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「24時間営業」の次へ現場行脚 ファミマ・沢田社長

ファミリーマート 沢田貴司社長(下)

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NIKKEI STYLE

24時間営業の問題で注目を集めるコンビニエンス業界。ファミリーマートでは2016年に沢田貴司社長が就任以来、次々と業務改革を手がけています。現場でレジ打ちまで体験した経営者がコンビニエンスストアの24時間営業と人手不足の問題などにどう取り組んでいくのか、前回の「マニュアル10分の1 余計な仕事削減 ファミマ社長」に引き続き、沢田社長にお聞きしました。

「沢田めし」と「サワスタグラム」で関係性作り

白河 前回は店舗についてお聞きしましたが、本社についてはいかがですか? かなり組織改革をされたそうですが。

沢田 やはり経営統合を繰り返して成長してきた経緯から、組織にダブつきが生じていました。複数の会社が統合してきた過程でマニュアルのページ数が純増したのと同じで、管理職の数も多くなり過ぎていた。かなり整理してきましたので、管理職のポストを外れた方も少なからずいると思いますが、これは仕方のないことです。結果を残せないリーダーは、私も含めて変わらないといけない。

白河 組織改革には、抵抗や物議は避けられないと思いますが、「やるしかない」という意気込みですか。

沢田 結果が出るのはこれからだと思います。成長戦略に対して横を向く人に対しては厳しく評価せざるを得ないし、物理的にポストを代わっていただくしかないですよね。

白河 厳しくメスを入れつつも、「沢田めし」と呼ばれる交流目的のランチも社内で積極的になさっているのだとか。

沢田 そうですね。社員はこれまでに1700人ほど参加してもらったほか、加盟店やお取引先の皆さんもお招きしたりと、いろいろな方とランチをご一緒しながらお話を聞かせてもらっています。

白河 本質的な改革を進めるのと同時に、本音を言い合える関係性づくりにも力を入れていらっしゃるのですね。

沢田 それが社長としての私の仕事だと思っています。昨年、「サワスタグラム」という、社長の動向や会社の動きを写真や動画でタイムリーに投稿する社員専用SNSも立ち上げ、日々の気づきや、加盟店の皆さんとのエピソードなども全社員に共有しています。

白河 やはり、現場目線を徹底されていることが分かりました。

沢田 現場を分からずして、経営を語ってはいけないと思っています。トップである私が現場を理解していない発言ばかり繰り返していたら、加盟店の皆さんや社員は失望しますよね。現状を分かっていない上司の下で働くことってストレスじゃないですか。まあ、商社時代に私が会社を飛び出した理由でもあるのですが。

その経験から、自分は絶対に現場を分かろうとするリーダーでありたい、という強い思いはあります。それでもやっぱり十分ではないでしょうから、社員からすると「沢田は分かっていないじゃないか」と思われているかもしれませんけど(笑)。

ユニクロの柳井さんから学んだこと

白河 沢田社長は、リヴァンプ時代に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」を日本に展開して経営された経験もあって、小売りの現場については精通されていたとは思いますが、コンビニ業界に入ってさらに研究を深められている印象ですね。やはり「よその業界」から来たからこそ、より真っさらな目で常識を疑い、改革を打ち出せるということはあるのでしょうか?

沢田 「よそ」から来たからこそ、おかしなことを「おかしい」と言える、ということはあると思います。ただ、同じ業界に何年いても強い意識さえ持てば、改革は可能ではないでしょうか。柳井さん(柳井正ファーストリテイリング会長兼社長)は、常に目の前のことを「これで本当にいいのか」「改善すべきことはないのか」と自問されていました。常識を全然信じないし、成果があがっても決してそこに安住しない。そばで働かせてもらいながら、柳井さんのこの姿勢は学びたいといつも強く思っていました。

白河 時代の変化に対していかに敏感でいられるか。その感性を研ぎ澄ませようとする力が必要だということですね。

沢田 そうです。自分自身の決定について、どれだけ仮説と検証を繰り返すことができるかだと思います。

白河 現場の方にたくさん会おうとするのは、情報収集も目的なのですか?

沢田 やはり直接話を聞かないと。現地へ行って店舗を訪問し、現場で働く皆さんと話をする。あるいは、お取引先の皆さんとも話す。そこから得られる気づきはたくさんありますね。

時間営業の実験に着手

白河 最近話題になっている「コンビニの24時間営業問題」についてはいかがでしょう。実験店舗などで検証を進めていくそうですが。

沢田 最重要課題のひとつとして取り組んでいきます。先日、6月から一部の地域で「時間営業実験」(注:営業時間を限定)を行っていくことを発表しました。日商・コスト・収益への影響や、配送を含む全体のオペレーションなどについても検証する予定です。また、今期は既存店への投資の総額は1130億円を見込んでおり、そのうちセルフレジや省力化什器(じゅうき)の導入拡大など人手不足への対応や店舗運営の効率化につながる取り組みに約250億円を投じる計画です。

白河 24時間営業のコンビニが誕生した当時は、画期的なイノベーションだった。でも、そのイノベーションはすでに昔のものとなり、また新たなイノベーションが求められている。そんな時期に差し掛かっているのだと思いますが、一足飛びにはいかないと。そんな中でも、ランドリーやフィットネスを併設する新規事業は面白いなと思いました。

沢田 私も可能性が非常にあると期待しています。フィットネスもランドリーも、来店されたお客様がセルフで利用できるオペレーションなので、加盟店の手間を極力抑えることができるんです。

白河 店舗の負担が少なく利益が上がるのは理想的ですよね。外国人労働者に対してはどんなケアをなさっていますか。

沢田 すでにストアスタッフの約8%くらいが外国籍の方ですから、マニュアルを多言語対応するなど工夫を進めています。

白河 都心の店舗では、「この人はどの国の人だろう?」って楽しみになるくらい多いですよね。いっそ、バッジに国旗をつけたりするのはいかがですか?

沢田 それは面白いですね。考えてみようかな(笑)

白河 店舗スタッフ採用での茶髪制限もやめたそうですね。私は今、128人の女子大生を毎週教えていて、アルバイトで疑問を感じる点について聞いたことがあるのですが、やはり多かったのは髪色のこと。ファミリーレストランなどでは「どうせ帽子をかぶるのに、髪色指定があるのは意味不明」とか。あと、ネイルの規制も不評でしたよ。「せっかくキレイにしているのに、ネイルを取らなきゃいけないのは嫌」だと。茶髪OKにするだけでも、人手不足はかなり解消されるのではと思いました。

沢田 おっしゃる通りで、ルールを決める側が古い慣習のまま思考停止している部分も否めません。「頭髪のカラーチャート○番の色まではOK」とか、古いルールをずっと踏襲している。

白河 先ほど、「地域『異常』密着型コンビニ」を目指すとおっしゃっていましたが、ということは、現場にかなり権限委譲していく方針でしょうか?

沢田 委譲していきたいですね。これまで全国津々浦々、650店舗くらいに実際に足を運んで感じたのが、売り上げが好調なだけでなく店内の雰囲気も素晴らしいお店に共通しているのは加盟店さんが自ら考え、自ら行動しているということです。お客様のためになることを真剣に考えて、独自のアイデアでいろんなことをやっている。自分で考えて行動するから純粋に楽しんで商売をされているんですよ。これが本当に理想の形だと思います。私たち本部の役割は、環境を整えて提供するだけであって、上からあれこれ言って管理する時代はとっくに過ぎ去っていますね。

白河 社長がそこまで言い切るのは、すごく斬新だと思います。

沢田 斬新ではありませんよ。私自身もずっと好きなことをやってきて、今に至るわけですから。やっぱりいい仕事をするには、好きなことをやるしかない。これは自分の経験上、自信を持って言えることです。

もちろん、商品やシステムといったチェーンとして統一すべき型はあります。ただ、こと販売に関しては、いかに地域に愛されるかで勝敗は決まります。だから、それぞれの地域で加盟店の皆さんと共に働く現場の社員に託すしかない。その一環として、今年度は地域の特色を打ち出す売場づくりや、地域に特化した販促を推進することを目的に、東北と九州の2カ所でリージョン制を導入し、思い切った権限委譲をしていきます。

白河 それは楽しみですね。「コンビニは全国どこに行っても同じ」という標準化から脱却するということでしょうか。

沢田 脱却という感覚はあまりなくて、加盟店と本部、加盟店と地域の距離を今よりもずっと近づけて、圧倒的な信頼関係をつくっていきたいという思いです。そして、「同じコンビニをやるなら、ファミマでやりたいよね」と加盟店のオーナーさんにも思っていただけるような魅力的な職場にしていきたいです。

「自分で考え行動する仕事の醍醐味」を味わってほしい

白河 常に新しい取り組みを始められるので目が離せないです。

沢田 今の時代は、過去に決めたことを守り続けていることに慢心するほうがリスクではないでしょうか。いろんな仮説を立てながらトライアル・アンド・エラーを繰り返すほうが正しいのではないかと考えています。

白河 店舗で働くスタッフの皆さんはもちろん、本部で働く社員の皆さんのモチベーションも高めていくために何を大事にしていきたいですか?

沢田 やはり、「自分で考え行動する仕事の醍醐味」を味わってもらえる環境づくりです。私自身も自分のキャリアを振り返ると、いろんな失敗もありましたが、自ら考え行動した仕事が一番やりがいがあり、結果も出ました。

白河 「トップが決めたことにお任せ」ではなく、皆が自分自身で考えて行動する組織を目指すということですね。

沢田 はい。これからはそういう組織こそが、成長していけるはずだと信じています。

白河 本日はありがとうございました。

あとがき:2年前にファミマの全女性社員が一堂に会した女性活躍アワードで基調講演をさせていただきました。アワードのプレゼンターはなんと香取慎吾さん。サプライズで会場は大騒ぎ。こんなに盛り上がった企業イベントは見たことがありません。「みんなが一番喜ぶことはなんだろう」と考えた社長のサプライズだったそうです。現場の働きやすさを重視し、現場の人中心のシステムを整える。ゼイネップ・トン氏(マサチューセッツ工科大学スローンスクール・オブ・マネジメント 非常勤准教授)が提言した「よい職場」戦略と呼ばれるもので、米ウォルマートなどで実践されています。パートアルバイトが多い労働集約的な現場で生産性向上、定着率の向上などに通じる働き方改革です。沢田社長のコンビニ改革は「良い職場戦略」に通じるものでした。24時間営業が基本のコンビニのビジネスモデルの変革期、常に現場を向いて「当たり前」を疑う沢田社長の次の一手が楽しみです。

白河桃子
少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「『婚活』時代」(共著)、「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)。

(ライター 宮本恵理子)

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