません。当然ながら、次の予定が大きく狂うことになります。
企業=相手への配慮ができるかどうかが見られている
面接でもエントリーシートでも、相手に配慮できるかどうか、学生が想像する以上に企業は注視しています。
「でも石渡さん、志望動機に自己PRを混ぜる手法をよく推奨していますよね?あれは設問の指示を無視しているのではないですか?」と反論してくる学生もいるでしょう。確かに私は、エントリーシートの志望動機に自己PRを混ぜる手法を学生に推奨しています。実際にそれで選考に通るようになった学生が大半ですし。
これが設問指示の無視にならないのは簡単です。志望動機はその会社への志望動機が設問の指示。自己PRをまぜて「私の強みが貴社に貢献できると考えた」と書いても設問を無視したことにはなりません。これはこれで立派な志望動機です。
この志望動機のように設問の指示が漠然としている、あるいは、かなり広いものであれば、自己PRなどを付け加えていくのは特に問題はありません。ただし、設問・質問が限定されているようであれば、その内容に寄りそうようにしないと「ジコチュー」と見られてしまうことを是非、覚えておいてください。
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